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2019年07月02日11:18

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6月の読書記録

先月は哲学思想系の本の割合がやや多めだったこともあって、6千頁に至らず。デカルトの『省察』に思いの外手こずったか。後、ずっと読もう読もうと思っていながら読めなかった吉本の『共同幻想論』を読了できたのが嬉しかった。ナイスも2百近くいったな。
 今月も頑張って読もう。

2019年6月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5057ページ
ナイス数:189ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)
読み始めの頃は、「ここまで戦後日本をリアルに描くなんて」と驚いていたが、それが読み進めるうちに「あれ?」という感覚に。リアルでいるようでいて、微妙に実際の日本と遊離している。時代考証もかなり怪しい。恐らく著者はあえて、著者なりに解釈した架空の日本的世界を紡ぎ出したということなのだろう。また、どこか小津映画の世界を連想することが少なからずあったが、実際に著者は小津の映画を意識していたとのこと。自ら信念を持ってやったこと。それが裏目に出て、犠牲者も出してしまった…その事実に直面した人間の苦悩と愚直さがリアル。
読了日:06月30日 著者:カズオ イシグロ
https://bookmeter.com/books/424692

■忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)
どうしてこうも全くと言っていい程趣向が違う作品を生み出すことができるのか?中世イギリスが舞台ということで、アーサー王伝説を連想したが、その伝説を背景にしているということに納得。それにはそうと、個人的にとりわけ印象的だったのは、年老いた自分の妻を「お姫様」と呼ぶアクセル。一見仲睦まじく見える夫婦にも、実は癒しがたい傷があった。その無かったことにしておきたかった筈の過去が明かされるくだりには、胸が詰まる思いがした。また古のサクソン人とブルトン人との対立は、今日のイギリスにも反映されていると思うと興味深い。
読了日:06月27日 著者:カズオ イシグロ,Kazuo Ishiguro
https://bookmeter.com/books/12306045

■アシェンデン―英国情報部員のファイル (岩波文庫)
小説家とスパイの二足の草鞋という経歴は知っていたが、その体験を小説として読むと、それが殆ど超人的な仕事であると思わされる。確かに、それなりに虚飾を施したところもあるだろうが、ある程度は実体験に基づいたものだと想像される。折しも時は第一次大戦。そこで、常に死と隣り合わせと言っても過言でないような状況に身を置くということは、どんなことだろう?とつい考えさせられる。当時のイギリスと他のヨーロッパ諸国との関係に通じていないと理解し辛い場面も散見されたが、クドくはないが的確な人物描写に魅せられてほぼ一気読み。
読了日:06月25日 著者:モーム
https://bookmeter.com/books/491923

■夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
どこか、アメリカの短編を思わせる作風。それこそ村上春樹が翻訳しそうな感じ…といえば安直か?音楽を巡って織りなす男女の物語。このほろ苦さは酒というより、ブラックコーヒーのそれだと個人的に思う。個人的には「降っても〜」の主人公にとりわけシンパシーを覚えたか。いい年になってもうだつの上がらない自分。そのキャリアをあえてダシに使われるという複雑な経緯と、かつての旧友との絡みは、どこか身を切られる思いにさせられる。そして友人の妻とのしばしの邂逅と和解…まさに大人のドラマ。最後の「チェリスト」はなぜか東洋の匂いが…
読了日:06月22日 著者:カズオ・イシグロ
https://bookmeter.com/books/558626

■アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ (岩波新書)
一見してふざけている。こんな語り口、岩波新書で許されるのか?ついそう思ってしまう。でも、読み進めていくうちに、実はとても真面目で真剣なんだと気づかされる。その軽いというよりふざけた語り口は、読み手を何かに…具体的には革命だが、駆り立てるためのものだという気にさせられる。アナキズム…それは酷く魅力的だ。できることならここまで思いつくままに滅茶苦茶なことをしたい。でも、それは結局一過性のものとして大きな流れに収束されることになる。それでもいい、このふざけた世間に一泡ふかせたい。それだけでいいではないか。
読了日:06月21日 著者:栗原 康
https://bookmeter.com/books/13246181

■はつ恋
アラフイフ同士の恋が初恋?しかも従姉弟同士…普通だったら眉をひそめるような設定なのに、それが何とも言えず切なくて愛おしい…幼い頃仄かな恋心を抱いていた従姉妹と恋仲になるというのも正直何だかひどく羨ましい(笑)。それはともかくとして、特に奇をてらったわけではないのに、なぜかハッとさせられる表現が目につくのに驚かされる。この辺りもっと評価されていいと思うのだけれど…それと何とも言えずホロっときたのが、終盤の喧嘩の顛末。お互いのエゴをむき出しにしながらも、最終的にお互いを労わり思いやるその関係性に大人だな…と。
読了日:06月21日 著者:村山 由佳
https://bookmeter.com/books/13192224

■共同幻想論 (1982年) (角川文庫)
前々から読もうと思いながら読めなかった一冊。理解の程はともかくとして、「これってある程度年齢を経てないと理解できないのでは?」というのが、第一印象。理論とか知識とかの問題ではなく、家とか夫婦関係とか人間関係の機微とかを理論としてではなく、身体的に経験してないと理解し辛いと思われる。また、前半で度々取り上げられる『遠野物語』の記述は、僕らの世代では遠い世界の話でもあると同時に、どこか親近性を覚える話でもあった。そのあたり、今の若い世代にはどう映るのだろう?というのが気になる。巻末の中上の解説も興味深い。
読了日:06月20日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/170144

■省察 (ちくま学芸文庫)
まがりなりにも大学院で仏哲学を専攻していたのにもかかわらず、本書を繙いたのは初めて。その概要はある程度知っていたから、本書を読了するのはそんなに難しいものではないだろうと高をくくっていたが、十分の一程度も理解できたか怪しいというのが正直なところ。何よりラテン語による原文が難解ということもあるのだろうが、一つ一つの用語の理解が怪しいというのがいかんともしがたい。ただ、パスカルの批判で言われるほどデカルトが神無しでこの省察をやれたとは思っていなかったのでは?という気になった。次はもっと時間をかけて読みたい。
読了日:06月18日 著者:ルネ デカルト
https://bookmeter.com/books/400071

■吉本隆明〈未収録〉講演集第10巻 詩はどこまできたか (シリーズ・全集)
文学を語る吉本はとりわけ魅力的なのだけれど、それが詩歌になると、ちょっと…というのが正直なところ(笑)。中原や立原はともかくとして、戦後の詩となると、吉本が「これはいい」と言っても、どこがいいのか今一つ理解できず。後、さだまさしを高く評価しているのが、個人的に何かな…感が。できれば、生前評価していた清志郎やみちろうの詩もとりあげて欲しかった。ただ、フォーク系の詩と現代詩を同列に語っているところには好感が持てたけど。また、かつての前衛と呼ばれていた詩から、今詩はどこまで進み、どこに向かっているかが気になる。
読了日:06月15日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9848516

■二度読んだ本を三度読む (岩波新書)
本書で引用されているモームの言葉とは逆に三十を過ぎてから本格的に小説を読み始めた者としては、著者の早熟な読書暦がうらやましくなるのと同時に、今の自分の読書体験もまた違った妙味があるのでは?と思わされた。とりわけ膝を打ちたくなる程の共感を覚えたのは『カラマーゾフ〜』への言及か。あの小説を読み進めた時の躍動感、高揚感がまざまざと蘇ってくる思いがした。それと当初は左翼リベラル的な言及が気になった…というより心配にさえなったのだけれど、読み進めていくうちに「やっぱりそうだよな」という気になった。こういう人は貴重。
読了日:06月12日 著者:柳 広司
https://bookmeter.com/books/13700697

■幸福論 (岩波文庫)
恥ずかしながら、著者の存在さえ知らなかったが、本書は繰り返し読むべき良書。古代ギリシャの概説から始め、今日に至る幸福論をコンパクトにまとめてある点にまず好感が持てる。また、後半のキリスト教倫理と絡めた幸福論も、徒らに護教論的にならず、バランスの取れた記述。文体がやや古めでとっつきにくいところもあるが、格調高い語り口が魅力的でもある。正直理解のほどは怪しいが、次に読むときは付箋を貼ったり、書き込みをしながらじっくり読みたい。また、巻末の鼎談も興味深い内容。古き良き時代の教養主義の雰囲気が伝わってくる。
読了日:06月12日 著者:三谷 隆正
https://bookmeter.com/books/223510

■吉本隆明〈未収録〉講演集第9巻 物語とメタファー: 作家論・作品論〈戦後編〉 (シリーズ・全集)
先に読んだ《戦前篇》に比べると、詩歌への言及は多かったというのが第一印象。とりわけ短歌は個人的に馴染みの浅い領域なので、正直とっつきにくかったが、その反面、短歌の世界でも革新的な試みが行われていたという事実は興味深かった。また、晩年の三島の保守反動的な傾向について、同時代を生きた吉本にとっても驚きであり、唐突であったという事実には驚かされたのと同時に納得もいった。それと本巻で度々言及される埴谷雄高への複雑な思いは、二人とも故人となった今となっては何とも言えない感慨を覚える。もうこんな人達は出ないだろうな…
読了日:06月10日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9800359

■吉満義彦――詩と天使の形而上学
戦前という激動の時代を信仰と文筆活動に生きた吉満義彦とその師岩下壮一。そして、彼ら二人を取り巻く文学、哲学、キリスト教に関わる人達が織りなす人間模様…ネットはおろか、電話さえもそれ程普及していなかった時代に、よくあれだけの多様な世界の人達が様々な交流を織りなしていたということに驚き。それより、あれだけの偉業を成し遂げたのにも関わらず、吉満、岩下両氏が今日カトリック界で殆ど顧みられることがないという事実に一信者として憤りを覚える。また、両氏とプロテスタントとの微妙な関係性は、今日的な問題を孕んでいると思う。
読了日:06月08日 著者:若松 英輔
https://bookmeter.com/books/8333677

■わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
臓器移植のために生み出されたクローン人間…どう考えても理不尽で非人道的な境遇にも関わらず、その使命を粛々と受け入れる男女。もちろんその理不尽な運命に対する葛藤はある。でも、それは大袈裟な犯行には至らず、静かな諦念と自己省察によって処理されてしまう。先に読んだ『日々の〜』と同じく、これまでに読んだどんな作品とも違う不思議な読後感を与える小説。SF的要素を孕みながらSF的な匂いは殆ど感じさせない。それより、普通の人間と殆ど変わらないのにも関わらず、それでも避けることのできない使命を持った男女の生態が切ない。
読了日:06月06日 著者:カズオ・イシグロ
https://bookmeter.com/books/545086

■日の名残り (ハヤカワepi文庫)
これまで読んだことがないタイプの風変わりな小説というのが第一印象。主人公である執事のモノローグというのがユニークなのだけれど、特に奇想天外だったり、エキセントリックな要素があるわけではない。それでも、読み進めていくうちに、内容と自分との間に薄い膜のようなものが張り巡らされているような気にさせられる。一つはイギリスの上流階級を舞台にした回想場面が、これまで触れることのなかった世界だからだろうか?そこで繰り広げられる人間模様…とりわけ主人公とミス・ケントンとの関係性は、誰にでも起こりうる喪失感を喚起させる。
読了日:06月03日 著者:カズオ イシグロ
https://bookmeter.com/books/567297


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