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2019年06月08日22:40

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土曜ギリギリ日記357:僕たちは希望という名の列車に乗った


1956年、東ドイツ。スターリンシュタットで暮らす18歳の高校生テオとクルトは親友どうし。2人とも成績優秀者の集まる進級クラスに在籍しているが、家庭環境は異なっている。テオは労働者階級の父を持ち、幼い兄弟たちの面倒見も良い快活なタイプで、レナというクラスメートと交際している。一方クルトは、議会要職に就く厳格な父を持つ優等生タイプで、政治に関心を持っていた。ある日2人は、クラスメートのパウロの叔父エドガーが持っているラジオで西側の放送が聴けると知って、有志を募ってエドガー宅を訪れた。興味本位で放送に耳を傾けると、流れてきたのはハンガリーのニュース。駐留するソ連軍に抵抗する民衆が蜂起し、大勢が命を落としたというのだ。社会主義国家となった祖国に刃向かう気は無いが、同じくソ連の支配下で暮らす身として、ハンガリーの人々の気持ちは解る。そこでクルトは翌朝、授業前に「亡くなったハンガリーの人たちのため、二分間黙祷しようじゃないか」と提案。亡くなった父が赤色戦線の闘士だったエリックなど数人を除いて、ほとんどのクラスメートは賛同し、担任の授業中に黙祷を敢行する。これに気づいた担任は不機嫌となり、その様子をテオは面白がって笑うのだが、まだ彼らは知らなかった。黙祷は反政府行動の一歩であり、社会主義国家では身の破滅を意味することを…

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「僕たちは希望という名の列車に乗った」。ヒュートラ有楽町で観ました。

以下、秋にミミズが出たら冬にネタバレが起きる。


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東ドイツの市井の人々を描いた作品としては「グッバイ・レーニン」「善き人のためのソナタ」「東ベルリンから来た女」くらいしか観ていないし、後は「寒い国から帰ったスパイ」に代表されるエスピオナージュから得た知識しかないんですが…「世界大戦後かつベルリンの壁建設前」という時期を描いた作品というのは珍しいと思いました。検問は在るものの、意外とあっさり列車でアメリカ統治下のベルリンまで行けちゃった時代。クルトもテオも、若さゆえもあるんでしょうが、そんなユルい統制のために危機感を感じなかったのでしょうな。
で、黙祷が大問題となってからの中盤は、厳しく冷酷な現実(オトナの世界)と、友情・連帯・恋愛という青春(ティーンの世界)の対立構造が描かれていくんですが、ここがなかなかスリリングかつ丁寧で、引き込まれます。観ながら、「若き勇者たち」「タップス」を思い出していました。クライマックスの皆が起立していくところは、もちろん「スパルタカス」もとい「いまを生きる」の引用ですよね。実にエモーショナルでした。

テオ、クルト、エリック、パウル、レナなど主要な少年少女たちへのシンパシーも強く感じさせるし、女教師や教育大臣のヒールっぷりも見事。第二次大戦後、ドイツが東西に分かれていたという最低限の教養さえあれば、難しくはありません。ま、それすら知らなくても、実話ベースのシンプルな青春映画としてしっかり楽しめると思うので、ぜひ。


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