いい味である。

そういえば何か酷似していると思ったら、
私達は同じケミカルチューブから
吸い上げられた生き物だった。
彼は電算室でくたびれたリネンシャツを
やたら仕舞い直すプログラマーで
やはり首周りから足元にまで掛けている
防寒用の毛布まで巻き込みながら
それらをスラックスに押し込める。
ここからが大事なファクターであり
彼は秒単位でマクロ操作を行いながらも
そもそもその最速であるところは開口言語である。
「私は脳を介さない為幻覚も見ない。
誕生の際のチューブ内部を流通時
そこに含有されている毒素Mc2p
それを私はからがらさもしいデオキシリボ核酸の分際で
回避を選択し成功させたようだ。
憂慮の必要はない。
現実は幻覚の類か、認識は幻の所業か。」
箍の外れた彼の無表情を
情緒の安定と見るか情緒不安定の賜物と取るかは
また別の話。
これがandanteのリズムで
園児の積み上げた積み木を崩すまでのくだりであり
私は今し方並べられたばかりのクロケットを
いの一番に購入し外に配置されているテーブルと
オプションの排気ガスのブレンドで咳込んで頬張る。
実にいい味である。