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2019年06月04日20:57

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少年Aのいまがもしも。。。

薬丸岳著 友罪を読みました。
神戸児童殺傷事件がモチーフになっており、映画化もされた作品です。

600ページ近くある分厚めの本ですが、
割とスラスラと読み進められる本ではありました。

埼玉のとある工場に同時採用された2人の青年を中心に
物語は展開していきます。

正直にいうと、期待はずれな小説でした

友罪、というタイトルからして
もしも友達になった人間が、あの残忍極まりない罪を犯した少年だったら
あなたはそれでも、友達でいられますか?
と、そう読み手に問いかけてくるような内容だと
勝手に思ってしまった私がいけなかったのかもしれませんが

これはなにか違うな、と思い始めたのは
鈴木(少年A)が医療少年院に入っていたときの先生というのが
もうひとりの主人公、益田に近寄り
「彼の親戚のもので、彼はいま家出中で身内のものが心配しているから
定期的に彼の様子を教えてくれ」と頼み込んでいるところです
見ず知らずの人間にいきなり訪ねていって
定期的に様子を教えてほしい、なんて
どう考えても怪しまれるにきまってるじゃないか、と

あと、少年Aの描き方だけども
夜中に毎日、ものすごい声でうなされていたり
益田が工場で指を切断するという、大怪我を負った際
いち早く的確な処置を施すなどの一面を見せながら
切断された指を携帯で撮影していたり

なんというか、作者の、少年Aに対しての
罪を悔やんで、そのことに深く苦しんでいてほしい
そう思う一方で、いまも猟奇性は消えないままで
どこかでまた同じような犯罪を犯すことを
期待しているかのような
そんな作者の思いがそのまま反映している描き方で

それに、益田という男も
自分はなにもしないくせに偉そうなことばかり云っていて
お前は一体どうしたいんだ、と
文字を追うごとに突っ込まざるを得ませんでした

この本、正直云って
登場人物の誰も好きになれなかったです
工場に働く人間たちは
なんというかみんな下世話なネタ(つまりワイドショーネタ)が大好きで
悪意を悪意とも感じない人間ばかり

益田は鈴木のことを記事にしますが
記事を書いたときに、被害者のことを少しでも考えたのだろうかと
益田もきっとジャーナリストになれるかもしれないと
甘い言葉につい騙され
知りたがってるのはジャーナリストではなく大衆で
それはまた、恐ろしい集団であることも頭の片隅にでも過ったろうか

最後だけ、うまくまとめた感じがあったけど

どうも、最近の読書であたりに出逢えないな
やはり文豪と呼ばれた人たちの文章とは、どこかが違うのでしょうね

次は森絵都の「みかづき」を読む予定です


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