mixiユーザー(id:2958687)

2019年06月01日04:39

70 view

5月の読書記録

先月は『バルト・セレクション』に手こずったかな?橋本治の『花咲く乙女の〜』も結構難物だったし。ということで、今一歩で6千頁には及ばず。『吉本隆明講演集』を3冊読了してたのにはちと驚き。今月も頑張って読もう。

2019年5月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5653ページ
ナイス数:139ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■吉本隆明〈未収録〉講演集第8巻 物語と人称のドラマ: 作家論・作品論〈戦前編〉 (シリーズ・全集)
何だかんだ言って、吉本の醍醐味が何より発揮するのは、文学を語っている時では?という気にさせられた。こちらの理解力ということもあるが、とにかく他の巻に比べると時代的な制約から自由というのが、何より大きい。個人的にとりわけ興味深く読めたのは「太宰と鴎外」か?一見、結びつくようであまり結びつか無いこの二人に意外な接点があったということに驚き。また吉本の二人への評価が面白かった。それと柳田國男を主題にした講演は、柄谷のそれと被るところが少なくなく、二人の問題意識の共通性、及び吉本の柄谷への影響を再認識した次第。
読了日:05月31日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9768827

■大江健三郎 柄谷行人 全対話 世界と日本と日本人
この二人によって語られる文学は最早過去の物になった…ついそんなことを思わされた。今も文学とされる本は世に出ているけれど、でも、それは二人が主題にするそれと似て非なる物という気がしてならない。それは、二人が取り上げる作家の何人かは、今日殆ど忘れ去られているという事実に端的に表れていると思う。とりわけ一般的にはプロレタリア作家という側面ばかりが取りざたにされる中野重治に、それだけでは終わらない貴重な面があったという事実は注目に価する。また、最後の対談での問題意識は非常に今日的な物であることに驚かされた。
読了日:05月30日 著者:大江 健三郎,柄谷 行人
https://bookmeter.com/books/12878276

■意味の深みへ: 東洋哲学の水位 (岩波文庫)
知の巨人とはこういう人を言うんだな…と改めて思わされた。イスラムだけでなく、仏教を始めとする東洋哲学はおろかデリダなどの現代思想にまで通暁しているのだか、恐れ入るという他はない。内容の理解の程は正直怪しいが、これは繰り返し読むべき物だということは認識できた。とりわけ言語の意味について、水平的ではなく垂直的な深みという点から論じる行には、目から鱗。後、作者後書きが後書きというよりちょっとした論考の程をなしているのにも驚き。それとデリダ論で訓詁学的な読みではなく、意図的な誤読を奨励しているのも刺激的だった。
読了日:05月29日 著者:井筒 俊彦
https://bookmeter.com/books/13595707

■まつらひ
悪くは無いのだけれど、今一つ食い足りないというか、新味が無いな…というのが第一印象。ここしばらく濃密な長編が続いたので、そう感じるのか?個人的にとりわけ印象的だったのは、「約束の神」だったか?かなり特殊なジェンダーの持ち主である語り手は、『海辺のカフカ』の大島さんを想起させた。この人を主人公にした後日談をぜひ描いて欲しいと思う。冒頭の「夜明け前」は伏線の張り方が、著者にしてはちょっとベタな方向に寄りかかっている気がしてちと残念。同じ男性として、主人公の夫には、なんとも言え無い複雑な思いを抱いてしまうけど。
読了日:05月24日 著者:村山 由佳
https://bookmeter.com/books/13369992

■吉本隆明〈未収録〉講演集第7巻 情況の根源から (シリーズ・全集)
従来の右翼及び左翼の動きが低迷化する一方である現在において、本書を読む意味に疑念がわくのと同時に、硬直化した左翼の発想に対する著者の批判には、その鋭い舌鋒は今を持っても有効だという気にもさせられた。個人的にとりわけ興味を覚えたのは、大衆文化に語った箇所。このあたりや出版文化への言及など、あの渋谷陽一がどれだけ著者に影響を受けたかがよくわかる。思想を歌うフォーク歌手よりアイドル歌手を評価するくだりなど、若干首を傾げたくなるが、著者の考え方の一貫性が伺える。と同時に著者の不在の重さを改めて痛感させられる…
読了日:05月21日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9743936

■総介護社会――介護保険から問い直す (岩波新書)
これってケアマネのテキストと内容が被るな…というのが第一印象(笑)。それはともかくとして、介護に携わる者としてというだけでなく、五十路を迎えた独居者として、読み進めるうちに暗澹たる気持ちにならざるをえなかった。進みゆく高齢化、介護者不足、需要と供給のアンバランス…とにかくあっちを立てればこっちが立たず的などうしようもないジレンマに、いっそのこと安楽死を認めればいいのでは?なんて暴論を口にしたくなる、マジで。ただ、そういう状態に陥らないために、一人一人が問題に取り組む姿勢が重要だということを教えてくれる。
読了日:05月21日 著者:小竹 雅子
https://bookmeter.com/books/12996698

■教会と国家〈3〉戦後の東西冷戦時代 (バルト・セレクション)
やっとで読み終えた…というのが、正直なところ。決して晦渋な内容ではないのだけれど、戦前戦後のドイツ、及びスイスの歴史的背景を理解していないと分かりづらい記述が多い上、ハイフンを多用したために意味が取りにくい箇所が多々あり、そういう箇所はつい字面を追ってすましてしまっていたため、理解の程はかなりあやふや。また、当時の政治状況を色々と憂う箇所を読んでいても、つい「そういうことを言いながらも、家で愛人を囲っていたんだよな…」なんて余計なことを考えてしまう(笑)。著者後書きにもあるようにじっくり読み返す必要あり。
読了日:05月20日 著者:カール バルト
https://bookmeter.com/books/12786261

■未成年(下) (新潮文庫)
カタストロフ的な結末を幾度となく示唆しながら、大円団に近いラストに、少なからず肩透かしを食らったのと同時に安堵感を覚えたのも確か。他の五大長編に登場するようなデモーニッシュな登場人物の欠落がやはり物足りない。複雑な性格と経歴の持ち主である、父ヴェルシーロフの描写もどこか不徹底。ただ、彼のマカールに対する意外なまでの敬意には驚かされたけど。それはともかく、読んでいて終始苛立ちを覚えたのは主人公アルカージーの中二病ともいうべき、無分別な言動。本書で示唆されながらも世に出なかった続編では成長できたのだろうか?
読了日:05月20日 著者:ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/505864

■花咲く乙女たちのキンピラゴボウ 後篇 (河出文庫)
本格的漫画評論の嚆矢であり、恐らく本作品を凌ぐものはその後出てこなかったのでは?そう思うと改めて著者の存在の偉大さを痛感。個人的にはリアルタイムで『マカロニ』と『パイレーツ』を正面切って論じた文章が存在したということに、驚愕を禁じ得ない。それからとりわけ圧巻だったのは、最後の大島弓子論。子供が大人になっていくという理不尽さを痛切なまでに描き切った大島、そしてその痛切さを見事なまでに論じ切った橋本によるコラボと言っていい力作だと思う。その後もコンスタントに漫画論を書いていてくれれば…その一点が惜しまれる。
読了日:05月16日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/9804116

■未成年(上) (新潮文庫)
「早いところ亀山訳が出ないかな」というのが、第一印象(笑)。ロシア文学の常で、同一人物でも場面によって名前の表記が違うから、「あれ!」と思ってしまうこと数知れず。それはともかくとして、他の5大長編に比べると、どこか食い足りないというのが正直なところ。デモーニッシュであったり、過剰だったりという登場人物があまり出てこないし、あの饒舌極まりないお喋りも本書では希薄。今でいうこじらせキャラの主人公アルカージイの人物造形もどこか物足りない。そういえば、主人公によるモノローグというのも、5大長編では唯一のスタイル。
読了日:05月15日 著者:ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/505863

■花咲く乙女たちのキンピラゴボウ 前篇 (河出文庫)
タイトルと表紙に騙されて、評論とはいえ、対象が漫画だけにサクサク読めるだろうと思っていたが、意外に難物。対象になっている漫画について無知であるというのも関係しているが、例によって例のごとくともいうべき語り口は、その理路がなかなか掴みにくく、読み進めるのに難渋したことが少なからずあった。だもんだから、巻末の著者後書きで「男にはよくわからない世界」と言ってくれたので、幾分救われた気になった(笑)。それはともかくとして、本書が出て40年近くの間に、漫画を巡る状況も大分変わった。今の状況を著者はどう見てたのか?
読了日:05月15日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/9806242

■キリスト教講義
効率性、即効性ばかりが優先される昨今において、キリスト教を信仰とはどういうことか?を一キリスト者として改めて考えさせられることに。とりわけ、信仰を個人的なものとする風潮に対して、はっきりと否を唱える二人のスタンスには、反省させられることしきり。また、かなりの紙幅が裂かれている悪の問題は非常に示唆に富む。特に「悪を善の欠如」とするアウグスティヌスの定義をより深いものへと昇華させるくだりには目から鱗。それに、隠し味的にスパイスを効かせた現代社会批判も、好感が持てる。全てのクリスチャンに読んでほしい一冊。
読了日:05月11日 著者:若松 英輔,山本 芳久
https://bookmeter.com/books/13289664

■「責任」ってなに? (講談社現代新書)
何の気なしに手にとってみたが、想定外に興味深い内容にびっくり。しかもかなり今日的な内容なので、比較的最近の本かと思ったら、実は十数年前に出たということで二度びっくり。無責任体質という問題が俎上に上がっていたのはこの時点からだったんだな…と思うと、その傾向が最早危機的なレベルにまで達しているのが理解できるというか、どうしてここまで放置していたのか?というか。とりわけトップが責任を取らずに甘い汁を吸い続け、中間管理職が詰め腹を切らせられるという構造が戦中からのものという事実は、我々に重い問題を投げかける。
読了日:05月05日 著者:大庭 健
https://bookmeter.com/books/45259

■吉本隆明〈未収録〉講演集第6巻 国家と宗教のあいだ (シリーズ・全集)
あまり一貫したテーマがなく、包括的な感想を述べにくいというのが正直なところ。冒頭の廣松論も期待して読み始めたのだけれど、幾分肩透かしを食らった感が否めない。また、60年代に行われた講演はやはり現在にそぐわず今日的な意味があまり感じられない。それに比べると宗教論のほうがまだ興味深く読めたか。オウムの問題は時代的制約があるものの、宗教そのものを考えていくうえで、示唆するものが少なくないと思う。また、消費社会についての考察は、格差社会が極限近くまで来た今日からすると、逆説的な意味で読む価値がある気がする。
読了日:05月04日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9712305

■デカルト入門講義 (ちくま学芸文庫)
デカルト哲学をわかりやすく解説した良書だとは思うのだけれど、平易な語り口に乗せられて、つい内容の理解を等閑にしてしまったというのが正直なところ。また、曲がりなりにも仏哲学を専攻していたのにも拘らず、デカルトと真剣に向き合うことをせず、ああ「我考える」の人ねだけで済ませてしまったことを深く反省。個人的にはデカルトが神学者との親交が深かったというのがとりわけ印象的。パスカルのデカルト批判を思うと尚更…ただ、原語をいちいちカタカナ表記するのがちょっと気になったが…また、デカルトと分析哲学との関係も興味深い。
読了日:05月04日 著者:冨田 恭彦
https://bookmeter.com/books/13430358

■読書の価値 (NHK出版新書 547)
元々、読書も国語も苦手だった、しかも日本の小説は殆ど読まないという小説家によるユニークな読書論。つい眉をひそめたくなる箇所も散見されるが、概ね興味深く読めたか。とりわけ驚かされたのが、著者の発想というか、物事の捉え方。理数系ということもあるのかもしれないが、根本的に脳の構造が自分と違うな、と思わされた。小説家になりたいのなら、むしろ小説は読まないほうがいいというのは、あまりに極論だと思うが、その多くが大の読書家である筈の編集者が小説家にならない(なれない)という事実を鑑みると、その節にも一理あるかも。
読了日:05月02日 著者:森 博嗣
https://bookmeter.com/books/12740260


▼読書メーター
https://bookmeter.com/

1 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年06月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      

最近の日記

もっと見る