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2019年05月27日20:14

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うちには、天使がいます。 13.「命」

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13.「命」

<前回までのお話>
2018年(執筆している時点で去年)4月初め、
やまねこのパートナー・ゆかさんは卵巣がんの疑いありと診断されました。
4月24日火曜日、自宅で急に動けなくなり、救急車でZ医大病院に搬送され、
翌25日には脳梗塞が見つかり、そのまま腫瘍の手術まで入院することになりました。
29日、2度めの脳梗塞。ゆかさんは個室に移動し、その夜からやまねこも泊まりこむことになり、
腫瘍の手術予定は大幅に早まって、5月2日に決まりました。
4月30日、ゆかさんは朝からまるで天使のような穏やかな笑みを浮かべていましたが、
午後になって激しい腹痛を起こしてしまいます。
(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)



ゆかさんはずっと「いたい いたい」とうめき続け、、
やまねこは手を握って「大丈夫」と話しかけていました。
脳梗塞のことで頭がいっぱいで、
卵巣の腫瘍のことをけっして忘れたわけではなかったけれど、
どこか遠くのことのように感じていたのを、現実として突きつけられた気がしました。

どれだけの間そうしていたでしょうか。
それでも時間の経過とともに、だんだん薬が効いてきたようで、
少しずつうめき声もおさまっていきました。

やがて、ゆかさんは朝と変わらないおだやかな表情でこちらを見て、
「お歌が聴きたいの」と言いました。
「やまねこの?」
「うん、歌って」

少し考えました。
やまねこの歌は、どちらかといえば殺伐とした詞の内容のものが多いからです。
「どれにしようか」
「どれでもいいよ」
考えて「じゃ、『命』歌おうか」と言いました。
「うん」


  「命」

  祝福されない命があって
  道端は嘆きで埋まっている
  閉じた眼(まなこ)で街をにらんで
  おまえはか細い声をあげる

   出会った日がたぶん誕生日
   震える手に抱き上げられて
   生まれてきてよかったねと
   いつかだれかが言ってくれるよ


  誰もが愛されると限らない
  この世は平等にできていない
  それでもきっと 飢えと渇きの
  命ずるまま明日も生きている

   出会った日がたぶん誕生日
   汚れても 雨にうたれても
   生まれてくれてありがとうと
   いつか誰かが笑ってくれる


   出会った日がたぶん誕生日
   汚れても 雨にうたれても
   生まれてくれてありがとうと
   いつか誰かが笑ってくれる



もともとはメイさん(ねこ)のために作った歌なのですが、
今日はゆかさんのために歌いました。
途中からゆかさんもいっしょに歌いました。
涙が止まらなくなりました。
ゆかさんの目からも涙があふれていました。

2001年5月1日、やまねこは道端に捨てられていたメイさんと出会いました。
まだ目も開かず、へその緒もついたまま、つまり生まれたてだったのですが、
ミルクをあげて、トイレの世話をして、なんとか助かりますように、と、
必死で育てたものでした。
そしてメイさんもそれに応えて、元気に育ってくれたのでした。


「あした、メイさんの誕生日だよ」
「メイさん、会いたい…もいちど…」
ひとつ思い浮かんだことがありました。
「メイさんはね、『会いたい』と思えばぜったい会えるねこなの。
やまねこもね、何度も『もう会えないかもしれない』と思ったけど、
『会いたい』って思いつづけたら、会えた。
だからゆかさんも『会いたい』って思いつづけてれば、ぜったい会えるよ」

メイさんは、やまねこといっしょにたくさん旅行しました。
そして伊豆で一週間、
知床で19日間、行方不明になり、
でもどちらも最後には、やまねこの許に帰ってきました。
会いたいと思えば、必ず最後には会えるねこ。
このお話は、またあらためて書きたいと思います。

「うん。お誕生日、たくさんお祝いしてきてあげて」
「うん」
「ねこさん、お願いがあるの」
「なに?」
「お式があげたいの」

あ…ゆかさんはそう思っていたんだ。
やまねこがそういうことに全く興味がなく、
むしろあらたまったことかしこまったこと、堅苦しいことはとにかく苦手、
「式」ってつくものは全部苦手、ってずっと言っていたから、
今までゆかさんもそういう話はしないでくれていたんだ、と、今わかりました。
じぶんが理解しようとしていなかったんだ。
「ごめんねゆかさん。退院したら、お式あげましょう」
不思議なくらい素直に言葉が出てきました。
「うん」
「おともだち呼んで。みんなの前でいしょに歌えたらいいね」


やまねこはピアノを弾いて、歌をうたっています。
もちろん「命」も、その歌の中のひとつなのですが、
差し迫った問題としては、
5月4日にLIVEの予定が入っていることでした。
あしたから5月。もう4日しかないけれど、
あさって2日にはゆかさんの手術。
そのあとのことは、まだ想像もつきません。

やまねこは今まで、ブッキングしたLIVEをキャンセルしたことはありませんでした。
もちろん危機は何度かありましたが、
インフルエンザにかかったときも、LIVEの二日前くらいに治ってなんとか間に合いましたし、
メイさんが北海道で行方不明になったときも、飛行機で帰ってきて歌いました。
(そしてまた飛行機で北海道に戻りました)
記録とかそういうのにこだわっているわけではなくて、
とつぜん来てくださるお客さんがいる可能性もある以上、
できる限りキャンセルしたくはありません。
それでも、いざという事態になったとき、どちらを優先すべきかはわかっていました。
連絡するなら早いほうがいいです。

「ごめんねゆかさん。ちょっと待っててね」
ロビーからライブハウス「四谷天窓.comfort」に電話をかけました。
ゆかさんが緊急の手術をすることになったこと、
できる限り4日は出演するつもりだけれど、手術の結果次第でなんとも言えないこと、
3日にもういちど連絡することを伝えて、
天窓の担当者のかたも快く受け入れてくださいました。

もちろんゆかさんが大丈夫で、出演できればベストだけれど、
そういえばぜんぜん練習してないな(^^ゞ
だいたいほとんどうちに帰ってもいないんだし。
それ以前にどの歌うたおうかも考えてなかった。
でも、なんとかするんです。できるかできないかではなく。


夕方、やまねこのベッドが届きました。
折り畳み式の、なんていうか、ビーチチェアみたいなかんじのもので、
組み立ててみると今度はゆかさんのベッドより若干低いくらいで、
布張りなのでおしりの部分が少し沈んだりしますが、ぜいたくは言っていられません。
少なくとも高さはストレッチャーの半分くらいなので、
落っこちる恐怖感はぜんぜん少ないです。


そしてまたうちに戻り、メイさんにごはんをあげて、
今日はちょっぴりピアノと歌も練習して、
病院に戻りました。


病院は夜も早いです。
9時消灯。
ゆかさんは夜になってまた痛みが出て、点滴を追加してもらいました。
そしてきのうの夜よりは少し楽な姿勢で手を握って、
やまねこはゆかさん以上にあっという間に寝てしまいました。

(続きます)





昨日5月26日、日吉NapでのLIVEも無事終了いたしました。
聴いてくださったみなさん、ありがとうございました。

<うたった歌>

  あなたは静かに笑っている
  脈動
  Earth Color
  しずめのさくら
  Dear Love

<今後のLIVE予定>

  6/16(Sun.)駒沢大学ファンラン
  Open11:00/Start14:00(予定)/Charge お食事代のみ

  6/29(Sat.)四谷天窓.comfort → http://otonami.com/com_top
  Open12:30/Start13:00/Charge \2,000+1D

お会いできるとうれしいです。
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