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2019年05月25日12:57

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よたよた日記144「あれとあれ」

「絶滅してほしい生物図鑑」のイラストが共感呼ぶ “突然現れるネット広告”“当たりそうな傘の持ち方する人”などキャラクター化
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=5633451

「この世の中から絶滅してほしい生物をイラスト化した図鑑が人気らしいね」
「絶滅危惧種生物図鑑じゃなくて絶滅希望種生物図鑑ってやつだな」
「紹介されてるのは仮想の生物も多いけど俺が絶滅してほしいと願ってる生物はリアルな生き物のアレとアレなんだよね」
「アレとアレか、、、、俺の意見と同じだな」
「やっぱりアレとアレしかいないよねえ」
「ああ、あいつらが生きてるおかげで俺たちがイヤな目をする」
「なんとか早く絶滅してほしいね」
「そうだな、男たちの明るい未来のためにな」

「いったい何なんだよ!お前らが言ってるアレとアレって!!!」(外野の声)

「初台の福臨門」

新宿駅の構内を出るとそこは東口ではなく夕暮れの雑踏口だった。周囲の景色を眺める余裕もなく人ごみに押し流されながら2分ほど歩く。やっと広い通りに出て紀伊国屋書店や伊勢丹が見えた時に初めて昔を思い出した。この景色なら記憶がある。まだ待ち合わせの時間までは1時間近くあるのでぶらぶらと新宿散策をと考えていたがごった返すこの界隈でそれは無理なようだった。
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伊勢丹の西側の歩道に仙台ナンバーの巨大なロールスロイスが人の流れを遮るように停まっていた。自分たち庶民はビルの壁と車の間のわずかなすき間を通り抜けるしかない。今の社会の縮図のような風景だ。伊勢丹の中には一度も入ったことがなかったので入ってみることにした。ファッションに特化して斜陽化する百貨店業界では善戦しているというニュースは聞いたことがあるがどうなんだろう。
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店内には高級ブランドの店がズラッと並んでいる。売られているものはいかにも高級で高価だが、その価値がいったいどのようなものであるかは全くわからない。ハウスマヌカンたちは男も女の一様にオシャレである。店内で品定めをする客は年収1千万円以上か、裕福な資産家とその家族、あるいはITや水商売で一発当てた青年たちのように見えるが、おそらくそれは貧乏人の偏見かもしれない。一本10万円以上のネクタイが売れればどれくらいの儲けになるのか、一本100万の腕時計が売れればいったいどれくらいの満足がやり取りされるのかは自分のような庶民のあずかり知るところではない。
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街中の雑踏と伊勢丹の高級店舗の光景にすっかり打ちのめされて歩く気力も失ってしまった。待ち合わせ時間にはまだ半時間はやい。喫茶店で休むといってもゆっくりした時間を作れそうもない。しかたなく四谷3丁目のほうまで足を伸ばしてみるが、50年ほど前の記憶と重なる風景は一つもなかった。

休憩場所をさがしてまた伊勢丹付近までもどってくると交差点の角にJTBのオフィスがあった。ここなら旅のパンフレットを眺めるふりをして半時間ぐらいならソファーで休めるかもしれない。その考えは間違っていなかった。カウンターは満席で賑やかだったが旅のパンフレットが並べてある前の椅子は十分に空いていた。店員たちはこの男が本当の客でないことくらいはわかっていたかもしれないが、はたきを持って追い出されることもなく半時間ほどの時間を無料でゆっくり休むことができた。
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6時過ぎにやっと女性陣と合流できた。彼女たちは日暮里から代々木をまわり買い物とスイーツを楽しんできたらしい。竹下通りも大変な混雑だったとのこと。新宿では高島屋の地下食品売り場をクルージングしていたようだ。3人で伊勢丹見学でもと思っていたのだが、悲惨な下見状況だったのでそこはスルー。少し宵闇も濃くなったので歌舞伎町前あたりでタクシーを捕まえ都庁の展望台に向かう。新宿の観光スポットはここくらいしかないのだ。
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閑散とした都庁地下を歩いてエレベーター前に行くと意外に大勢の観光客が並んでいる。外人も多い。10分ほど並んで45階の展望台に上る。暗い展望室に滞留する大勢の観光客。半年ほど前に空から眺めたドバイの宝石をちりばめたような夜景には遠く及ばないが、入場料が無料なので文句は言えない。東京の街に栄光と挫折が点滅する。そんな土曜日の夜だ。
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都庁前からふたたびタクシーに乗って初台の台湾料理店「福臨門」に向かう。今夜の夕食会場だ。少し前のNHKテレビで大杉漣さんがよく通った店として紹介されていた。彼が店に来た時は必ず注文するというラーメンというのがおいしそうだった。店主のインタビューも少し流れたが言葉数がすくなく不愛想だった。それでも変にヘラヘラしていなくて悪い印象ではなかった。東京旅行の直前にたまたまその番組を観たのも何かの縁だろう。大杉漣さんに対してそれほどの思い入れはないが、彼が同郷同世代の奇才偉人であることに違いはない。ラーメン一杯での供養も悪くはないかも知れない。それくらいの気分だった。
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タクシーが細い路地に入った。「この辺だろうと思うんですが、、、」と運転手。わからんのかい!」乗客も目を凝らして必死に「福臨門」をさがす。しばらく走ってやっと「福臨門」発見。三人ほどが座れる丸いテーブルが4つほどの小さい店だ。先客は一組二人だけ。あまり愛想の良くない奥さんがホールの世話に立っている。
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「あのう、NHKの番組を観てやってきたんですが、、大杉さんがよく頼んでたというラーメンは?」奥さんがすぐにメニューを広げて「このザーサイラーメンね」「じゃあ、それをひとつ」「はい」奥さんが奥の厨房にいる店主にオーダーを通す。
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「他は何にする?」「小籠包とふかひれ餃子」と女性陣。「それとエビのマヨネーズ炒めとレバニラも頼むか」と自分。「あとはチャーハン」「それにデザートでこのゼリーを」
「自分は生ビール」「お水と取り皿をください」オーダーが全部厨房に届きビールと水と取り皿がやってきた。オーダーが通ってから料理を作り始めるらしいので少し時間はかかったが、頼んだものが順番にテーブルに並んでいく。中華料理といっても油濃くなくあっさりとした味付けだ。注文をし終わってからもう一度メニューを見直したが料理の品数がかなり多い。それだけ腕や味には自信があるということか。ちらっと厨房の店主を覗くと担々麺といった表情で料理を作っている。なんだかテレビで観たのと同じ印象だな。
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店内を見回すと大杉さんの写真やメッセージが飾られている。店主の手が空いたころを見計らって声を掛けてみた。「NHKの番組を観て自分たちは四国からやって来たんですが反響はありましたか?」すると意外なことに店主が今まで見たことのないような笑顔を見せて「おかげさまで、たくさん来ていただいてますよ」と少したどたどしい日本語で答えてくれた。テレビ画面では不愛想一辺倒のように映っていたけれど案外陽気で話好き?
「テレビでご主人のインタビューも観ましたがあまり雄弁じゃなかったですよね?いやその朴訥というか飄々としたところが自分には好印象でこうやってお店を訪ねて来たんですけどね(笑)取材は大変だったんでしょうね、話に聞くと二分くらいの番組を仕上げるためには五時間くらいカメラを回すらしいですもんね」
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すると店の奥で壁に寄りかかってテレビを見ていた奥さんが突然飛び上がるように「そう!五時間よ!五時間!」と大声を上げた。顔をくしゃくしゃにして笑っている。奥の厨房のご主人が「そうなんです、取材が大変だった、、五時間くらいずっと質問されて、私、疲れたね(笑)あまり良くない顔つき、しゃべり方だったのはそのせい(笑)いつもはそうじゃないよ」と。
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真相はそういうことだったのか。てっきり不愛想で口数も少ない人かと思っていたが、実に陽気で雄弁な店主だった。遠いところからやって来た自分たちに対する多少の配慮もあったのかもしれないが、「レバニラモヤシ炒めは本物じゃない、本場の台湾ではモヤシ入れないよ、モヤシはシャキシャキしていて食感が良くて安いから日本では流行ったね」と料理の説明をしてくれる。こちらから尋ねもしないのに大杉さんの思い出話なども聞かせてくれた。デザートを食べ終わるまでの一時間ほど美味しい料理と面白い店主の話に大満足して店を後にする。サービスで大杉さんが大好きだったという「キャベツの酢漬け」までサービスしてくれた。「ごちそうさまでした」「ありがとうございます」帰り際には夫婦そろって満面の笑顔で見送ってくれた。初台の路地裏にも土曜の夜の暗闇がだんだんと積み重なっていく。




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