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2019年05月18日20:39

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小説 サングラス (姉妹)18

小説 サングラス (姉妹)18
 酒匂がメールに気付いたのは寝る前だった。その日は和太鼓を習っている主婦グループが遅くまで残り、カウンターには常連の歯科衛生士や小杉さんが残って午前0時まで店を開けていた。アルバイトの結城ちゃんは定時で帰したので、洗い物をしたり翌日の仕込み予定を立てたりして、2階の自室に入ったのが午前1時前。シャワーを浴びて、寝る前に携帯を確かめた。美穂がドタキャンするくらいだからよほどのことだろうと、「了解」とだけ返信を送った。
「これで明日は尚美ちゃんと2人だけかぁ・・」
 酒匂は気が重くなる。尚美の押しの強さが苦手だ。姉妹で、こうも違うのかと呆れるほどだ。控えめで内向的な姉の美穂と異なり、尚美は外交的で活発だ。自分を馬鹿っぽく見せる頭の良さもある。天真爛漫に見せながら、どこか計算で動いている風にも見える。
 美穂の話しでは、子供の時から母の後継者として育てられたらしいが、確かに政治家向きだ。都会に住んんでいたらモデルか女優にスカウトされていたかもしれないほどの、スタイルの良さと美しい顔立ちをしている。
 尚美が顏を出すようになってから、尚美見たさに男性客が増え、その彼女や、その知り合いと、ずっと客足が伸びている。売り上げ増加のためにはありがたい存在であるが、酒匂は正直尚美が好きでは無い。世界は自分のためにあり、自分が世界を動かしているような物言いが腹立たしくなる時が多い。
 客商売のつらい所で、そういう者とも平静に付き合い、じょうずに活用しなくてはならない。尚美を利用してこそプロの接客士だと、酒匂は自分を戒め、尚美と親しんでいるが、その度に自分の狡さが嫌になる。
 ポートレートを撮ってと、尚美は最初から言っていた。出会いは菅沼の店で、尚美の方から声をかけて来た。尚美は酒匂が撮った美穂の写真を見ており、酒匂を知っていて、声をかけたと言う。
「俺はポートレートは苦手だし下手だよ。知り合いに上手なカメラマンがいるから・・」
 酒匂は、尚美の申し出を最初は断ったのだが、友人の佐々木にモデルを紹介してくれるよう、頼まれていることを想いだし、尚美と連絡を取った。
 佐々木と出会ったのも、菅沼の店だった。佐々木は二人の女性をモデルにテラス席でポートレートを撮っていた。酒匂が望遠レンズを付けて入って来たのを見て、写真を趣味にしていると気づいたのだろう。人なっこい笑顔で会釈した。
 離れた席で菅沼が見物していたので、酒匂は菅沼の隣に腰を下ろしたのだが、見物されていることに動じる風もなく撮影を続け、30分ほどで撮影を終え、菅沼に丁寧に礼を言う。
「二人もモデルさんを連れてとは羨ましいですね」
「めったにないんですよ。お姉ちゃんが好きなんですけど、なかなかモデルさんになってくれる女性がいなくて・・」
 声をかけた酒匂に、機材を片付けながら佐々木は応え、なんとなく写真談義になった。女性ポートを専門で撮っていると言う佐々木はバッグからこれまでに撮ったとたくさんの写真を見せた。
 いろんな衣装とポーズの美女たち、小杉と作風は違うが、なかなかの写真を撮っていた。
 佐々木なら尚美を上手に撮るだろうし、小杉と違って安心だと酒匂はささきのことを思いだしたのだ。(続く)

獅子座クウネルのつぶやき獅子座
 雨でした。当然日南市へのドライブへ行く元気はです、堀川運河を下るとチョロ船は撮りたくても撮れずです。明日も雨のようですね。このまま梅雨に入ったりしてね。真ん中の写真、野生の猿です。石山観音寺へ立ち寄ったとき、道路を横断していました。すぐに車を停めましたが逃げる姿を1枚撮れただけでした。

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