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2019年05月02日19:32

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『腐女子、うっかり…』のQUEEN観

(NHK)よるドラ『腐女子、うっかりゲイに告る』。
放送開始前に番宣を見てたら、主人公の少年がクイーンのファンだと紹介されてたので、ずいぶん安直な設定だな〜と感じました。このドラマのキーワードないしキーコンセプトは、

 人間は、自分が理解出来るように、世界を簡単にして分かったことにする

ということになるようですが、にもかかわらず、主人公のキャラ設定の時点で、クイーン(フレディー)を「簡単にして分かったことに」しているじゃないか――と、疑問に思ったわけです。

ところが、1話2話を見てみたら、そんなに単純じゃないことが分かってきて、ニヤリとしてしまいました。

たとえば第1話のラスト近く。
主人公の純(金子大地)は、クイーンをよく知らない三浦さん(藤野涼子)に、一番有名な曲の1つだと言って「We Will Rock You」を聴かせる。「聴いたことがある」という三浦さんは「この曲が一番好きなの」と問いかける。すると純は「いや。この曲はクイーンらしくない」と答え、有名じゃない別の曲が流れる……。

ボクもわからない曲だったので調べてみたら、「懐かしのラヴァー・ボーイ Good Old-Fashioned Lover Boy」。1977年にイギリスで17位で、他国ではチャートインの記録がない、マイナーなシングル曲でした。ボクも、1〜2回くらいは聴いたことがあるかもしれませんが、(クイーンのファンではないので)記憶には残ってないです。

「We Will Rock You」はブライアン・メイの曲だし、ボクもそんなに好きじゃないから、そのこと自体はそんなに意外ではないです。しかし、わざわざ「We Will Rock You」を出しに使って、「Good Old-Fashioned Lover Boy」みたいなマイナーな曲を提示してくるセンスが、かなりユニークです。

そもそも、ドラマの中でフィーチャーされる音楽というのは、平均的な日本人の感覚に合わせることが多いので、マニアや専門家の視点から見て面白いと思えることは皆無に近いです。特に、ミュージシャンが出てくるドラマで、ライブなどのシーンが出てくると、安っぽすぎて見るに堪えません。なので、このドラマにおけるクイーンの扱いは出色だと言えます。

第2話でも、上記の2人の会話を通じて繰り広げられるフレディー論がちょっと面白かったです。
「フレディーはバイセクシャルなのか」という三浦さんに対して、純は「バイセクシャルと女を抱けるゲイは違う」という独特な見解を示していました。これは、その後のストーリーに関係してくる話なので、純粋なフレディー論とは言えないのかもしれませんが、フレディーのセクシャリティーに関して言えば、いまだに謎が多いというのが実情で、メンバーですら明確な答えは出せていないみたいです。

いずれにしても、このドラマで語られているクイーンは、昨年の映画以降、世間一般に流通している安っぽいクイーン話より面白いし、3話以降に出てくるクイーン論にも期待できそうです。

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これに関して、ちょっと余談を書いておくと……、
数か月前に、坂上忍が出ている番組でクイーンが取り上げられていて、その中で「ボヘミアン・ラプソディー」は、自分がゲイであることを歌っているという解釈が紹介されていました。「ママ、僕は人を殺してしまった」という歌詞は、「異性愛者の息子」を殺して「同性愛者の息子」になってしまったという意味だと。番組出演者は、なるほどとか言って納得していましたが、ボクは失笑してしまいました。

「ママ〜」という歌い出しで始まって、母親に自身の転落人生を語るという歌詞は、黒人のブルースに頻出する定番のスタイルです。そうした基礎知識がある人なら、「ボヘミアン…」の歌詞がブルースの流用だということは簡単にわかります。ボクはブルースに詳しいわけじゃありませんが、ブルースの歌詞には「人を殺した」なんて話はたくさんあるはずです。

つまり、「ボヘミアン」という曲は、ブルースとオペラという、物語性の高い2つの形式を組み合わせることによって成立している曲なんです。なので、「ママ、僕は人を殺してしまった」という歌詞は、(ブルースを知ってる人には)特に目新しい表現ではないし、そこに特殊な意味が含まれていると考えるのは不自然です。この手の強引な解釈がOKなら、どんな曲でも、ゲイの歌に解釈できちゃうでしょう。

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このドラマに関して、クイーン以外で気になるのは演出。
ホラー風の演出が、マイルドなテイストで多用されていて、ボクなんかは、そういうところも気になります。まあ、そういうところに関心を持つ人はほとんどいないと思いますが。

あとはキャスティング。金子大地と藤野涼子、この(あまり実績のない)2人を起用した時点で、制作スタッフの冒険心とセンスの良さが頂点に達していると思います。特に金子大地。彼がいなかったら、この企画は成立していなったような気がします。ルックスもそうですが、やや粘着系の声質で語られるナレーションが、なんとも言えない説得力を生み出しているので、見ていて感情移入できます。

第1話に、「現実のゲイは(BLと違って)汚い」というセリフがありましたが、それと同じことは、このドラマの金子大地にも言えます。誰とは言いませんが、これが変な役者だったら、見るに堪えないドラマになっていた可能性が否定できないからでです。勃つ「好き」と勃たない「好き」――なんて過激なセリフやシーンがバンバン出てくる話なだけに、役者の印象というのは重要です。

1年前に話題になった『おっさんずラブ』は、ボクにとっては、過大評価されていると思える作品であり、同作の中で1番印象に残ったのは、同性愛じゃなくて、サブストーリーとして挟み込まれていた、金子大地と大塚寧々のエピソード。金子大地の名前もその時、初めてチェックしました。あのドラマは、職場の男5人のうち4人がゲイという、かなり無茶苦茶な展開だったのですが、最後までヘテロだった金子大地が一番印象に残った、というのは皮肉な話です。

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ちなみに、冒頭に引用したこのドラマのキーコンセプトについては、やや違和感があります。

ドラマでは、物理における「摩擦や空気抵抗を無視する」という前提を、世界を簡単にして理解する事例として、否定的にとりあげていました。でも、それは科学や学問に対する言いがかりに近いです。そもそも、ありのままの事実をありのままの状態で考えるなんてことは不可能。人間は、物事を抽象化・単純化することで考えることを可能にしています。複雑な世界の現象を単純なモデルで説明できたりすると、ノーベル賞がもらえたりしますから。(^^)v

――とりとめがなくなってきたので、これで終わります。
文章を書く場合も、不必要なことをカットして単純化することが大事ですね。(^^;;

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