子供のころ、昭和天皇を見るたびに、「この人は頭がボケているんだろうか」と思っていました。
後になってわかったのは、そう感じてしまう原因が言葉遣いにあった、ということです。天皇は国民に対して敬語を使えない……。
昭和天皇は「みんな、集まってくれてありがとう」などと言っていましたが、一般の大人なら、公の場では「皆さま、集まってくださって、ありがとうございます」などと言うのが普通です。なので、子供のボクは、昭和天皇の子供っぽい言葉遣いに違和感を感じていたんだと思います。
平成天皇は、そうした問題に、ものすごく自覚的だったのか、敬語を使わなくても子供っぽくならないような言葉遣いを、常に意識していたように思います。
今日(昨日?)の退位礼正殿の儀でも、「深く謝意を表します」とか、「心から感謝します」、「心から願い」など、うまく敬語を避けながら、不自然に感じさせないような言葉使いを工夫していました。
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今日をもち、天皇としての務めを終えることになりました。
ただ今、国民を代表して、安倍内閣総理大臣の述べられた言葉に、深く謝意を表します。
即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。
明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。
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たとえば、「受け入れてくれた」と言うよりも「受け入れ、支えてくれた」と言う方が、違和感が少なくなる――というような判断もあったんじゃないかと想像します。
「国民への深い信頼と敬愛……」という部分にしても、そんなに簡単に思いつくような表現じゃないです。国民に対する「信頼・敬愛」を「……をもって行い得たことは、幸せなことでした」と、自分自身の行為に対する修飾表現に落とし込んでいるわけで、実に手が込んでいますね。
ただ、ちょっと気になるのは「敬愛」という単語。国民に敬語を使うのはNGだが、敬愛を持つのはOK、という解釈なんでしょうか? (^^;;
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「国民に心から感謝」 天皇陛下の最後のお言葉全文
退位礼正殿の儀
2019/4/30 17:09
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44368970Q9A430C1000000/
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