選挙前で忙しい時だし、4年間で千件を処理しているのだから、たぶん私よりも緊急性の高い人々が大田区にはいる、はず。
しかもリストカットをすることで逆に事態が安定してしまっているので、なおさら誰にも助けて等とは言わなくなった昨今。
命の危険は無い、暮らし向きもそれなりに安定している、誰の経営も危機には瀕していない。
自分で切っては自分で消毒し、自分で切っては自分で消毒し、自分で切り自分で消毒する傷の回復は毎回いつもながらに順調で、今回もまたもや順調に瘡蓋も剥がれてきた。
病院には自分で行く、書類も自分で記入する、しかし福祉事務所は障害者手帳の取得にさえ至らない軽度な身体障害者の私には冷たくもないがヌクヌクとしていられるほどには暖かくもない、そして入院しなくてはならないと言う程には病状は重くもない。
いつまでも治らないのは、心の傷くらいなものだろうか…。
心に傷を受けてもその傷を腕に置き換えてしまうので、誰かが死ぬほど極端な真似にさえ走らない日々。
故に、緊急性の低さには定評があるので放置され気味の毎日。
年期の入ったそのリストカッターぶりに、誰も困っていず、誰も悲しんではいない。
誰もがこの状況に、慣れきってしまっているのだ。
そして世間は、硝子の10代を過ぎてナイロンザイルな神経をした40代には、多少なりとも分別があると知ってしまっているので多分、リストカットをしなくなった暁には、私は私ではない別の誰かに変わり果ててしまうだろう。
たけぽむ…ぽむ…の未来予想
「まぁた、たけぽむちゃんが手首切った!」
「いつものことじゃん!」
「手首切らないたけぽむなんて、たけぽむじゃないよねー」
「そうだよ、たけぽむはリストカッターだもんね!」
「リストカットしないたけぽむなんて、たけぽむじゃないよね!」
考えるだけで、激烈に草はえる。
ピエール瀧の重症度が、またもや私を人々から遠ざける。
都内の違法薬物使用者達の語る声に耳を傾けてしまった人々は、誰もが周知の通りに、『リストカットなんて30年も繰り返し続けても死なない』と理解されている。
ピエール瀧に嫉妬するほどには幼くもなく、それほど幼稚でもない私だった。
どうやら私はピエール瀧でもなくエグザイルでさえ無いので、それで余計に警察も放置する方向らしい。
私はどうやら、事件性に激しく乏しい存在であるようだ。
つまらないから皆いなくなっちゃうんだろうなぁ…。
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