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2019年02月25日23:42

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《敗北…》《ちー+! 102》

《敗北…》
毎月25日。
俺はこの日に休みを入れている。
25日は行き付けのパチ屋の月一イベントという事で、まあ、現在の法律上では『イベント』の発表がご法度という事でかつての大々的な宣伝は一切ないが、数年前に備わっていたイベントを引きずる形で知る人ぞ知る隠れイベントと化しているのがこの日なのだ。

どんなに負けてもこの日に回収可能となる確率も高く、事実、俺もずっと25日だけは一応は『勝ち』のラインに立てたものだ。少なくとも数十ヶ月は…。

しかし…、…しかし…!!!

今日は負けてしまった…。
完全に立ち上がり失敗で、座る台座る台全てスカ。手応えどころかなんでメダルを入れ続けるかに疑問を覚える、ここ最近に見る事の無かったアタリの引けなさに自分がビックリだった。

入店20分もしない内に10000円が消化。もうどうでもいいや気分で適当に座った台であたりを引くも、どうにも揉まれて増える感じがしない。
これは…、続けても止めても好機を取り逃がすパターンだ…。
自分でそんな予感が頭を過ればもう負け確定。
泣く泣く出たメダルを回収してマイナス3000円でストップしたが…、ほらね、最後の台、他の人が座った瞬間に出てるわけだし…。

まあいいや、いつもその人が捨てた台をハイエナしてる感じがするから、たまにはくれてやるわ。…という強がり。

あー、それにしても25日の負けは応えるなぁ…。


《ちー+! 102》

第一章 仲間たちとの行進曲 3-64

【拠点ネメス・ネメス城下町北区域】
『民宿 あじさい』

 民宿の一室に戻ったチータスとナルミは、3257(サニコナ)で購入した武器一式を部屋に並べていた。
 アキの選んだ、これからのメイン装備となる候補のクロスボウと、それに使用する矢が30本。それと矢筒。
 また、用途が多く、買って損は無いという事で短剣も買わされた。こちらは2本。嫌がるナルミの分も一緒に購入という訳だ。
 クロスボウはその複雑な構造から決して安価ではないが、そこは得意客という事でアキが強引に値引きを迫ってくれた。また、運び屋とレンタル戦闘獣の貸し出しを行っているタバチの知名度もこの辺では高いらしく、これと言って何を言う事も無かったタバチに気付いた店主が乗り気になったようだ。
 金額は全部で銀貨70枚となり、これが高いのか安いのかと尋ねられれば、チータスにもナルミにも反応し難い数字であるが、アキとタバチの感謝の言葉が弾んでいた所から察するに、きっと予想外な値落ちが実現したのだろう。
「ちぃ、もっと本腰入れないと…」
「うぅ…、わかってるよ! でも…こんのぉ〜!」
 アキの予想は当たり、チータスはやはりクロスボウの弦を所定位置に掛けるまでに随分と手間取る始末だった。
 チータスは思うように引く事の出来ない弦に対して言葉にならない怒りに似た何かを感じるが、その相手は物言わぬクロスボウ。まさか怒声を上げるわけにもいかず、顔を真っ赤にしつつも奮闘するのだが…。
「………ふぅ!! …ダメ! ナル、お願い!」
「えぇ〜!? 出来るわけないよぉ…!」
 急にして無茶な八つ当たりにも思える話の展開に、これまで笑顔のナルミの表情までも激変する。
「大体、なんであたしばっか戦闘事に期待されてんのよ!? 間違った勇者志願! ンぬぬぅ…! 単なる田舎…むすめ…なの…にぃ!!」
 既に乙女を捨てたかのようなチータスは、両足でボウガンの弓の部分を固定し、その上で弦を定位置まで引く事に成功する。
「…やった! ちぃ! 引っ掛かったよ!」
 ようやく弦を引っかける事に成功した瞬間を目の当たりにしたナルミが歓喜を上げるが、もちろんそれは自分に回ってくる事の無かった出番に対してであり、チータスの功績への声ではない。
「あ〜…疲れる。……つーかさ、戦っている場面でこんな所で苦戦してたら『倒して下さい』って言っているようなもんだと思わない?」
 我に返るまでもなく、クロスボウをアキから手渡された瞬間から予想し、それが見事なまでに的中した現実にチータスはぼやきの声を投げ掛ける。
「んーそうだね。敵さんはきっとやられたくない一心で突進してくるんだろうね」
 問題に直面しているこの瞬間を理解していないのか、ナルミはいつもの口調であっけらかんと答える。
 そんな返事にチータスは溜息を吐き、一緒に購入した短剣のうち1本をナルミに手渡した。
「…え? なにこれ?」
「何って…、武器でしょ。あんたのぶん」
「わたし、戦わないよ?」
「じゃあ殺されろ」
「えぇ〜っ!?」
「そうなりたくなきゃ、素振りのひとつでもして、せめて短剣に慣れなきゃ。…それとも、魔法で応戦する? ふぅふぅ…」
 整わない息で言い放つチータスの本心は、ナルミの参戦はもちろんだが、それ以上に魔力に期待する部分が大きい。
 そのため、形上では剣を渡して様子を見るふりをするが、自分以上に体力をはじめとした全ての運動能力が劣ってならないナルミの肉弾戦の戦力はと言えば、まず期待する方が間違っているだろう。何と言ってもチータス自身が自らの戦力の無さを理解した上での判断であり、ナルミは更にその下を行くのだ。
 なんとも情けない話ではあるが、そうなると未知数的存在となるナルミの魔力による攻撃が一番の有効性を秘めてており、少なくとも昔村で見た事がある何かしらの魔法は、それだけで敵を怯ませる事が出来そうな記憶があるのだ。
 もちろん、そのナルミから言わせれば、また『生物や植物への魔力行使はダメ』という結果に結び付けられる事も理解している。…が、ここまで来ると『はいソウデスカ』ともいかないもので、一度眠って目を覚ませば、今度は実戦の雰囲気が漂い始めていたのだ。

 3257(サニコナ)を出た際、アキの好意で明日もまた顔を合わせる事になったのは良いが、その目的が『初めてのクエスト実行』と銘打たれてしまったのだ。
 いや、銘打たれたというよりも、初めからそう言った流れだった事は重々承知のつもりだったのだが、まさか明日に『その日』が来るとは考えていなかったもので、何も言えないままに決定されてしまったのだ。
 幸いな事は言い出しっぺのアキが責任を持って簡単なクエストを選んでくれるとの事で、その辺のチョイスは黙っていても決定される事だろう。
…しかし、彼女のレベルから合わせられる『簡単なクエスト』という表現を思えば、それはそれで恐怖心が拭い切れない。
 そんなアキの申し出に返答に困っていると、心配されたのだろうか、タバチも一緒に行動してくれる事になったのは有難い。
 タバチと明日会うとすれば連続で3日目となり、店の方は大丈夫なのかと柄にもなく気になりはしたが、そうも言っていられない状況というのはチータスが最も理解しているのだ。
 なにせ、この機を逃せばクエスト依頼の選別も不安そのものだし、それ以前にアキやタバチといった、知り合った面々との行動が今後いつ実現するかも分からなくなってしまう。
 現状のネメス城下町での知り合いと呼べるメンバーが2人しか存在しない以上、あの場では何も言わず、ただただ明日の参加に感謝の意を示す事でいっぱいだった。

「魔法は使いません!」
 やはりナルミの返答は相変わらずだった。期待する方が間違った話ではあるが、それでも多少の期待はあるもので、そんな返答にチータスは「あっそ」と、素っ気なく反応すると、弦を定位置にセットしたクロスボウに矢を装着し、部屋の中のどこかに的は無いかと適当に周囲を見回す。
 だが、まだ住み始めて日が浅い部屋には私物が少なく、どれも最低限の生活用品という事もあって貴重な存在だ。狙えそうなものは無かった。
「あ、ちぃ、撃つの?」
 どうしてナルミの中のチータスは戦士型なのだろうか。チータスが部屋の中の的を探している所に気が付くと、目を輝かせて楽しげな声を上げる。
「的が無いの。それと、アキさんが言ってたけど、矢って『撃つ』んじゃなくて『射る』んだって」

「へぇ〜。ちぃはもう立派な勇者志願として歩き始めているんだね」
「んなわきゃねぇだろ。どれもこれもイヤイヤやってるんだよ! あ…」
 ビンッ! シュッ! ボスン!
 望んでもいないナルミの褒め言葉にすかさず反論するチータスだったが、振り向きざまに力が入ってしまい、トリガーを思わず引いてしまった。
「………」
「………」
 矢がどこかに飛んで行った事はわかる。…が、その行き先がすぐには分からなかった。
 壁、床、天井…。どこにもない。というか、射的場で実際に何回か的を狙ったが、その命中率はさて置き、どこに当たっても案外大きな音がしたものだが…。
「あ…! ちぃ、窓…」
 変化に気付いたのはナルミだった。
 言われるがままに窓を見やると、窓ガラスに見覚えの無い小さな穴が…。
 ―――と、ほぼ同時に…。
 カツ…、カラカラ…。
 その音が自分のものかどうかは定かではないが、外から小さな物音が聞こえた。
 そう、例えるならば、弓矢の矢だ。そんな、重さを感じさせない棒状の物を地面に落とせば、多分そんな音がするのだろうと思わせる音だった。
チー「あ〜あ…」
ナル「やっちゃった…」
 穴の空いたガラスの向こうを眺めて言う2人だが、とりあえず外の通行人に矢が当たらなかったらしい事だけは理解でき、それに関しては肩を撫で下ろした。


《あとがき》

来月は勝つぞー!(おーっ!)

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