「ジュリアン」

離婚調停中の夫婦そして子供達の親権を巡る争いから始まる(18歳の姉ジョセフィーヌは対象外となる)。冒頭の離婚調停中のシーンでの判事と夫アントワーヌと弁護士そして妻ミリアムと弁護士のシークエンスからもう映画「ジュリアン」に引き込まれていく･･･
夫の暴力を訴える妻。そんな事はしていないと言う夫。そしてジュリアンの訴え(もちろんこんな簡単な問答で描かれてませんがね)･･･判事側の視点なので見ている側はどちらが正しいか分からない。まさに羅生門スタイルである。一体誰が本当の事を言っているのか？！。

そして数日後、ジュリアンの親権は共同親権となる。
週一回の夫とのジュリアンの面会シーンのなんと緊迫感あることよ(； σ .̫ σ)。
アントワーヌのいつこの人は爆発してしまうんだろうか！？と思わせるような監督の演出にはもう脱帽させられます。
車中での父子二人きりのシークエンス何回かあるんですが車を加速させるシーンがまた怖いのよ。
本当になんでもないシーン、シーンの裏に巧みに秘められてるドメスティック・バイオレンスの影。

この映画劇伴がパーティーシーン以外全く無いのですがほんと耳をすまして聞いてしまう。あらゆる日常生活の音や人が出す音！それを完璧にコントロールしている監督の耳の良さもまた素晴らしい！。
のでずっと耳をすましてお聞きください。最後に鼓膜が破けますから！？なんて冗談ですが(´^∀^｀)。
それくらい”音”に気を使った演出。なのでこれは音響が整った映画館で観ると更には緊迫感がマシマシなりますね。

そしてだんだんと状況が分かって来ますがアントワーヌの両親との関係性やミリアムの家庭環境なのども上手く描かれているので面白い。と言うかやっぱりこれもまた「家族という名の地獄」なのかも知れない･･･
だって「本当に変わったんだ！」と言うアントワーヌのあの涙は嘘じゃないから･･･てか分かっててやっぱりこの人は変われないんだなとも考えさせられたけども･･･。

それと姉の最後の決断とかもまた･･･この状況から脱したいと思うよね･･･。ジュリアンくんもそうしたいだろうけど出来ない。あまつさえ母親を守ろうとしている･･･そんな姿がとても切なくて･･･。

終盤の姉の誕生日パーティー！。凄く良かったですね！あの水面下で”何か”が起こり始めどうやら不穏な空気が流れ始めてるらしい感じとか！ここのシークエンスは視点が色々と変わりとても面白い見せ方をするカメラワークがまたいい！(姉が舞台で歌っているそこから会場の人達を見てるアングルから人が出入りしてるのを見るとかほんとに上手い見せ方させてくれますわ)音楽がうるさくて台詞が全く聞こえ無い故の緊張感！そしてパーティー終了後の怒涛の展開ね！？
最初の”あの”音には驚きましたよ！声出してた人もいたしね！！だれがあんな急展開予想したってよ！！もうホーラー的だし！あそこはほんと怖かった！素晴らしいシークエンス･･･そしてあのほっとしてるんだけど感情が昂ってる感じとかバスタブで腰抜かしてる所とか‪( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )‬こっちもほっとして泣いたもんね･･･そして全て終わったんだ！エンドロールが無音の中流れていく！「ジュリアン」パーフェクト！エクセレント！！最高か！！だれがこんな衝撃のラストを予想しますやら！。
もうほんと最高のプロットに繊細な演出に音使いの上手さ！日常を描いてるのにこんなにもドラマティックになるなんて！監督凄かね！。
96分ですか！？とてもそんな尺とは思えないくらいの密度の濃さ！至福のひとときでした！。
この監督さん、前回撮ったショートムービーが今回の「ジュリアン」のプリクエル(前日譚)になってるそんなんですが(しかも同じキャスト！)この映画観たら観たくなりますね。この映画を観る前に観なくて良かった！きっとそう。

マイミクさんが「バハールの涙 」と「ジュリアン」今年のベストムービーこの2作で甲乙つけがたいとおしゃってましたがほんとそうです！。
両作品にいえることは素晴らしいプロットであると言うこと。
傑作でした！！。

個人的にクライマックスの出来事、私自身も同じような経験があり(もちろんあんな凄ましさではないけど)それを久しぶりに思い出してしまい何とも私の心に刺さってしまう映画になってしまった･･･
そして冒頭、親権の判決が出る間に新しい家を探して、これから新しい生活が始まるんだ！と無邪気に笑ってるジュリアンくんのあの笑顔が最後になるなんて思いもしなかった･･･
なんとも切ないジュリアンくん。
しかし、終演後明かりが付いてからの劇場の雰囲気たら！ポカーンて感じで一体何を見させられたんだ！？て感じよかったな〜(´^∀^｀)
それと呉美保監督の2度目観たらほんとに救済すべきは父親だったのだ。という言葉が忘れられない･･･。

でも、お姉ちゃんの行く末もかなり心配だな･･･あの彼氏さんだもんな･･･結局はお母さんと同じ道を辿ってる感じが否めないかも･･･。
とね観賞後色々と考えてしまう映画はやっぱり良い作品の証拠。
とある映画監督の言葉から「上映時間より観賞後に映画の話題で上映時間より話せさせたらその映画の勝ち！」だと！本当にそう思う(﹡ˆ﹀ˆ﹡)♡