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2019年02月06日23:58

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魔法少女の系譜、その94

 今回の日記は、断続的に連載している『魔法少女の系譜』シリーズの一つです。前回までのシリーズを読んでいないと、話が通じません。

 前回までのシリーズを読んでいない方や、読んだけれど忘れてしまった方は、以下のシリーズ目録から、先にお読み下さい。

魔法少女の系譜、シリーズ目録その1(2014年01月22日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1920320548
魔法少女の系譜、シリーズ目録その2(2018年12月24日)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1969682470&owner_id=25849368

 今回も、前回に続き、『タイムボカン』を取り上げます。

 『タイムボカン』は、一般的には、「魔法(少女)もの」とは、見なされていません。それは、主人公が、女性だけではなく、少年と少女の二人組であることから、そう認識されるのでしょう。

 けれども、冷静に考えると、主人公に少年が含まれることを除けば、『タイムボカン』は、「魔法(少女)もの」の条件を満たしています。

・少女が主人公(の一人)であること。
・少女が、タイムマシンという「魔法道具」を使って、活躍すること。

 ね? 魔法少女ものとして見ても、おかしくありませんよね?

 私は、何が何でも、『タイムボカン』が魔法少女ものだと主張したいわけではありません。魔法少女ものとして見ることもできる、という立場です。
 優れた作品は、多様な見方ができるという一例です。

 『タイムボカン』は、既存のアニメのジャンルに当てはめにくい作品です。
 魔法(少女)ものと見ることもできますが、既存の― 一九七〇年代までの―魔法少女ものの型とは、違いますね。主人公たちは、ロボットに乗って戦うわけでもないので、ロボットものでもありません(作中に、ロボットは登場しますが、小さなロボットで、マスコット扱いです)。男の子だけが活躍するわけではないので、ヒーローものとも、言いがたいです。
 あえて、既存の(一九七〇年代の)ジャンルで言えば、冒険ものでしょうか。

 二〇一九年現在では、『タイムボカン』は、『タイムボカン』シリーズという、独自のジャンルでくくられています。それほど、一九七〇年代としては、斬新で、独自性の高い作品でした。二〇一〇年代の現在でも、そうです。

 まず、主人公が、男女二人組という点が、新しいですね。
 二〇一八年の十二月に、魔法少女アニメ『HUGっと!プリキュア』(通称、はぐプリ)で、「男の子プリキュアが登場した」ことが、話題になりました。「魔法少女だけでなく、魔法少年もありだ!」と、高らかに宣言されたことが、感動を呼んだようです。

 これ、一九七〇年代に、すでに、『タイムボカン』で、やられています。
 だって、『タイムボカン』の主人公は、男女二人組ですからね。二人の主人公、丹平と淳子との関係は、ほぼ対等です。二人とも同じようにタイムマシンに乗って、さまざまな時代へ行き、苦楽を共にします。
 『はぐプリ』に見られるように、男女対等な魔法ものは、二〇一〇年代でさえ、珍しいです。それを、一九七〇年代にやっていたわけですから、斬新ですよね。

 ただ、『タイムボカン』では、丹平と淳子との関係が、本当にまったく対等ではありません。ほんの少しの差ですが、丹平のほうが上位です。
 それは、丹平のほうが年上で、しかも、タイムマシンを作った博士の助手という立場から来るものです。

 十三歳(丹平)と十歳(淳子)とを比べれば、十三歳のほうがしっかりしているのが、当然でしょう。博士の助手ゆえに、タイムマシンの構造や操作についても、丹平のほうが熟知しています。
 丹平は、淳子を尊重して、彼女を対等に扱いますが、「丹平のほうが、淳子の面倒を見ている」感は、ぬぐえません。

 このあたり、『タイムボカン』には、一九七〇年代に流行っていた、ロボットものの影響が見られます。
 丹平と淳子との関係を、もっと丹平上位にして、『タイムボカン』を、ただのタイムマシンでなく、ロボットにしたら、まんま、ロボットものですよね。

 逆の言い方をすれば、ロボットもののヒロインを、もっと強く、ヒーローと対等にして、ヒーローと一緒に乗るロボットを、タイムマシンに変えれば、『タイムボカン』です。

 そして、『タイムボカン』には、悪役が登場します。最高級の宝石「ダイナモンド」を狙って、マージョ、グロッキー、ワルサーの三人組が、主人公二人をつけ回します。
 ロボットものやヒーローものに不可欠な「悪役」が、ちゃんといるわけです。当時のロボットものから、ヒントを得たのでしょうね。

 ただし、『タイムボカン』に悪役はいても、戦闘シーンは、ほとんどありません。丹平と淳子は、戦わないんですね。タイムマシンで、逃げ回るばかりです。
 丹平と淳子は、魔法少年・魔法少女ではあっても、戦闘少年・戦闘少女ではありません。

 先述のとおり、丹平と淳子との間には、微妙な上下関係があります。とはいえ、年上の少年の丹平が、年下少女の淳子を、子供扱いせず、対等に接するのは、この時代のアニメには、極めて珍しいことでした。
 丹平は、良い意味で、とってもフェミニストです。二十一世紀の現代に持ってきても、通用するヒーロー像ですね。
 年上の少年に対しても、臆せずにものを言う淳子のほうも、現代的なヒロインと言えます。

 悪玉三人組の構成も、一九七〇年代には、斬新でした。女性のほうが立場が上で、二人の男性を従える形は、それまでの日本のアニメには、ほとんどなかったと思います。

 主人公を少年と少女にし、敵役にも男性と女性とを揃えたためか、『タイムボカン』は、男女どちらの視聴者にも、大受けしました。
 大受けした原因は、登場人物に男女をバランスよく揃えたことと、基本的に、コメディだったからでしょう。老若男女関係なく、無邪気に笑える話が多いんですよ。
 もちろん、全六十一話もあるので、中には、泣ける話や、しんみりする話もあります。それでも、最後には、マージョたち三人組がやられて、とほほ、となるところで、笑えますわーい(嬉しい顔)

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『タイムボカン』を取り上げる予定です。

2019年04月04日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

魔法少女の系譜、その95(2019年04月03日)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1970996718&owner_id=25849368

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