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2019年02月04日22:28

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暇つぶし読み物あじさいの寺③

貴方の手紙を頂き…面談したいと存じ…今はアジサイが見頃です。アジサイを愛でるがてら恐縮ではございますが、我が住む寺に来訪して頂けないでしょうか…6月X日私は寺におりますれば…良ければ我が寺に連絡を頂き、来訪の旨をお伝え下さい。

慈雲

と柔らかな文書で書いてあった。手紙が来るとも思ってなかったし、こんな腰の低い文章にも想像もしていなかった。さらにまさか…面談をしてくれるなんて…こんな事があるのか…。僕は正直のところ驚いてしまった。
たが僕はすぐに来訪の旨を寺務所に連絡をし、6月X日に慈雲法主のいる鎌倉の寺へ訪れる事にした。

6月X日
僕は鎌倉に来た。鎌倉に来たのは小学生の旅行以来だ。その日の鎌倉は梅雨のせいもあり小雨が降っていた。その小雨はとても優しく、寺や山々に降り注いでいる。とても美しく感じられた。

「このお寺か…。」鎌倉らしく山の上に建っているようだ。雨で光っている石段を登っていく。石段の左右には様々な色をしたアジサイが咲いていて石段を登るのは少し辛かったが綺麗なアジサイが少し気持ちを楽にしてくれた。

あともう少し…を何回か思いつつ急勾配の石段を登っていくと、石段の終わりが見えた。やっとこのキツイ石段が終わる…と思い石段の終わりのところを見ると、2人の人影が見える。左に小さなお爺さん。右に物凄く背の高い身体のがっしりとした若い男の人だった。
その若い男が傘をさして老人を雨に濡れないようにしている。小さなお爺さんは恐らく慈雲法主だろう。わざわざ出迎えてくれたのであろうか…

「すいません。本日訪問させて頂きます、O Xです。本日はわざわざお時間を頂きありがとうございます。またわざわざ出迎えて頂きありがとうございます。」僕はかなり恐縮して緊張しつつも挨拶をした。

「よう来られました。慈雲です。この隣の大男は巨雲（こうん）です。まぁ秘書みたいなものですわ。」
巨雲さんは軽く微笑みつつ会釈をしてくれた。背が高くまるでプロレスラーみたいな身体をしていたが、目は優しそうな感じを受け大人しい雄牛を連想させた。
慈雲法主はやはり黒目がやや大きいのだろうか。しかしその黒目を見ているとこちらの全てを見透かされているような感じをうけた。本の表紙には無かった長い白鬚がアゴ、口髭にあり、まるで少林寺拳法の映画の管長とか仙人のようだった。
あと、僕が…言うのも失礼なのだが…慈雲法主は歯が少ししかないのだろうか。常に口を「にゃむにゃむ」と動かしていてなんか可愛らしかった。
慈雲法主も管長なので厳かな法衣など着て威厳を保つのかな…と思っていたけれども意外に2人は作務衣の様な出で立ちで軽装だった。
「まぁ私の住む庵へどうぞ…。」
僕は2人の後について歩いて行った。

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