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2019年01月27日20:48

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《ポイントちゃん。その1》《ちー+! 082》

《ポイントちゃん。その1》

前の話の続き? ポイントちゃん。思い出したついでに。

ひと昔のポイントと言えば、その制度はあっても用途が不透明で、悪い場合にはポイントシステムを勧める会社関係者がその用途を知らないケースもあったのだが、これがまた珍しい話ではない時代でもあった。

印象的なのはとある銀行。
不況の煽りを受けて多くの銀行が合併・倒産した時期があったが、そうはなるまいと躍起になっていた時期でもあった。
そんな中に登場したのが、とある銀行でのポイントシステムであり、その紹介をする為に当時勤めていた会社に出向かれた事があった。

恐らくは従業員からメンバー加入者が生まれた際には会社に対して何かしらの利益が発生すると見えて、なんでも断る傾向にある社長が説明会を承諾。
でも、社長自身は眠くて面倒な説明を受けたくないので、当時の事実上、次の代表の位置に居た俺が目下の従業員を全員掻き集め、『説明会』とやらに。業務の一環として認められたので(認めさせた)、これを承諾。

この時の銀行説明員は3名。
僅か50人を超える程度の会社に赴く様は、それだけで窮地を察するものがある。

社長からは俺に直々のお達しが存在し、『何も言わずにただ聴け』との事。
疑問や不満が生じれば客だろうと業者だろうと食って掛かっていた年頃でもあったため、その辺に不安があったのだろう。
だが、そんな命令を受けるとなると、絶対に裏があるという疑いの気持ちが芽生えるもので、そんな『裏探し』の意味で俺は説明会を楽しんでいた。

『裏』はすぐに見抜けた。説明の二言目には『ポイント』を連呼する銀行員。
いま入れば100ポイントサービスだの、家族で複数入ればそれぞれに100ポイント、この説明を聞いた人には別に300ポイント。
ポイントを利用したサービスも現段階で充実しており、その内容も今後拡大するとかなんとか。

まあ、そんないい話を聞かされれば、俺が黙っている訳もなく、恐らくはみんなが気にした『尋ねたいけど聞き出す雰囲気じゃない』という状況を打破すべく、ついつい質問に走ってしまう俺。社長の命令? 知らん、そんなモン。

銀行員が区切りを見て質問コーナーに入る。
「何かご質問等はございますでしょうか?」
やはりというか、誰も手を挙げない。集団の場というは何故かそれだけで率先して聞く事が難しくなるらしい。
それにしても、フン、墓穴を掘りやがって。そのポイントとやらが役立たずであって、意味が無い事は素手にお見通しだ! とか、勝手に舞い上がる俺。
「あの〜(そろそろと手を上げる俺)」
「はい、そこの方、なんでしょうか?」

てぃ「そのポイントというのは、どういったタイミングで蓄積されるのですか?」
銀行「良い質問です! まずはご本人様の入会時をはじめに、お知り合い様、ご関係様紹介時、入出金ご利用時、入出金の一定額毎と、様々なタイミングでポイントが付きます」
てぃ「では、聞く感じだとそのポイントの加算度合いはそこそこ早そうですね」
銀行「はい、その通りです。実際には入会して頂かないと実感出来ないでしょうが、2000や3000ポイント到達は案外早いものですよ」
てぃ「では、その2000ポイントを実際に使う際、その代表的な用途は何ですか? 金額への変換ですか? 何か品物との交換ですか? ポイントの制度やその加算度合いは分かりましたので、実際にポイントを使用する事でメンバーのそれぞれにどのようなメリットが生まれるのでしょうか?」
銀行「…………はい?」
てぃ「いや、ですから、ポイントが増えるという事は、何らかの利点を得る事で消費するわけですよね? 何を得る事でポイントが消費されるのかを知りたいのです。…例えばギフトセットとか、何らかの無料チケットとか…。銀行となれば扱うものがお金でしょうから、何かを生産している訳でもなく、かといって現金との交換とも参らないでしょう。となれば、私個人的には外部の商品等を取り寄せ、それらを景品として扱い、設定するポイントごとに振り分けられているというのが勝手な考えなのですが、…違うのですか?」
銀行「…………まだ始まって間が無い制度ですので、実は我々も深く理解していないのです。…すいません…」
てぃ「では、この際、あなた方が理解していないポイントを宣伝する事は業務として仕方なく勧めるものとして受け止めます。…で、あなた方はそれぞれ、銀行員としてそのメンバーには初期から入っていると思うのですが、実際にどのくらいのポイントが蓄積されているのですか?」
銀行「………」
てぃ「…? ありますよね?」
銀行「はい、あるにはあるのですが、私個人的にはポイントを気にしないタチで、実際に自分がどのくらいのポイントを所持しているか興味ないのですよ…」
てぃ「ポイントの良さを説明するにしては説得力に欠けてますね。実体感しなければいけない側にその気持ちが無いというのは、どうでもいいポイント制度という風にも聞こえますが。 あなたも興味ないんですか? …あなたもですか?」
銀行員残り2人「はい、すいません…」
てぃ「では、さっきの話からすれば、少なくとも2000ポイントはある筈でしょう。ポイントを受ける側としては、その2000ポイントの価値が知りたいですね。参考になるパンフレットはありますか? 一般向けのもので構わないんですけど…」
銀行「…………」
てぃ「…えっ? 無いの??」
銀行「…すいません…」
てぃ「いや、別に社内規則とかに関する資料とかではなくて、…ほら、よくあるじゃないですか、銀行でもお店でも、何かを記入する為の台の上とか、レジの隅っことか、目に付く所とかに『ご自由に』って書いてあるヤツ。ああいったパンフレットですよ?」
銀行「…すいません…」
てぃ「…もしかして忘れて来てしまったのですか? …なら、待ちますんで誰かが取りに戻ればいいだけの話では? 時間に余裕が無いのでしたら、私が同行して受け取りますよ?」
銀行「…実はパンフレット等の製作はまだ先の事でして…」
てぃ「…整っていない準備の説明をしていたという訳ですか? 例えばこの場で私がメンバーに加入し、早速ポイントを利用しようと考えていた場合、あなた方はどういった内容を以てポイントを消費させるつもりだったのですか?」
銀行「…………」

以後ダンマリ。

奥様という立場に身を置くパートさんの多くは『ポイント』という言葉に耳を傾けていたが、俺との対話の中で次第にその興味が薄れていった模様。

今や様々な分野の企業は独自のポイント制度で消費者の利便を図り、それが当たり前となって浸透しているが、少し前は『増えるだけの実態の無いポイント』というのがあり触れていたものだ。
この説明会はまさにその一つというだけの話で、当時としては別段珍しくもない話のひとつ。相手が銀行なので大っぴらな詐欺行為に及ぶ事は無いだろうが、それにしても何も決められていない内容を強引に売り込む行為はその時点で詐欺だと思った。

『説明会』はやがて終了。すごすごと帰る3人のうち、1人が俺に言った。
「もっと勉強させていただきます…」
まあ、ココに来た3人の問題というよりも、銀行そのものの問題だな。
そう思ったので、俺も返事を。
「態勢がきちんと整っていれば、みんなに理解してもらえる事でしょう。また来てください」

たくさんのパートさんから感謝されたっけ。
『会社でやる説明会だから、入らなくちゃいけないのかなって思ってた』
『ポイントって言葉、女は弱いんだよね〜』
って。

まあ、普通はそう思うわな。だから俺が突っ込んだんだけど。
どっちにしても、メンバーになるかどうかは本人が決める事で俺が口出しする事は一切無いが、加入するなら加入した後のメリットをはっきり知りたかっただけの話だ。
銀行員が納得できる説明を用意していたなら加入メンバーも出現しただろうが、今回はそうではなかったという理由なだけ。
可愛い従業員に無駄な時間の浪費はさせませんよっと(どういう理由であっても俺は加入する気が無い)。

ちなみに後日、社長にメチャメチャ怒られた。なんでも社長の友人が3人のうち1人に含まれていたらしい。
だから俺も言い返した。
『あんなマヌケを友人に持つな! 連れの2人までマヌケじゃないか!』
って。

言ってみればあの会社の日常。ついでに言えば、社長が断れなかった友人の頼みであって、自分の性格上、きっとパートさんに強要まがいな発言をしてしまうため、俺に回した内容とも思われる。
そんで俺の性格も知っており、きっと銀行側の用意した不透明な話も耳にしていたため、全てを個々の判断に持ち込む意味で俺に『何も言うな』と告げたものとかなんとか。
なんで知ってるかって?
数日後、社長と一緒に呑んでいる最中に本人が言ったからさ(ケンカは多かったが仲が悪いわけではない)。


《ちー+! 082》

第一章 仲間たちとの行進曲 3-44

【拠点ネメス・ネメス城下町北区域】
『ギルド ネメスのあくび』

 チータスによるオレンジジュースの『おかわりラッシュ』が一段落し、ある程度落ち着いて店内を見渡せるようになった頃、ナルミが本題を切り出した。
「ところで、…ボス…さん? アキさんの事なんですが…」
「あーそうだ、忘れてた。ジュースがおいし過ぎた」
「褒めるタイミングがおかしいぞ、おまえさんは。…で、アキだな。…残念ながら今日は来なかったな。アイツは日中に来る事がほとんどだから、夜には期待しない方がいいな」
 期待に応えられなかった事に対してか、それとも予想を外した事に対してか、ボーセスは小さく溜息を吐いて言う。
「ボスさんが悪いわけではありませんよ、気になさらないで下さい。それに、予想には明日もありましたよね?」
 午前中の会話を思い出してナルミがフォローする。もちろん、ボーセスが心底から残念がっている訳でもない事はすぐに見て取れたため、慰めるような言い方ではない。
 そんなナルミの言葉を聞いたボーセスは、最後のオレンジジュースをグラス3つに均等に注ぎ終えると、空になったピッチャーをシンクに沈め、アキの件とは異なる本題に入る事にした。
「アキ・サランの事に関してはアキ本人の行動任せだ。それより、『勇者志願チータス・レジエン』…名前からして、おまえさんの事だな? 試練の年期間内の『勇者になるための目標』はあるのかい?」
「ないよ」
 悪気も無くあっさりと答えるその声に、さすがにボーセスは言葉を失った。
 個々の性格は様々だが、どちらかと言えば悪印象に偏り易い冒険者が集うギルド経営という事もあり、それなりに個性を見てきたボーセスではあるが、チータスのような無邪気そのものの性格の客人というのは前例が無い。
「うーん」と思わず唸ったボーセスだが、気を取り直して先を進める。
「城の関係者はもちろんだが、こういった情報の行き交う場所でも今年の『勇者志願』の話は何年か前から持ち上がってた事でな、まさか俺ん所に顔を出すとは思ってなかったが、これも何かの縁だ。目標が無いのは構わんが、だからと言ってそのまま何もしないままの状態を城が黙って見ているとは思えないからな。ちょっとくらい助言してやる」
「どういう事ですか?」
 言葉を区切ったボーセスにナルミが先を進める。

 ボーセスの話によれば、城側は久々の勇者志願の出現に対しての期待感が高く、それがかつての英雄の末裔が名乗り出たのであれば尚更の事だという。
 ネメス王国は周辺の国々から比較すれば平和そのものだが、それに比例するように突出した著名人に乏しいのが悩みどころであり、同時に目立つ地位に身を置きたがる人物の存在も乏しい。
 毎年の試練に顔を合わせる人物の目標も、その多くは『跡継ぎ』に集中しているが、これは将来の目標に対する『憧れ』に出逢っていない事が1つの理由とされていた。
 周辺の国々では毎年のように誕生する『何か』が存在するが、ネメスにはそれがない。
 長くの平和は好ましいが、それは表面上の見える範囲の事に過ぎず、実際にはそうではない。小さな問題は結果的に山を構築しており、その全てを限られた拠点から足を運ぶ兵力で補うには限界が浅過ぎた。
 幸い、ネメス王国に息づく冒険者の多くは秩序を重んじているように思え、ゼロとは表現出来なくとも問題は少ない。それどころか『自由戦士』と表現される他国には存在しない冒険者のワンランク上が存在しており、城の定める重大な問題を率先して解消に取り組む有難い存在であると同時に、その総合戦力も相当なものだが、問題は代表が存在しない所だった。
 会話やルールに沿って全ての流れが維持される事はこの上なく素晴らしくとも、それを取りまとめる代表が存在しないという事は、いざという時に誰を頼って良いのかが分からず、また、どんな時に予告無く解散の事態に陥ってもおかしくないという事にもなる。
 解散であるならまだいい。例えば何らかの問題で反旗を翻された場合、城側がその存在を頼っていた以上、そこから攻撃を受ける事態となれば、受けるダメージはあらゆる意味合いで甚大だろう。

「代表が存在しないとそうなるんですか?」
 話の途中でナルミが口を挟む。
 ボーセスは一呼吸を置き、続けた。
「そうなる訳じゃないが、例えば間違った情報が信じ込まれた場合、それを訂正出来る人物が存在しないのが問題なんだ。全員で間違った情報を共有する中で真実を知る人物が訂正したとしても、その場では単なる反論に取られてしまう。なんたってみんな揃って間違っているんだからな。どっちが正解かなんて所詮は多数決で決めるしかない」
「…で、どうしてそんな場にあたし…てか、『勇者志願』が必要なわけ?」
 どうにか理解に努めるチータスの頭の中身は既にごちゃごちゃだ。
「まあ、ぶっちゃけた話をすれば『勇者』が必要と言う訳じゃない。『有名な人物の出現』が必要なんだよ」
「?」
「まあ、分からんだろうな。…1年後、めでたくおまえさんが勇者として認められれば、城は大々的な勇者出現の宣伝を行うだろう」
「『せんでん』?」
 これまたチータスにとっては初の遭遇となる言葉の出現だ。
「…ナルミ、おまえさんは理解が早そうだ。チータスの理解出来ない言葉はあんたが後で説明してやってくれ。話が進まん。…手っ取り早く説明させてもらうぞ。なんたって1日2000〜3000文字を目安にした物語だからな」
「この時点で2100文字を越えてますからね」
「ねえ、なんか分からないけど、あたしの事バカにしてない?」
「してないしてない。…進めるからな」

 ボーセスの話を要約すると、こうだ。
 試練の年終了直後にチータスは勇者として大々的に宣伝される事になるが、その宣伝方法はネメス城前の広場から東西南北のメイン通りを通過するパレードであり、目的はチータス自身の宣伝と同時に、可能な限り多くの民間人の目に入れる事である。
 勇者が有名な存在である事は今さら説明の必要も無いが、有名な人物への『憧れ』をこれからの若い世代に抱いてもらう事により、前向きな努力を促す事こそが今回の『勇者志願チータス』に課せられた裏の目標であった。
 こ目標が達成されれば、今後『勇者志願』とまではいかなくとも自らを高みに持ち上げるべく、目立った職位に就こうとする人物が出始めることが予想でき、その中から信頼に足る人物を城関連とは異なる『それぞれの中央』に立たせ、城とその場を繋ぐ情報源とする事が出来る。
つまりは城が気に掛ける『それぞれの中央の代表』の誕生となる手筈だ。
 そういった状態の確立には短くない時間が必要となるが、きっかけが無ければ計画も始まらない。今回の『勇者志願チータス』とは、そういった一連の計画におけるスターター的存在だったのだ。

「ボス…さん!」
 話の途中、ナルミが割り込む。
「なんだ?」
「文字数、2600超えました! 今回だけでは収まりきれませんよ!」
「そ、そうか。…まぁしゃーない。続きはまた今度で」


《あとがき》

今回の話の銀行名が思い出せないのはなんとも悲しいが、当時聞いた時にも印象には無い銀行だった事は覚えている。
まあ、小さな地方銀行なんだろう。そんな程度だ。

社長の友人とやらが3人のうち誰かなんて事には興味はないが、特定はしたかったなぁ。
日記中ではカットしたが、会話の後半にはけっこう刺す言葉が含まれていたため、一番言葉を交わす事になった相手ではなかった事を密かに願っていたものだ。
まあ、結果的に友人本人だろうがそうでなかろうが、極論すれば俺が気にする事ではないのだが。


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