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2019年01月23日05:28

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評判の悪いしその3

 4 姦淫の有無について
 (1) Aは,被告人に無理矢理姦淫されたとし,当初の警察での取調べにおいては,挿入されていた時間は約10分間であると供述し,その後,検察官の取調べにおいては,10分間が長すぎると感じたためか,三,四分間と供述を変えている。しかし,この供述以外には,このような姦淫を裏付ける証拠はなく,通常あってもよい証拠もない。すなわち,本件当日深夜に採取されたAの膣液からは姦淫の客観的証拠になり得る人精液の混在は認められず,無理矢理姦淫されたにしては膣に傷も認められていない。もちろん,本件は,射精は膣外でされたのであり,人精液の混在が認められないこと等が姦淫のなかったことを直接裏付けるものではないが,このような姦淫の裏付けとなるはずの客観的な証拠が全く存在していない以上,それでも姦淫を認めるためには,信用性を有する他の十分な証拠の存在が強く要請されるところである。
 (2) それどころか,次のような事実も指摘できる。Aの供述によれば,20cm余りの身長差のある被告人に,立ったまま右脚を被告人の左手で持ち上げられたまま姦淫されたということになるが,これは,誠に不安定でわずかな抵抗をしさえすれば挿入を阻止できる体勢であり,このような体勢で無理矢理姦淫することは,相当に困難である(なお,Aの供述によればその間,被告人の右手は,Aの口を塞いだり胸を触っていたというのであり,Aの体を両手で押さえ付けていたわけではなく,被告人は極めて不安定な体勢で押さえ続けたことになる。)。
 (3) 更に重要な事実としては,Aは,パンティストッキングを無理矢理脱がされて破れたので,その後コンビニエンスストアのゴミ箱に捨てたという供述をし(第1審でも,Aは,間違いなくそこに捨てましたと供述している。),そのゴミ箱も特定している。これは,強姦の決め手になり得るもので,極めて重要な点であるが,破れたパンティストッキングは,直後の捜査によっても発見されていない(なお,これを初動捜査のミスがあった可能性があるなどとして重視しないことは,ミスの不利益を被告人に負わせることになり,許されないところであろう。)。
 (4) さらに,Aは,捜査段階では,その前にコンビニエンスストアで新たにパンティストッキングのみを買ったと供述しているが,起訴後で事件から2年近くなってからコンビニエンスストアに対する照会がされ,コンビニエンスストアのレジの販売記録を取り寄せた結果,Aの供述する時間に,サイズの合うパンティストッキングのみが購入された事実は見当たらず,サイズの合うパンティストッキングの購入は,ペットボトルと一緒に購入された記録があるのみであった。そうすると,今度は,第1審では,Aは,何かを一緒に購入したかもしれないとして,少しトーンダウンした証言をし,さらに,原審では,パンティストッキングのみでなく,「ペットボトルの飲物も一緒に購入したかも知れない」,「飲物と一緒に買った記憶がある」と,レジの記録に沿う供述に改めており,客観的な事実に合わない点が出てくると微妙に供述を変遷させている。いずれにしろ,破れたパンティストッキングを捨てたとするAの供述は客観的な事実にそぐわず,その事実の存在自体が極めて疑わしいところである。
 (5) 以上のように,姦淫の裏付けとなる客観的で決定的な証拠はなく,姦淫行為に関する一連のAの供述は,その内容からして容易には信用し難く,不自然な変遷も見られ,原審がこれを信用できるとしたことは,その点からも経験則上疑義があり,これを基に姦淫の事実を認めたことは,自由心証主義の枠を超えるものである。
 5 Aが勤務先のキャバレークラブに戻ってきた時の様子について
 Aの供述のほか,従業員や経営者の証言によれば,Aは,事件後勤務先のキャバレークラブに戻り,震えて泣いていた様子であったことが認められる。
 Aの泣いていた理由を従業員から問われ,Aは,「やられた」と答えたと供述している(検察官による取調べの際は「強姦された」という供述であるが,第1審では,どういう言葉で言ったかと繰り返し聞かれ,「やられたとか,最初,そういったようなことを多分言ったと思います。」と供述している。なお,「やられた」という表現は,強姦された場合にも使われるであろうが,当時の状況からして,強姦されたということだけでなく,だまされた,嫌なことをさせられた,等を表現する場合にも使われるものである。)が,これだけで,この場のAの態度,応答が強姦の被害を表すものと断定することはできない。すなわち,Aのこの時の様子は,Aが精神的に辛く緊張した場面を体験したことをうかがわせるが,被告人の弁解を前提にすれば,Aは,合意の上とはいえ,嫌々手淫を頼まれ,その際,警備員がすぐ後ろを通り掛かった際,手淫を隠すため交際中の男女の振りをすることに協力させられ,その直後,右掌だけでなく,バッグやコートの右袖口等にまで精液を掛けられ,更には,3万円が挟まれているはずのチラシをポケットに入れられたが,その後お金が入っていないことが分かった等,予期せぬ悔しい出来事を次々と体験し,ショックを受けたのであるから,Aの上記の様子は,そのためであることも推察され得るところであり,少なくともその疑いをぬぐい去ることはできず,これを強姦の被害の現れと決め付けることはできない。
 (1) 原判決は,被告人の供述は第1審で不自然であると指摘された点についてその後変遷しており,しかも,修正した理由について合理的な説明がうかがわれず,その信憑性に強い疑念を抱かざるを得ないとしている。この点で問題になるのは次の3点である。
 まず,捜査段階においては,千葉へ来たのは風俗店に行くため自宅から来たと述べているが,その後,JR千葉駅構内で納品の仕事を終えた後に京成電鉄千葉中央駅に来たと供述を変えている。これについては,家族に知られたくないという思いや,仕事の受注先に対し,配送先の駐車場にトラックを駐車したまま遊びに出掛けたことが知られると困るので当初は嘘をついた等と弁解している。
 また,被告人が射精した時期が,警備員が通り過ぎる前か後かについて,当初は前と供述していたのは,警備員が近くに来たからといって手淫を合意しながら出さずに帰るつもりだったのか等と取調警察官から言われたため虚偽の事実を述べたに過ぎないと弁解している。
 さらに,被告人が本件ビルから立ち去る際に,階段のところに現金を置いて帰ったと述べていたのは,取調警察官から,現金を支払わないで立ち去ったことについて,詐欺師やペテン師などとなじられたので虚偽の事実を述べたと弁解している。
 (2) このように,被告人は,捜査段階では捜査官から非難や疑問をぶつけられるとそれに対応して供述を変え,第1審で不自然であると指摘されると,相応に供述を変えるなどしており,その意味で,その供述態度は,姑息で,場当たり的であり,真摯なものとは到底言い難いところである。
 しかしながら,これらの弁解は,犯罪の成立に直接関係するものでなかったり,その変遷も,例えば手淫の対価として現金を渡したかどうか等の経緯についてのもので,現金の支払を対価として手淫してもらったという弁解の骨格を変更するものではなく,犯罪の成立を基礎付ける事実そのものについて否認に転じたというものではない。しかも,変更後の内容は,いずれも客観的な事実ないし当時の状況と矛盾するものではなく,むしろ,お金を払って手淫してもらうことを頼んで,膣外に射精し,その後ごまかして金を払わないで立ち去ったという被告人の弁解の骨格となる部分とよく整合するものであって,また,供述を変えた理由もそれなりの説明になっており,供述が変わっていることのみを理由に,むげにその信用性を否定することはできないというべきである。
 (3) 原判決は,Aの供述の信用性については,その証言態度等は「極めて真摯かつ誠実なものであり」とし,その内容についても,犯行状況から見て合理的なものである点を逐一説示している。その一方で,被告人の供述については,多くの問題点を指摘し,不自然である旨を繰り返している。例えば,「被告人の射精した精液が本件女性の着用していたコートの右手袖口部分に付着しているが,仮に被告人の弁解どおり,同意に基づき本件女性が手淫行為に応じたのであれば,このように着衣に掛かることのないようにするはずである。・・・コートの右袖部分に精液が付着している事実は,それだけをみても,同女の意思に反する出来事と考えられ,・・・本件女性の被害状況に関する上記証言と平仄が合うものといえる。」と説示している(原判決9頁)。
 確かに,Aの供述を前提にすれば,このような判断・説示もあり得るところであろう。しかしながら,被告人の弁解によれば,被告人はAに気付かれずに3万円を抜いたチラシだけをAのコートのポケットに押し込んでおり,立ち去る際には,Aがポケットに手を入れて確認することによりそのことが発覚するのをおそれて,そのような確認行為をすぐにはさせないために,あえて,右掌に精液を掛けたのであり,コートの右袖口等にも精液が掛かるように射精したとしても同様にAの気をそちらに向かわせようとしたものといえるのであって,このような被告人の弁解の内容を十分吟味すれば,「着衣に掛かることはない」と断定すべきではない。むしろ,「あえて着衣に掛かるようにして,ポケットの中身をすぐに調べないようにした」という趣旨の弁解であるから,着衣に掛かる(ないし,掛ける)ことは当然であるといえるのである。
 さらに,原判決は,被告人の本件女性と出会った際の両名のやり取りを詳細に速記録1頁余りにわたりよどみなく述べていることを指摘し,このような供述内容や態度は,創作であることを疑わせるに足りるほど,作為的で不自然なものといわざるを得ないとしている(原判決23,24頁)。同様の行為だとする弁解も,むげに排斥することはできないところである。
しかし,被告人が供述した本件での両名の出会いの際のやり取りは,後記の竹ノ塚駅付近で他の女性に報酬を条件に手淫を依頼した事件における出会いの際の会話とほぼ同様の内容のものであることが認められる。そうすると,これは,多数回にわたり手淫行為の依頼をしてきた被告人にとっての常套手段ともいうべきもので,いつも同じような話し掛けをして誘っており,そのためよどみなく供述することができたとも推察されるところであり(いずれにしろ,別の事件の際のやり取りや架空の話を本件でのやり取りとして創作したものと決め付けることはできない。),この点を適切に考察すれば,被告人がよどみなく詳細に述べたことは,「作為的で不自然といわざるを得ない」という断定的な評価にはならないというべきである(なお,逐一指摘はしないが,原判決には,ほかにも,このようなAの供述の信用性を全面的に肯定し,それを前提として被告人の供述の疑問点を強く指摘する同様の説示が,多く見られるところである。)。
 被告人の供述の信用性は,その弁解,それと平仄の合う当時の状況等を十分に考察してはじめて判断できるものであり,Aの供述のみを前提に判断されるべきではないであろう。
 (4) 以上のとおり,被告人の供述は,本件における客観的な事実や当時の状況との整合性が十分認められ,他方,Aの供述にはこれらと整合しない多くの疑問点があり,全面的に信用性を認めた原判断は,経験則に反するものというべきである。
 なお,被告人は,以前,東京都足立区の竹ノ塚駅付近で,同じような手口で女性に報酬を条件に手淫してもらい,報酬を払わずに逃げて事情聴取され,状況を説明したのち解放されたという事件があり(多数意見第2の2(5)),また,被告人の携帯電話に収められている写真には,女性に手淫等をしてもらった様子を撮影したものが多数存在しており,100件以上も同様の行為をしてきたとも述べている。被告人は,その方向の嗜好を強く有する者と推察され,そのことからしても,本件も,強姦ではなくこれらと

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