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2019年01月07日20:49

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お節と杏子と永井荷風

 今年の三ヶ日も、雑司ヶ谷にあるKY君ちへ泊まりに行ってきた。

 元日、日頃、ロクなものを食べていないので、おせち料理が大変なご馳走に見える。
 お雑煮も、餅二個食べた(ちなみに、お父様は三個、KY君とお母様は一個ずつだった)。あとは、お父様と飲酒三昧。ほろ酔い気分でいるときに、KY君が鬼子母神へ初詣に行こうと誘ってくる。
 普段なら、僕の主義に反すると云って断るのだが、何事も大様になっている酔っ払い状態なので、素直に従う。
 玄関から出るときに、骨折した右足がフワフワして歩き易くなっていたが、念の為、杖を突いて行く。それでも歩調はピョコタンピョコタン。
 さすがに鬼子母神は他の初詣客で大賑いだった。
 KY君が何か願を掛けている間、僕は売店で駄菓子を眺めていた。意外だろうが、僕はこういった物が好きなのだ。
 もう、そろそろ見飽きたなあ、と思っていると、KY君が戻ってきた。
「ご苦労様、何を願掛けたんだい?」
「世界平和です」泰然としてヌカしやがった。
「君はローマ法王か。それより干しアンズ買ってくれい」
「アンズですか?」
「そう、このアンズ買ってくれえ」
 僕としては、仰向けにひっくり返って、手足をジタバタさせる意思表示も辞さないつもりであったが、案外スムーズに願いは聞き入れられて、まんまと干しアンズの串刺しを手にすることることができた。
「墓地にも寄っていきますか?」
「うん、そうしようか」
 雑司ヶ谷霊園の永井荷風の墓を横切ってKY家に戻る。

「断腸亭日乗」に風墓はこう書いている。
「余死するの時、後人もし余が墓など建てむと思はば、この浄閑寺の塋域娼妓の墓乱れ倒れたる間を選びて一片の石を建てよ。石の高さ五尺を超ゆべからず、名は荷風散人墓の五字を以て足れりとすべし」。
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