【本】飯舘を掘る
佐藤昌明・著 現代書館(2018年)
この書物は飯舘村と原発について、二つのことを記そうとしているように思います。
一つはタイトルにもある通り天明の飢饉によって廃村に瀕した村の歴史を掘り起こし、原発事故の影響で全村避難を余儀なくされた現在の飯舘村を対照させて、村の復興を祈りたい地元出身者としての心情。
それと、なぜ飯舘村が原発事故の被害を受けたのかということの本質に迫ろうという部分が付け加えられています。高校の同期生の哲学者の高橋哲也さんとのインタビューがそれが、そこで高橋さんはリスクを地方に押し付け、中央で巨大な利益を吸い上げている構造的差別であると。
そういう構造に気づくためには、物事を「わがこと」として考えることが必要と著者は記していますが、原発事故から数年が経って、早くも事故を「ひとごと」ととらえる世間になりつつあるように感じます。
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