この件で未だに「オークションで売ればいいだけ」とか「市場原理」の理屈で
現行の販売システム〜文化市場を批判し、己の自由や利得を優先するかの如き
論理立てをし続ける傾向が見受けられるけど。
この後参院での可決後改めて報道ベースに乗ると思うし、その際また触れるかも
しれないが、ここまで何度か触れて来た内容は、事ある毎に記し続ける必要があると
思うので・・。
結論から言うと、
【興行催事における前売り券は、一般にある商品とは性質を異とするために、
市場原理に伴う流通の仕組み・・即ち市場原理の概念に当て嵌めることは出来ない】
ということになる。
もっと正確に言えば『現行日本の文化素地〜環境』に照らし合わせると、
エンタメビジネスの主要地、「米国のショービズ」における基礎から派生しつつある
「チケットの二次流通」は、日本では極めて成立し難い状況にある・・
ということを否応なく認識する必要があり、それを横置きして市場原理原則に無理やり
拡大適合させると、十中八九日本の文化全般と文化事業そのものが「瓦解する」。
先ずコンサートやスポーツイベント等の前売り券が、一般商品とどう異なるか・・。
�‖臠召脇�時が限定されており、効力は当日のみの有限性にあること。
��入場券の価格体系は概ね一律か、またはエリア区分による価格格差を
付けられているものの、座席価値の実態は一席毎に全て異なる。
（同じ価値の席は二つとない）
��催事における本当の価値は、当日幕が開かないと（試合開始にならないと）判明せず、
事前に決定づけられないものにある。したがって前売り段階にあるのは
「事前の想定価値（期待価値）」であり、それ自体が催事そのものの実態価値を
示すものではない。
という、主に3つの理由により「再販〜二次流通のための健全性を保てない」からだ。
�，砲弔い討蓮∧顕什纏�以外に「公共交通手段の搭乗券」が同類にあるが、
乗り物の種別価値は日時が変わろうと基本的に変質しないので、実際は振り替えが効き
尚且つ交換などの融通性が付けやすい性質にある。しかし文化催事の入場券は
元来それらの融通性が付け難いため、有限性の範囲は自ずと極めて狭くなるものである。
�△砲弔い董０貳名ι覆楼譴弔両ι覆箸靴胴佑┐襪法�10個あれば全て同じ価値を持つ。
しかし入場券は全ての座席価値が異なる。座席価値（価格）が本当の価値価格に
見合うか否かは、ステージが組み上がった状態を前にするか、スポーツだとプレーが
展開されていかないと定め難い性質にある。したがってそれらが判明していないのに
「座席位置の価値」を決め打つことには元来無理がある。
��について。ここが一番の肝であり主因といっていい。
一般商品は、市場流通するにあたり姿形が各種の発表経緯によって表され、
伴って店頭に並ぶことにより、消費者が手に取り目にすることが出来る。
あるいは食品なら試食が、自動車なら試乗が出来たりと、購買するにあたり事前に
判断基準の場が設けられているケースが多い。またはそれらの行為が出来なくとも、
レビューや口コミ等による「間接的な判断手段」が何某か存在している場合が多い。
しかし催事の場合、全ては「始まってみないと価値が付けられない」。
始まるまでは（終わるまでは）是非が判明しない。にもかかわらず事前に全ての価値が
付けられるとするなら・・上記の自動車に換言すれば
「好きでかねてより乗り継いで来た◯◯というメーカーのクルマだから」
という理由だけで、実物や画像を観る前に、スペックや各種の機能を把握する前に
購入する状態、と言える。つまりこれは、根拠の極めて薄弱な
「希望的期待価値」でしかない。
したがって、��の要因だけをもってしても「実態の不明な価値商品」が期待価値のみで
市場で二次流通するばかりか、その価格が“市場価値”として正当性を持つ、
持たせること自体が、そして何よりも開催前に価格が乱高下すること自体が
そもそも「極めて詐欺的で不健全な流通状態」なんである。
このことは、何も再販システムや市場原理の理屈を基に肯定する者ばかりじゃなく、
実は高額転売に否定的である「純粋なファン層」とてきちんと理解されておらず、
ファンとしてある面で「盲信」していることと、これまでの実績や良き記憶を根底にした
「自分なりの根拠」を基にして、その“期待価値”を丸呑みしているだけなのであり。
別角度から言えば本来のファンこそ、販売価格が適正だったかどうかについて、
後に冷徹な評価を下さねばならない立場なはず。ところが実際はそうじゃなく、
大半は「良かった」とし受容、そして次回へ半自動的に・・という状況に多くある。
高額転売にて利得を得ようと考える者は、まさしくこの「ファンに拠る盲信ぶり」
に目をつけたからこそ、ここまで蔓延って来た要因なのであり、突き詰めれば
現況をもたらしたのは他の誰でもない「適正であるはずのファン側」と言える。
したがって、米国あたりでオークション方式が一部で成立している背景には、
元来に「ショービズに対する消費者の素地」・・即ち
「良いものは良い、悪いものは悪い」と評価の出来る文化民度がある程度
備わっているからであり、それが乏しい状況で米国の真似をしても市場は機能しない。
ゆえに、百歩譲って市場原理とやらを日本で確立させるとするなら、少なくとも
そのための適正な文化民度が育まれてからじゃないと適合しない。
が、現行日本の音楽産業に特化して観るならば、その可能性は極度に低い。
なぜなら、乱雑に言えば「多くのライヴ事情は“アイドルショー化”しているから」だ。
アイドル＝そこに目当ての存在が立ち、歌い踊っているだけで満足し、
状態や内容如何にかかわらず、その場でファンとして共有出来ている事実に
重きの価値を置いているからであり。だから「辛口評価」も自ずと出来なくなり、
米国のような音楽~エンタメ市場の環境が確立し難い所以である。
●日本でのライヴの本質とアーティスト本分からしても、市場原理は尚更通用しない
幅広くポピュラー系の多くは、上記に関連してアーティスト側自身が多くのファンを
一律公平に扱い、「皆で同じ価値を（この場を）平等に楽しもう（楽しませよう）」
という意図がある。つまり「最前列のファンもスタンド席上段のファンも同じファン」
とし、そこに“ライヴを楽しむ”ことの本質的な格差を付けないことに腐心する。
この事の是非について、別な深い議論の余地は幾ばかりかあるとは言えるものの、
どうであれ、日本の大衆文化における歴史性にまで広く目を転ずれば、
総体的にこれが「よろしくない文化性」とは言えないだろうし、そもそも「庶民文化」
として広く考えれば、そこに集った娯楽の享受者が等しく楽しむ（楽しませる）ことは、
国内外問わず広く共通したこと・・なはずである。
日本に特化すれば「催事＝祭事」でもあるからして、伝統的な文化祭事を観ても
そこにあるのは“大衆性”であり、どんな身分や資質に関係なく「踊る阿呆に見る阿呆」
に観られるように、皆が一律平等になれる「特別な時間」とし、それを楽しむことに
最大の魅力や目的がある・・といっていい。
それになぞらえる時・・。もしオークションや市場価値なるものによって、
ライヴ会場の座席位置に大きな格差が細分化された場合どうなるか。
最前エリアは毎度のように特定金持ちしか常駐せず、その他は身分や資質に応じて
段階的に後ろや上段に・・という状況が簡単に発生しゆく。
現行日本の大衆文化性を考えた時、果たしてここに「最高のライヴ空間」が
生まれる余地はあると思えるか、だ。
個々のチケット販売の事情や実態に拠る問題性も少なからずあるとは言え、
基本的に誰でも最前エリアに座れる状態にあることと、属性に関係なくランダムに
観覧者が入れ替わる状態になければ「唯一無二の、ワンナイトオンリーのライヴ」は
成立しないんである。
毎度最前でかぶりつきたいとし、その事によるライヴ空間の変質や状態など
まるで無関係としか思わず、自分だけが楽しめることに目的を持つなら、早い話
「DVDや動画にて、部屋の特等席で好きな時に自由に楽しむべき」である。
●日本の大衆性と規範性、そこから来る法規範の是非
上記の平等性は、日本の大衆性を基軸にしているのと同時にそれは「規範性」でもある。
例題として「行列の出来るラーメン屋」としよう。噂や評判が広がり、
あるラーメン屋には毎日行列が出来る。限りある席に対して皆が並び順番を待つ。
この時ある者が並ぶのを嫌い、店側や並んでいる客に対し「余計にカネを払うので
自分を一番目にして欲しい」という要望が通るか否か・・。言うまでもない。
これが通らないのは店側が第一義として「客を平等に扱い」、客側もそれを
受容しているからに他ならず。滞りなく廻る（廻す）ためには順番性を敷くことが
妥当と広くが思い、肯定しているからだ。理由には「ラーメン」という大衆性が
背景にあることと、庶民の食文化として広く浸透、その属性の中で育まれ、
尚且つ今も多くがその属性によって流通していることにある。
一方で、カネを多く払うことによって優位性や格差をつけ、尚も市場構成の中で
存在し、市場価値を従え発展性を持つものもある。がしかし、それと大衆文化の属性を
一緒くたにしたらどうなるか。その瞬間「大衆文化が特定層の文化」に変質することを
意味する。それで果たして「大衆文化本来の魅力である」とし、そのために更なる支出が
価値に見合うのかどうかになぞらえれば、逆に矛盾を生じさせる。
その意味において、「法と道徳の分離」にある概念性にも当て嵌めるなら・・
相関性があり、非常にデリケートで難しい解釈は必要になるものだが、
社会や市民の中で伝統的に基礎付けられて来た「社会規範〜道徳基準」が、
本件事案については平成も終わり頃になってようやく「法規範化（社会規範と並列化）」される運びとなったと考えるべきで、法が規範性を先ん出て優越化（従属化）
させたのではない、と言える。
本来は法基準を用意するまでもなかったのが、市場原理という概念性が大衆文化と
そこにあるべきな社会倫理規範を崩壊させてしまうが為に、法的な防護壁を構築し
「平等性を特長とする大衆文化」を守る・・という論理で観なければならず。
「自由経済性」が多くの市民社会を下支えしている・・という理屈は一定程度ある。
が反対に、自由であり過ぎることが市民社会を不健全に追い込む危険性をも
内包している・・という事実を、どれだけ客観的に鑑みることが出来るかであり。
その点で繰り返しになるが、「大衆文化」は文字通り広く大衆のためのもので、
大衆性を基軸にした特性が魅力であるものを、そうじゃなくなる事をもってして
「市場」は本当の意味で活性化などしないのである。。
チケット不正転売を禁止する法案、衆院通過
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=32&from=diary&id=5404382
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