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2018年12月03日23:18

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《階段04-1》《ちー+! 047》

《階段04-1》
空を飛ぶ!

通っていた幼稚園の学年(?)は、『年少・すみれ組、年中・ゆり組、年長・さくら組』と呼び、これは『ゆり組』での話。
満3歳が対象となるすみれ組での一年間を終了し、次の学年(?)となった末のゆり組なのだが、人数の少なかった1クラスのすみれ組とは異なり、ゆり組、さくら組に関しては2クラスずつ存在していた。ちなみに俺は『ゆり1組』というクラスだ。

担任の先生は『とびた先生』といった。今やぼんやりとした記憶の姿だが、若々しくはつらつとした朝礼台の上の先生の元気な言葉が今なお印象深い。
幼い知識では知り得ていた苗字の幅は非常に少なく、早い話が友人知人の苗字が俺の世界の全ての苗字だったわけだが、『とびた』という苗字もまた初めての出逢いだ。
漢字を知らない年齢でありながらも、変な所に興味を持つ俺は『とびた』の『とび』に強い興味を持っており、母さんに尋ねた。

てぃ:『とびたせんせいの『とび』ってどう書くの?』
母:『鳥が飛ぶとか、飛行機が飛ぶとかに使う『飛ぶ』だよ』
てぃ:『とびたせんせいって空とぶの?』
母:『痩せて軽そうな女の人だから、飛べちゃうかもねぇ』
てぃ:『………(すごいっ! ヒトって飛べるんだ!)』

冗談を鵜呑みにする幼少時代。…バカである。
後日、飛田先生本人に確認をとる。

てぃ:『先生って『とびた』って言うんでしょ? 飛べるんでしょ?』
先生:『飛べないよ。でも、気持ちはいつも飛んでるよ!』
てぃ:『(そっか、気持ちで飛ぶ事が出来るんだ!)』

きちんと全ての話を聞かない俺は、今も昔も相変わらずだ。そして強引な解釈。
そんな解釈の後、実際に空を飛んでみようと、思い立った。
まず、地面からのジャンプだが、これは無理とやる前から判断。なにせ、これまでも『飛ぶ』というイメージとは別に、ジャンプなんて行動は何度もしていた訳だし、それで飛べるというのであれば、今頃きっと飛び回っている事だろうと幼心に思ったからだ。

となると、必要な物は、『飛ぶための高さ』というか、『高低差?』。きっとアレだ、空中に滞在する間に何らかの方法で上昇する力が必要なんだ。と、今思えば子供らしからぬ発想。
そんな理由で階段を上り、2階に存在する年長クラスのさくら組に向かい、クラスには入れない事を知っていたので、そこから階段の手すりや骨組を伝って屋根に移る。

トライ1回目:
屋根から園内運動場の高低差は大体3メートル。ジャンプで得られる高低差に比べれば比較にならない高低差が得られるわけだ。
空を飛べる確信があった俺には恐怖心は無く、簡単に飛ぶ事が出来た。…でも、頭から行くと痛そうだったので、ちゃんと地面に向けて足を揃えての離陸? ジャンプと何も変わらない。
もともとチビスケだったのが幸いだったのか、『てんっ!』と着地した後に、痛みも何も無かった。その前に、滞空時間は何となく掴めた。1秒は無い。案外少ない時間だ。でも、この間にどうにか『上』に向かう何かをすれば…!
もちろん、当時はこんな気難しい考え方をする訳もなかったが、まあ、概要はこんなもんだ。

トライ2回目:
またも屋根に移動し、飛ぶ体制の俺。誰かが職員室に先生を呼びに向かった事も知らずに。
1回目の感覚は既に掴めている。あの滞空時間中に何かをすれば…。何をしていいのかは全然分からないが。
でもジャンプ! ぴょこんっ! …てんっ!
ダメだ。滞空時間に考える時間が無さ過ぎる。どうしたものか? 飛田先生はどうやって空を飛ぶんだろう???

トライ3回目:
またまた屋根の上に。2回のトライは既にいくばくかのギャラリーを集めるに至り、注目すら浴びる。…悪い意味で。
そこに飛田先生登場。
先生:『何やってんのてぃーちゃんっ! 早く降りなさいっ!』
慌てふためいての登場に至った先生は、文字通り慌てていてそんな言葉を俺に向ける。
冷静にならずとも、先生の言い放った『降りろ』とは、『もと来た道を伝って階段を利用しなさい』といった話なのだろうが、単純な俺はストレートに誤解。…ぴょこんっ!
下では意を決した先生が受け取り態勢!?
てぃ:『どいてぇー!!!』
思わず叫ぶ俺。衝突に近い救出劇が痛い思いをするのが何となく直感で分かった。
間一髪、どいてくれた先生が早く、無事着地。この時、何となく滞空時間が長かった錯覚を覚えたが、もちろん4回目のトライは閉ざされた。
『大丈夫!? 大丈夫!?』と、なおも慌てた様子の飛田先生に、『だいじょうぶだよ!』と俺。安心したのか、次に頭をひっぱたかれた訳だが、正直、これが一番痛かった。

一歩間違えれば大事故に繋がった認識など持たない俺に対し、飛田先生は『もう幼稚園では屋根からジャンプしない』という約束の元、『指切りげんまん』をした。

『ゆ〜びき〜りげんまん、ウ〜ソついたら、はーりせんぼーん、の〜ます、ゆーびきった♪』
という、リズムの付いた、歌に近い、あれだ。

そして『指切りげんまん』の詳細も教えてもらった。
先生:『約束を破ったら大変だよ。指を全部切られて、げんこつを1万回も受けて、針を千本飲まされるからね!』

今思えば子供相手にリアルな力説だが、当時の俺にはあんまり理解出来なかった。…とはいえ、鉄製の針を飲めば痛い思いする事がすぐに分かったので、そんなの嫌だという理由で約束を守る事に。
以後、屋根の上に立つ行為はしないと決めた訳だが、幼稚園側は対策として屋根に移れそうな全ての場所に針金を縦横無尽に張り巡らせ、言葉なき進入禁止を強制執行。物騒な記念品の完成に至った訳だ。

約束通り、というか、破る事も出来なくなった状況下、俺は幼稚園では高い位置からジャンプする事は以後、無かった。…『幼稚園』では。


《ちー+! 047》

第一章 仲間たちとの行進曲 3-9

【魔法都市ペナ・リノ [南部]】
『ネメス城兵寄宿舎(ペナ・リノ南部第5)』

寄宿エリアに到着したチータス一行は、今は関係者以外の誰にも聞かれてはならない『話し合い』に身を投じていた。
『話し合い』の場として選ばれたのは護送に使われる馬車、部隊が表現する所の『二番馬車』の荷台の中で、主にチータスが滞在する荷台でもある。狭苦しい場所ではあるが、チータス本人に馴染んだ空間がここしかなく、一度は寄宿舎内に存在する会議部屋を申し出たラウニーの案内を却下した末の流れだった。
 ナルミはというと、やはり無心のまま寄宿エリアまで一定の間隔を開いたまま付いて来ていたようで、姿は見ずとも門前払いを受けていた事が外部の言葉のやりとりで知る事が出来た。…という部隊の認識だ。
ただ、チータスに言わせれば『付いて来た』と表現するよりは『追い付けなかった』と表現した方が、より正しいらしい。
 チータスの持ち込んだ『話し合い』は非常に単純であり、同時に難題とも表現できる矛盾したものだった。
 実行するには易しい。おまけに前段取りまで既に整っている。…しかし、人間性、増してや一国の安全を願うべく結成される城兵の行う行為としては疑問が生じるが、周囲の認識と本人の認識の食い違いから、いずれ生じてもおかしくなさそうな今後の摩擦や、当の本人の生みの親の、ささやかにして大きな願いを持ち備えた複雑な内容でもある。

 この『話し合い』の中で最も重要な点は、2人存在する主人公であり、その片側を担うチータスが真実を知らない所にもあった。
 チータスは目的が完遂されるならば内容なんて気にも留めないだろうが、彼女の安全を何よりも最優先する城兵側としては、そこにこそ問題が生じてしまう。

『爆弾魔 ナルミ・クレーデル』。

当時、まだ幼かった本人にその記憶は無いが、かつてペナ・リノを襲った治安悪化の引き金とは、彼女の行動の先に発生したものだとラウニーは知っていたのだ。
 これについては、ダーマンも今回の任務以前にラウニーから雑談がてらに聞かされていたため、直接治安悪化の状況を目にしたわけではないが、それでもある程度は把握していた内容だった。スケクとアッベシに関しては真相をどこまで把握しているかは判らないものの、少なくとも現在の『王宮騎士団第三部隊特殊任務専行隊』が結成される前の話である。
「チータス殿と、ナルミ・クレーデル様の母君の願いはそれぞれに趣旨が異なるようですが、一応確認しました。しかし、我々として…」
「はいそこ、敬語になってる。丁寧語になってる」
 ラウニーの話に強引に入り込むチータス。その顔は『少し時間を空けるとすぐ戻る』とでも言うようだ。
「えっと、重要な話ですが…ダメですか?」
「ダメです」
 まさかこれから話す内容にナルミ・クレーデルの過去が出てくるなど、夢にも思わないのだろう。話がとんとん拍子に進んでいる事もあってか、『話し合い』以前から寄宿エリアに戻って来たチータスは上機嫌だが、それが返って話し出し難さを増してしまっている。
「…ダーマン、頼む…」
 チータスに話を遮られ、固めた説明への決意が崩れ去ると、ラウニーはダーマンを頼る事にした。ただでさえ使い慣れない言葉を操りつつ、重大な説明をきちんと最後まで言う事に自信を持てなかったのだ。
「…俺っすか…?」
 当然、唐突に話を丸投げされて難色を示すのはダーマン。
「若いところで頼む」
 我ながら理解出来ない説得とも感じたが、機転の利いた言葉を今のラウニーは持ち合わせていなかった。
「…まったく、行き詰るとコレだよ。可哀想な部下だよなぁ、俺も」
 一見、毒突くような態度のダーマンであるが、この態度はラウニーが困った時の代理を任された時によく見る事が出来るもので、問題の対象となるこれまでの知識をまとめる意味での時間稼ぎのようなものであり、短くはない付き合いの中でみんなが自然と理解している事でもあった。
 いつの頃からかまでは覚えていないが、ラウニーはダーマンの『考え方』というものを見抜いていたのだ。
 他の2人と比べれば普段から無口な性格ではあるが、こうした問題事の発生に関しては常に数歩先を考えているもので、ラウニーの期待はそこにあった。
「………ふぅ…」
 一方で、指名されたダーマンにはラウニーの期待に応えられそうな話は何も持ち合わせていなかった。この話に関しての情報は確かにラウニー伝いで人より多く知っていると感じる所もあるが、実際にその頃のペナ・リノの状況を見ていた訳でもないため、言ってみれば噂程度の知識でしかない。
 ダーマンは言葉による説明を施すには無理があると判断すと、まずは何も言わずにチータスを直視した。
「ん? なに?」
 急に静まった荷台の中、それぞれの反応を眺めていたチータスが当然の反応をする。
 ダーマンはほのかに笑顔を作って扉を開けると、まずは現場検証を行う所から始める事にした。
「そうだな…、とりあえず行ってみるか、チータス殿」
「は? え? …ナルの話は?」
 急な話の変化に、今度はチータスが混乱する。


《あとがき》

幼稚園では日々の園内生活内容(その日の出来事)を感想として記入する『お知らせ帳』というか『連絡帳』というか、そんなものがあった。
当然、そんな手帳に『飛び降り事件(?)』は記載されていたらしく、帰宅後、ニコニコとお菓子を食べていた俺に、超半狂乱の母親がいきなりのデカイげんこつ投下。
何か痛い思いをすればすぐに泣きだす俺だったが、この時ばかりは何が起きたのかさっぱり理解できず、痛さも忘れる『?????』な状態。

その日、幼稚園でやった事を教えろと迫られるが、これは怒られるパターンだと察知した俺は嘘を貫く事にしたが、全然効果が得られる筈もなく、深みにハマりにハマり、お菓子強制撤去に涙を流す事に…。
ありゃァ…、本当に悲しかった…。

ちなみに『指切りげんまん』の本来の歌詞(?)は以下の通りだという。

『指切り拳万 嘘付いたら 針千本飲ます』

…………なんか、漢字にすると一言に怖い…。

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