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2018年11月25日19:41

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「姉さん、事件です」と石ノ森章太郎

母親が亡くなってから1年近くになりますが、『前略おふくろ様』のナレーションみたいな感覚がずっと残っています。日々の生活の中で、報告したいこと、話したいことが山のようにあるのですが、話す相手は不在です。

それまでは、ドラマ表現における単なる叙述のスタイルだと思っていましたが、その裏には倉本聰の実体験がある、ということを、身をもって知りました。

調べてみると、倉本氏の母親が亡くなったのが1974年で享年69歳。『勝海舟』が始まって3か月後とのことなので、春だと思われます。
https://kagerou-kazoku.com/sou-kuramoto

そして、『前略おふくろ様』が始まるのが、1年半後の1975年の秋です。Wikipediaの「倉本聰」には、以下の記載があります。

| 語尾を濁すような独自の口調で語られるモノローグ(ナレーション)を多用し
| た脚本で著名(ただし、『前略おふくろ様』で初めて取り入れた手法であり、
| それ以前には用いていなかった。

| 自身の母の晩年と死をモデルにしたドラマ『りんりんと』への出演がきっかけで、
| 晩年の田中絹代と深い交流を持ち、この交流が『前略おふくろ様』のヒットにつながる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%89%E6%9C%AC%E8%81%B0

ちなみに、テレビドラマデータベースによると『りんりんと』の放送日は、1974年9月8日です。
なので、あのナレーションが、倉本氏の実体験から生まれたと考えるのが妥当だと思われます。

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今日、気が付いたのは、ドラマ『HOTEL』に出てくる、高嶋政伸の「姉さん、事件です」という、あの奇妙なナレーションも、事情は同じだということです。

今年の『24時間テレビ』で放映された『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』では、死別したお姉さんの話がメインで描かれていました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%92%E4%BD%9C%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%94%B7_%E7%9F%B3%E3%83%8E%E6%A3%AE%E7%AB%A0%E5%A4%AA%E9%83%8E%E7%89%A9%E8%AA%9E

石ノ森少年は、お姉さんがきっかけで漫画を描き始め、お姉さんに読んでもらうために漫画を描いていたので、お姉さんが急死した後、漫画が描けなくなります。おそらく石ノ森氏は、不在のお姉さんに語り掛けるメンタリティを、生涯にわたって持ち続けたのではないかと思われます。有名な『ジュン』も、亡くなったお姉さんがモチーフになっているみたいですし。

石ノ森氏の場合、急変するまで死ぬとは思っていなくて、病院を出て、映画を見ている間に、お姉さんが急変しました。ボクの場合も事情は似たようなもので、病院から家に戻って、深夜ドラマ『セトウツミ』を観ていたら、「心肺停止だ」と電話がかかってきて、「別の患者と間違ってるんじゃないのか?」と思いました。『セトウツミ』は最終回が面白かったらしいのですが、観る気になれませんね。

石ノ森氏のドラマでは、お姉さんが亡くなった日で青春時代が終わったと、ナレーションがありましたが、ボク自身も、青春時代ではないですが、一つの時代が終わったという感覚を持っています。

ドラマ『HOTEL』の場合、お姉さんは生きているという設定で、電話口で沢口靖子の声が流れたことがあったらしいですが、この設定のルーツは石ノ森氏のお姉さんだと考えるのが妥当だと思われます。かつては、ドラマを観ながら、間抜けっぽいなという印象を持っていたのですが、実はせつない背景があった――と、今日、気が付いたわけです。

ちなみに、どこで気が付いたかというと、動物病院の待合室。
この2〜3日、食事をしなくなったネコ(19歳メス)を病院に連れて行ったのですが、昔のことをあれこれ思い出していたら、なぜだか『HOTEL』のことに思いが至りました。猫の方は、血液検査の結果が19歳にしては、かなり良いので、対処療法で様子を見ることになりました。それを報告したい相手は不在なんですが……。

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