(AERA dot. - 11月06日 16:02)
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鴻上尚史の人生相談。「今の友達グループに、本当の友達はいない」と相談者。自分はいつも最下層扱いと下を向く相談者に鴻上尚史が提案した「おみやげの渡し合い」とは?
【相談10】本当の友達がほしいです(相談者・17歳 女性 あさひ)
女子高に通っている高校2年の17歳です。相談は、学校があまり楽しくないことです。
2年になって、5人の仲良しグループに入りました。授業の移動もランチも、みんな一緒です。ときどき、放課後にケーキの食べ放題にいったりもします。夏休みもいっしょに海に遊びにいきました。
でも、私は5人のなかで、いてもいなくてもいい感じなんです。遊びの決め事とかあっても私に相談なしに決まっていることもよくあります。夏休みの遊びの計画も知らないうちに先に日程も決まって、「行けるでしょ?」っていう感じでした。4人のうち誰かが話しはじめても、私の方を向いて話すことはほとんどありません。私の意見を聞こうともしてくれません。ときどき、さみしい気持ちになります。
いじめられているわけではないけど、たぶん、4人にとって、なんとなくくっついている私は、本当はどうでもいい人間なんじゃないかなって思います。みんなでカフェに入っても、なぜか私ばかりが端っこのはみ出る席(前にみんなの鞄が置かれることになる席)に座ります。一回はみ出ない席に座ろうとしたら「奥にずれて」と言われてしまいました。都合のいいときに利用されているかもと感じるときもあります。みんなで週末に超人気のパンケーキを食べに行こうということだったのに4人が「どうしてもその日、用事で早くつけないから先に並んでてくれる?」と、みんなより1時間半も前に並んだこともありました。
みんな私を本当の友達とは思ってくれていないのかもしれません。
でも、ひとりになるのはいやです。お昼ごはんをいっしょに食べる人や授業の移動をいっしょに行く人がいなかったら友達いない人みたいでみじめです。それだけはできないです。
どうして私は本当の友達ができないのか、いつも最下層扱いなのか、自分が嫌になります。鴻上さんの、「同調圧力」のネット記事見て、なんか、泣きそうになりました。私は今までクラスで同調圧力に逆らったことなんかないです。でもここから抜けられる方法があったら教えてほしいです。本当の友達はどうしたらできますか。
【鴻上さんの答え】
あさひさん。正直に相談してくれてありがとう。
本当の友達が欲しいんですね。
いきなり質問しますが、本当の友達が欲しい理由はなんですか? ひとりになるのが嫌だからですか? 友達がいない人はみじめだからですか?
僕はあさひさんを責めているのではないですよ。みんな、ひとりになるのは嫌ですからね。
でも、みじめになるのは嫌だから友達が欲しいのなら、誰でもいいことになりませんか?
恋愛に例えると分かりやすいですかね。さびしいから恋人が欲しいなら、さびしさを忘れさせてくれるなら誰でもいいことになりませんか。それは嫌じゃないですか? やっぱり、この人って思う人と恋愛して、その結果、さびしさを忘れたくないですか?
「どうして私とつきあいたいの?」って聞いて「さびしさを忘れたいんだよ」って言われたら、困りますよね。やっぱり、「あさひじゃないとダメなんだよ。あさひが好きなんだよ」って言われたくないですか?
では、友達はどうですか? お昼ごはんをひとりで食べたくないから友達が欲しいのなら、誰でもよくなりませんか?
「みじめになりたくないから友達になって」と言われたら、あさひさんは嬉しいですか? もし、もう一人のクラスメイトがやって来て「あさひさんと話が合いそうだから友達になって。あさひさんにとっても興味があるの」と言われたらどうですか? あさひさんは、どちらの人と友達になりたいですか?
もし、あさひさんが「私はみじめになりたくないから友達が欲しいの。それだけなの。私がひとりでみじめにならないなら、どんな人でもいいの」と思っているのなら、僕の相談はここまでです。
お互いがお互いのことにまったく興味がないのに、ひとりになりたくないから友達のふりをしている人達はいます。そういう人達は、相手の話を聞かないで自分のことだけを話します。そして、心の深い所で相手に退屈していたり、バカにしていたりします。何人かで話していて、一人がトイレに行くと、すぐにその人の悪口が始まる集団は、そういう人達が集まっているのです。
でも、別れないのは、ひとりはみじめで、さびしいと思っているからです。
ちなみに言うと、そういう恋人同士もいます。本当は相手のことをちっとも好きじゃないのに、さびしくて、恋人がいないと思われたらみじめだからつきあっている人達です。
僕は、そういう人を見るたびに、「そんな相手とつきあう苦痛」と「みじめでさびしいと思う気持ち」を天秤にかけます。
どういう意味か分かりますか? さびしさやみじめさから友達になった相手といると、本当の友達ではないですから苦痛を感じます。でも、もし、そういう関係がいやだと拒否して友達にならなかったら、みじめさやさびしさを感じます。
どっちを選んでも、マイナスの気持ちが生まれます。だったら、どっちのマイナスの気持ちの方が大きいかを考えるのです。
あさひさんは、どっちの気持ちの方が大きいですか?
どっちの気持ちの方がいやですか?
えっ? そんなこと考えたこともない? では、考えて下さい。ゆっくりと。落ち着いて。自分はどっちがいやなのか。もちろん、パッと考えれば、どっちもいやです。でも、じっくり考えると、どっちの方がよりいやか、微妙な違いを感じてきませんか?
究極の選択ですね。「うんこ味のカレーとカレー味のうんこ」のどっちを選ぶのか。「本当の友達とは思ってくれない人達といつも一緒にいる」か「ひとりでお昼をたべたり教室を移動したりする」か。
でね、あさひさん。
この究極の選択に答える前に、もし、あさひさんが「みじめでさびしいのはいやだから友達が欲しいんじゃないです。私は本当の友達が欲しいんです」と思ったとしたら――。
では、僕は聞きます。あさひさんにとって、本当の友達はどういう人ですか? もっと簡単に聞くと、「どんな人と友達になりたいですか?」。
好きになるタイプってわりと決まってないですか? スポーツマンだとかイケメンだとか面白いとか賢いとか。
友達になりたいのはどんなタイプですか?
あさひさんの相談を読んでいると、どうも、抽象的な友達を求めていて、具体的な友達のイメージがないように思えるのです。
なんだか、恋に恋する純情乙女みたいな感じです。恋に恋している時は、あんまりタイプはないでしょう? ただ、恋人が欲しいと思うだけなのです。
「どんな人と友達になりたいですか?」
例えば、「気が合う人」。なぜ気が合うのでしょう? 気が合うのは理由があると思いませんか? 同じアーティストが好きとか、趣味が似ているとか、興味のあるものが近いとか。
僕は人間関係は「おみやげ」を渡し合う関係が理想だと思っています。
「おみやげ」って言うのは、あなたにとってプラスになるものです。楽しい話でもいいし、相手の知らない情報でもいいし、お弁当のおすそ分けでもいいし、優しい言葉でもいいし、なぐさめでもいいし、マンガやDVDを貸してあげるのでもいいし、勉強を教えてもいいし。とにかく、あなたが嬉しくなったり、助かったり、気持ちよくなったりするものやことです。
AさんとBさんがいて、いつも、Aさんは「おみやげ」をBさんに一方的に渡すだけで、Bさんからは何もお返しがなかったとしたらどうなるか、想像してみて下さい。
AさんはいつもBさんに、面白い話をしたり、ネットの耳寄りな情報を教えたり、元気づけたり、オシャレ小物をあげたり、グチをきいてあげたりしている。Bさんは、ただそれを受け取り、喜び、聞いているだけ。Bさんは、何もAさんに渡してない。
そういう関係は長続きしないと僕は思っているのです。
そして、恋愛も友情も、お互いが「おみやげ」を渡し合えている限り、関係は続いていくと思っています。
でも、どちらかが「おみやげ」を受け取るだけで、何も返さなくなったら、その関係は終わるだろうと思っているのです。
利害関係とは、ちょっと違います。「おみやげ」関係は、もっと人間同士の受け渡しというか、大きなことからささいなことまで、物質的なことや精神的なこと、気持ちまで含んだ全体的な関係のことです。
僕は「おみやげ」関係が、人間関係の基本だと思っているのです。
残酷な考え方だと思いますか?
でも、あさひさんに友達がいて、その人はいつもあさひさんに頼って、いつもグチを言って、いつも相談をもちかけているとしたらどうですか?
あさひさんが自分の相談をしてもちゃんと聞いてくれなくて、あさひさんの気持ちじゃなくて、自分の気持ちばっかり言い続けたら、あさひさんは友達を続けたいと思いますか?
お互いがちゃんと「おみやげ」を渡し合う関係にならないと友達を続けられないのです。
僕は大学時代、文学好きの友達に会う前は、必死になって最新の話題作を何作か読みました。そして、「あいつならこれを気に入るんじゃないかな」と思う本の話をしました。友達は、目をキラキラさせながら、僕の情報を喜んでくれました。それは僕なりに考えた「おみやげ」でした。
どうですか? あさひさん。
あさひさんは、グループの4人にどんな「おみやげ」を渡していますか? パンケーキ屋さんに1時間半も前からひとりで並んだのは間違いなく「おみやげ」です。それ以外は、どんな「おみやげ」を渡していますか?
えっ? 自分は最下層で「おみやげ」なんて人に与えられない?
あさひさんは、すごく落ち込んでいるとき、相手が微笑むだけでホッとしませんか? それは立派な「おみやげ」です。髪を切った時、「似合ってるね」と言われたら、嬉しくなりませんか? その一言は素敵な「おみやげ」です。
そして、あさひさんは、その4人からどんな「おみやげ」をもらっていますか? ただ、お昼と移動教室の時にひとりにならないというだけの「おみやげ」ですか?
さて、あさひさん。長い文章になりました。
僕は中学時代、「友達のふりをする苦痛」と「ひとりのみじめさ」を天秤にかけて「ひとりのみじめさ」を取りました。グループから抜けて、ひとりでもいいと決意したのです。
それでも、何人かはときどき話しかけてきてくれました。ひとりになってさびしい時に、話しかけてくれるだけでも、それは僕にとって「おみやげ」でした。
そういう時、自分はどんな「おみやげ」が渡せるだろうかと考えました。
相手にとって何が「おみやげ」になるかを考えることは、つまり、相手を理解しようとすることです。音楽に興味のない人にいくら最新の音楽事情を話しても、それは「おみやげ」になりません。自分が興味あることと、相手が興味あることが違うことはよくあります。
そうやって、考えながら「おみやげ」を渡しているうちに、ひとり、本当の友達ができました。たったひとりでしたが、さびしさもみじめさもなくなりました。じつは、彼も「ひとりのみじめさ」を選んで、グループから抜けた人間でした。
あさひさん。これは僕の場合です。
あさひさんは「友達のふりをする苦痛」と「ひとりのみじめさ」を自分で天秤にかけないといけません。焦らず、ゆっくり考えて下さい。
そして、「この人と本当の友達になりたい」と思う人がいたら、「自分はどんな『おみやげ』を渡せるんだろう」と考えるのです。
「おみやげ」は押しつけるものではありません。相手がいやがるものでもいけません。相手がもし、あさひさんの「おみやげ」を受け取る気持ちがないようなら、あきらめるしかありません。ただ、その人がくれた「おみやげ」に感謝していること、嬉しかったことは伝えましょう。
相手への「おみやげ」を考えることは、人間を理解しようとすることです。それは決してムダな努力ではないです。
その努力は、あさひさんを成熟させます。人間を見る目を養い、相手の気持ちを察することができるようになります。
そんな素敵な人は、みんなが友達になりたいと思う人なのです。
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