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2018年10月25日22:02

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孤独な少女は巨人に打ち勝てるか?「バーバラと心の巨人」を観た!

 タイトルから惹かれ、地元では船橋でしかやってなかったマイナー作品。そんでもって近日終了と聞きつけ駆け込み鑑賞。

●バーバラと心の巨人


【物語】

 少女・バーバラは、町に災厄を運ぶ巨人と戦う日々を送っている。学校に通う傍らで加護を受けるべくウサ耳をつけ、手作りのポシェットには大好きな野球選手になぞった「最終兵器」を隠し持ち、来るべき戦いの時に備えて森や海岸に罠を張り巡らせる。そんな彼女は家族やクラスメイトからは奇人にしか見えず、また彼女もそれを自覚し孤立を深めていく。

 ある日、近所にソフィアという少女が引っ越してきた。親しげに話しかけてくる彼女をバーバラは最初遠ざけていたが、やがてその距離は近づき二人は友達になる。しかしそれはバーバラの心の乱れにつながる。家庭内不和、学校でのイジメ、教職員からの困惑の眼差し。それでもバーバラは巨人との戦いの準備を進める。

 彼女にしか感知できない強大な敵に、バーバラは果たして打ち勝つ事ができるのか?


【孤独な少女の日常と戦い】

 原作はアメリカでヒットした「グラフィックノベル」てっきり日本でいうラノベの類かと思っていたら、最初から単行本の体裁で販売されるマンガ(アメコミは通常、新聞みたいに1話単位の薄い紙で発行される)を指すそうで、ざっくり言えば「マーベルでもDCでもないアメコミ原作ですよ」といったところか。多感で複雑な物語は、エンターテイメントと呼ぶにはかなりしんみりした内容だと言える。

 バーバラにしか見えない巨人、それは確かに存在していて、森の中を不気味に蠢き、物を破壊したり生物を殺したりする。それを捉えるのは小さな戦士バーバラで、彼女は巨人の行動を予測すべく生態調査を行い、その行動パターンや有効な武器を探ろうとする。しかしバーバラにしか見えないため、他人にとっては彼女の行動は奇行でしか映らない。

 彼女を観ていると何となく学生時代を思い出す。言葉は悪いが、自分だけの空想に浸ったいわゆる「中二病」や、ちょっとエキセントリックな言動をする「特別学級」の生徒。彼らは他の人には感知できない何かを感知し、自分たちとは違う世界で生きているように見える。今にしてみれば「そういう人たちだった」と冷静に振り返られるものだが、バーバラを見て困惑する周囲の人々は、あの頃の扱いが難しい友達を思い出す。何なら自分だって中二病(もとい子供のヒーローごっこの延長線)は一度通った道であり、戦う相手もいないのにチームを組んだり秘密基地に集まったりしたものである。

 ただバーバラの場合はガチ具合が尋常じゃない。オカルトめいた秘薬やまじないの研究に没頭し、巨人のスケッチは大人も押し黙るほどリアルな画力で描かれ、森に仕掛けた罠は本格的な殺傷能力を秘めている。趣味のボードゲーム(多面ダイスやフィギュアを用いた本格的なファンタジーもの)だって同年代の子供には到底理解できるものでなく、TVゲーム漬けの兄からは「オタク」の一言で片づけられている。高い知能や積極的な行動力も、全てが「巨人討伐」(誰も信じないのでバーバラだけの秘密)という常人には到底理解できない行動に注がれていること、それが周囲には怖いのだ。

 ソフィアが心配しようが、いじめっ子が突っかかろうが、バーバラは戦いを止めない。その覚悟と意思は本物だけに、誰も彼女の戦いを止める事ができない。次第に侵攻を進める巨人を前に彼女は焦燥する。もっと強くならなければ、バーバラが倒さなければ巨人が全てを破壊してしまう。一体この戦いはどうやって決着がつくのだろうか?

 と、バーバラの強い主観で引き込まれる本作ではあるが、あえて苦言を呈するなら「バーバラと心の巨人」という、ストレートなタイトル(原題は「I KILL GIANTS」)だろうか。分かりやすさ優先だと思うが、本作をバトルものとして期待すると、肩透かしを食らってしまうかもしれない(実際、PVでは戦闘シーンを押し出した作りだったので)。


【まとめ】

 多感で繊細な少女の、戦いを通じた成長物語。巨人は何も彼女だけにしか見えない脅威ではない、誰だって自分にしか見えない何かと戦っている。そんな事をふと思わせる、そんな日常に潜んだバトルファンタジー。
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