18960116 NO2524 電信条約の件
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駐韓日本公使館記録 5巻 九. 鉄道•電線•開港 貸金公債 下 (12) 電信条約の件
文書題目 (12) 電信条約の件
文書番号 機密送第四号
発信日 明治二十九年一月十六日 ( 1896年 01月 16日 )
発信者 外務大臣臨時代理 文部大臣 侯爵 西園寺公望
受信者 在京城 弁理公使 小村壽太��
(12) 電信条約の件
機密送第四号
先に遼東半島の引き渡しに関して、義州（ウィジュ）屯在の兵が既に引揚げ、引き続き平壤あたりの兵も撤退の予定でありますので、電信線の保管人がいないことになります。そこで、「電信条約」締結の件を至急朝鮮政府へ御開談されたいとの件について昨年十二月四日の電信で申し上げました事情がありますが、この条約はこの際批准交換を経た正式のものとして置くことが必要とお考えになっておられる件について御委任状を受けられたいむね翌五日電信でご通知がありました。
しかしながら「電信条約」の件は元来一昨年朝鮮政府と締結の「暫定合同条款」に基づいているもので、この「条款」の第三条に「電信は時宜を酌量して条款を訂立し」云々とあるので「電信条約」また「電信処弁（＊処理）条款」と言う名称で別に批准する必要はない。政府と政府との間の約束として置きたいとの件については、この「条約」（＊？）中にある「条約」の語を総べて「条款」と改めたいと同月十一日電信で伝えて置いたのだが、その後この「電信処弁条款」中の修正に関し別紙甲号の通り電信で御請訓がありましたので、逓信大臣と協議の上本月七日別紙乙号の通りご返事しておきましたので、念のためこの往復電信写を添えてこの件申し上げます。
明治二十九年一月十六日
外務大臣臨時代理 文部大臣 侯爵 西園寺公望
在京城 弁理公使 小村壽太�� 殿
[別紙 甲号]
文書題目 電線処弁条款中つぎの通り修正を加えたい
電線処弁条款中つぎの通り修正を加えたい
明治二十八年十二月十九日 一時 五分 発
四時五五分 接
小村 公使
西園寺 大臣
一. 譲渡代金を十万円、年賦金を五千円に減ずる。
二. 第七条中「他国」とあるのを 「他国政府若しくは会社等」 と改め、本条は朝鮮政府の希望に従い条款中に挙げ、別に公文をもって取り決め、且つ次の一項を加えて置くこと。即ち、
「もし朝鮮政府において各電線の管理を怠り、又は相当の理由なく永く通信を断絶させたときは、日本国政府は前項の例によって再び釜山・仁川両線を管理することができる。
三. 第十二条中「他項は」以下を削り、その末段をつぎのように改める。即ち
「輸入税並びにその置場及び電線室の地税を免除すること」。
四. 第十三条を削る。
朝鮮政府が譲渡代金を半額に減ずることを申し出た理由は、目下財政困難の際なのでなるべく政府の負担を軽減して置きたいと言う所にある。ついては我が政府においてもこの懇請を容れられてなるべく速やかに本条款調印の運びに至るよう致したい。もっとも譲渡し代金を半減する以上は、電線の管理を充分確実にさせるため朝鮮政府に雇い入れる予定の日本技師の員数及び配置に関しては、別に公文をもって取り決めをなしておくこと。
以上で差し支えがなければ、直ちに調印の運びに至ること。至急指揮をお願いする。
[別紙 乙号]
文書題目 [電線処弁条約中万国電信料金計算条項新設の挿入の件]
明治二十九年一月七日 午後七時四五分 発
西園寺 外務大臣
小村 公使
昨年十二月十九日付電信で指示を求められた「電線処弁条款中修正の件」はその筋協議を遂げたところ、総べて貴官御提議通りに修正して差し支えない。もっとも右「条款」中本邦を経由して他外国と朝鮮国との間に往復する万国電信に対しては何ら料金の規定がないので、お互いの計算上の面倒を避けるため、朝鮮国首尾料金は総て同一とすることが必要と認めるので「条款第十一条第一項」の次に次の一項を挿入すること。
「前項の料金低減実行の場合において、朝鮮と諸外国との間に発着する電報で日本国を経由するものも、本邦と朝鮮政府との計算については、朝鮮首尾料金を洋銀十銭と計算すること。」
[別紙 乙号] [付属書 一]
文書題目 [電線処弁条款に関する公文協定 提議文]
[電線処弁条款에 관한 公文協定 提議文]
書簡でもって啓上します。今般貴我両国間に協議締結した「電線処弁条款」に関し、将来の疑義を避け、且つ一層精確ならんことを期し、次の取り決めをすることが必要と存じます。
一. 朝鮮政府は将来他国の政府または会社等に向け、その国内に電線を架設し、もしくはその国内の電線を管理する権利を許与した時は、日本政府は一つの通知を与えこの条款中釜山・仁川両線に関する規定を取り消し、この両線を再び日本政府がこれを管理することができる。この場合においては朝鮮政府より既に払い入れたる年賦金は日本政府よりこれを返還すること。
一. もし朝鮮政府において各電線の管理を怠り、または相当の理由なくして永く通信を断絶させたときは、日本政府は前項の例によって再び釜山・仁川両線を管理することができる。
一. 朝鮮政府でこの条款第三条の規定に従い雇用すべき日本国電気技術員の員数は、別紙付表の通りであること。
以上各項は既に貴政府の同意を得ておりますが、なお特に公文で御照会に及びます。敬具
明治二十九年二月 日
小村 弁理公使
金 外務大臣 宛
[別紙 乙号] [漢訳文]
文書題目 [照会訳文]
為照会事照得因此次日朝両国議訂処理電線条款期欲将来免疑義庶幾更臻妥確約明下開各節殊為緊要
一. 朝鮮政府設有将国内架設電線若或管理国内電線之権准与別国政府若公司等事則於日本政府只行一文知照即将該条款内所訂之間渉漢釜漢仁両線各節註銷仍応将該両線帰日本政府管理於此時其由朝鮮政府己完分年還款日本政府仍当退還
一. 倘於朝鮮政府管理電線渉于疏忽或並無合理事故遞報阻隔荏苒彌久則日本得照前段所開仍再将漢釜漢仁両線自行管理.
一. 按照該条款第参条所訂朝鮮政府応行延聘之日本国電気技術員人数須依別付表単
以上各節雖己邀
貴政府允同玆特備文照訂即希
貴大臣査照可也為此照会須至照会者
明治二十九年 月 日
[別紙 乙号] [付属書 二]
文書題目 電線処弁条款
電線処弁条款
日本暦明治二十七年八月二十日 朝鮮暦開国五百三年七月二十日
日本国特命全権公使大鳥圭介と朝鮮国外務大臣金允植との間において調印交換した暫定合同条款第三条の趣旨に基づき、京城・釜山及び京城・仁川間において日本政府が架設した軍用電線を処分し、並びにその他電線に関する処置を処弁（＊処理）するため両国全権委員会同議定した条款を次に示す。
第一条
日本政府は明治二十七年中に京城・釜山及び京城・仁川間に架設した軍用電線をその架設実費日本銀貨十万円で永久にこれを朝鮮政府に譲渡する。
第二条
この両線の架設実費十万円を朝鮮政府の負債とし、本条款実施の日より三カ年間据置き、第四年目即ち日本暦明治三十二年・朝鮮暦開国五百八年よりむこう二十カ年に割賦し、毎年日本暦十二月に朝鮮政府より日本銀貨五千円宛を日本政府に払い入れること。
第三条
朝鮮政府は必要な電気技術員を養成し、電線建築・電気通信の業務を適当に施行するに至るまで、この両線の管理、並びに修造の必要に供するため日本政府に照会し、技術員若干名を雇用しこれを各電信局に在勤させること。この雇用年数は本条款締結の日より起算し満八カ年より短くないこと。
第四条
この両線譲受の後は、朝鮮政府にてその国内における各電線の通信を確実に、かつ迅速に取扱い、内外に対し充分の責任を負うことは勿論である。よって適当にこれを管理し、もし破損不通等の事があるときは遲緩なくこれを修理し、相当の理由なく永く通信を断絶させることがあってはならない。
第五条
両線引き渡しの期限はこの条款締結後四ヶ月以内においてなすこと。
第六条
釜山港においては、この電線引き渡しの後においても、日本電信局と朝鮮電信局との間に電線を連結し、電報の授受は総べて電機上においてこれを行うこと。
第七条
明治二十七年中、日清両国開戦以来、日本政府において朝鮮政府より借用し、もしくはこれと共同管理していた京城・義州及び京城・元山間の電線は、釜山・仁川両線の引き渡しと同時にこれを朝鮮政府に返還すること。但しこの返還する線に対し日本政府か嘗て支出した修理並びに複線架設、枝線新設等の費用は一切要求しないこと。
第八条
義州、元山両線においても本条款第参款の例に従い電信技術員を当分傭用すること。
第九条
日本政府の官報は、本条款第二款に記載した年賦償還金の完清に至るまでは、朝鮮国内の各線を通し総べて半価でその通信を取り扱うこと。但し郵送料又は別配達料其他の手数料に属するものはこの限りではない。
第十条
将来日本政府が、日本・朝鮮間発着の電報の欧文一語あるいは日本片仮名七字につきその首尾料を洋銀十銭に低減し、かつ大北部電信会社に釜山海底線経行料を洋銀十銭に低減させた時は、朝鮮政府においてもまた朝鮮全国を通してその首尾料を洋銀十銭に低減すること。
前項の料金低減を実行する場合において、朝鮮と外国との間に発着する電報で、日本国を経由するものも、本邦と朝鮮政府との計算については朝鮮首尾金を洋銀十銭と計算すること。
本条の場合においては両国政府は共に官報半価の権利を放棄すること。
第十一条
明治十六年三月三日締結の日韓海底電線設置条款中、第一条次のように改正する。
第一条 朝鮮政府は日本政府又は日本政府か指定したる会社において、日本領土より朝鮮仁川及びその他必要と認めた開港場の海岸に到るまで海底線一条あるいは数条を設置することを承諾し、その陸揚場より日本人居留地までは日本政府より陸線を架設し、電信局を建て通信の事を取り扱い、その地の電線用の器物は総べて朝鮮政府より輸入税並びにその置場及び電線室の地税を免除すること。
以上の確実なることを証し両国全権委員がここに記名調印するものである。
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