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2018年08月31日05:17

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小説 夏の終わりに 3

小説 夏の終わりに 3
「コーヒーが飲める?着替えたらすぐにコーヒーを飲むからお湯をかけといてくれない?」
 少女に言い置き、俺は敷きっぱなしの布団を上げた。いつもと違って女の匂いがする。少女が横になったのかも知れない。敷布が妙に艶めかしく感じる。
 ヤカンに水をいれ、コンロにかけた少女は、点火する前に思いついたように居間と台所の境にある引き戸を閉めた。俺が着替えると言っていたのを思い出し、気遣ったのかも知れない。
 結局俺は素早く着替えを持って風呂場へ行った。トイレには行かず、シャワーを浴びながらしょんべんをした。水で流しているがら、きっと水洗トイレだ。しょんべんの音もかき消されるだろうし大幅な時短。一石二鳥。
 着替えて台所の引き戸を開ける。
「おじさんトイレは?」
「済ませたよ。シャワーのついでに・・」
「湯船を使った様子が無かったけど、お湯には浸からないの?」
「あぁ、あれは駄目。風呂に入るとお湯が波打つじゃない・・あれ・・眼が回らない?だから真冬でもシャワーだけ・・温泉へ行ってもそうだよ。身体を洗って出るだけ、温泉へ行く意味がない」
 少女は何も応えなかった。寂しげな眼で俺を見、何か言いたげだが、どう切り出すかを迷って口を閉じる。この少女はどんな生き方をして来たのだろう?物おじせず、誰とでも気さくに話し、相手の反応を瞬時に判断する機智を持っている。出過ぎてはいけないという自己抑制と同時に人生を諦めているような寂しさを併せ持つ瞳・・
 お湯が沸いたので、少女と体を入れ替えコーヒーを点てた。少女はレギュラーコーヒー点てるのを初めて見たようだ。ペーパーをセットし、粉を入れて、お湯を静かに注ぐ様を不思議そうに見た。多分まだ喫茶店など行ったことが無く、家でもインスタントを飲んでいるのだろう。
「ほんとならカップを暖めないといけないのだけど・・暑いからね。省略するよ。あ、そうだ砂糖は使う?ミルクは無いけど・・」
 ソーサーにカップを乗せ、居間に運んだ。ちゃぶ台など無い。いつもならコーヒーも飯もパソコンでテレビを見ながらだ。以前はコタツをテーブル代りにしていたのだが、邪魔になるのでコタツは押入れの奥に押し込んだ。畳の上にコーヒーを置き、灰皿を置き、タバコに火をつけながら少女に問う。
「ところであなた・・家出でもしたの?」
 家出なら親に連絡しないとならない。今頃娘が帰っていないことに気づき、心配している時間だ。少女の答えはしかし、予想外だった。(続く)

獅子座クウネル日記獅子座
 晴れではあるけれど、空に雨雲ってのが最近の天気です。昨日もそうでした。洗濯をし、干していると隣のパートのおじさんが「雨がふりだすよ。それで俺は慌てて帰って来たんだが」と声をかけ、急いで自分の部屋へはいりました。僕はちょうど洗濯を終わって干し始めたばかり・・空は明るく、それほどひどい雨では無いだろうと思う間もなくパラパラと(笑)幸いパラパラで済み、洗濯物を軒下に干したまま様子見。
 撮影に行く気が起きず、小説の続きを書きながら一日引きこもりでした。今日は市美展の審査講評会があるので行ってみます。それで刺激を受け撮影する気を起こさないとね。
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