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2018年08月31日02:11

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DVD映画「アラビアのロレンス」★★★★★

アラブの夢は蜃気楼のごとく、
独立という名の被支配は続く
黒い太陽が照りつける広大な砂漠
すべからく歴史は一夜にして砂塵の骸

フォト

アラブ研究家だったイギリス軍少尉ロレンスは、アラブ人の独立と自由のために、対立関係のある多部族を一つにまとめ、オスマン帝国と戦い勝利します。
しかし、それをロレンスに命じたイギリスは、アラブ人の独立を認める気などなく、新たな中東支配を目論んでいたのです。
ロレンスは英国に利用されたのでした。
英国の真意に気づいたロレンスは、首都ダマスカスをイギリス軍より先に占拠し「アラブ国民会議」を名乗ります。
しかし、アラブ人は首都の近代的機能を使いこなすことができません。
水道も電気も止まり、部族同志の争いが再び始まり、あっという間に無政府状態に陥ります。
病院にはたくさんの負傷兵が水も得られず炎天下放置され、最早近代国家の援助を受けざる得ないグローバリズムの現実をロレンスは思い知るのです。
戦勝の英雄ロレンスが夢見たアラブの独立も自由もなく、砂漠に残されたのは大量殺戮という非人道的行為の残忍さだけでした。
恥辱と失意にまみれロレンスは、砂漠を後にします。



〇30年間の夏休み
洋画に夢中だった大学時代、巨匠デビッドリーン監督の「ドクトルジバゴ」「インドへの道」は熱心に見て、史実に基づいた大作映画のスケールに感動し、人間とは何かを深く考えさせられたものです。今も深く心に残っています、
なのに、なんでか「アラビアのロレンス」だけは何度テレビで見ても最初の数分で挫折。
途中で寝てしまうか中座して他のことしちゃうんですよね。
世界史苦手なので、時代背景がわからないうえに、冒頭の登場人物が本筋にどうかかわってるのか全くわからないので・・・
毎回配属されたところと、最後軍から離れるところだけは記憶にあるんだけど・・・(旦那がジュラシックパークで爆睡し、島に行くところと島を出るところしか見てないのと同じだなw)
ところがどうしたことか、世界史オタクの1号がこの映画が大好きで、DVDを買ってたんで、意を決して頑張って見ました。1号の解説つきで。
「第一次世界大戦中、オスマントルコがドイツの支援を受けて、西アジアのアラブ地域をを支配していたの。ドイツと敵対していたイギリスはオスマントルコからアラブを奪いたかったの。そこでアラブ人には、オスマントルコからのアラブの独立自治を約束して戦わせたたんだけど、その陰でフランスには勝った暁にはアラブを分割統治することを密約し、更に戦費を出してくれるユダヤ人にもアラブの土地をあげるよと甘言し、3枚舌を使ってたわけ。この時イギリスの嘘の約束が、今の中東の混乱の一因なんだよね。」
そうか。ロレンスがアラブを率いて戦ってたのは、オスマントルコ帝国だったのね@@;
この映画見た若い頃はそもそもアラブ人がどこと戦ってるのかがまずわからなかったのよね・・・orz...
アッラーがヤーウェなのは知ってたけど・・・「モーゼもシナイ半島を渡った」の台詞が粋だわ〜vv
負うた子に教えられ、30年前の夏休みの宿題をやっと終えた気分です。

〇白いカラス
一体彼の魂は、イギリス人なのか、アラブの民なのか。
自分本来の居場所を探している主人公に感情移入してしまいます。。
きっと答えは、「どちらでもない」のでしょう。
部族の首長だけが着られる衣装を身に纏ったときの、ロレンスの子どものように嬉々とした様が印象深いです。
きっとロレンスはイギリス人の中では変人として浮いていたのでしょう。
だから砂漠の民に憧れている彼は、コスプレしていればアラブ人になりきれる気がして、それが本来の自分に思えてうれしかったんだよね。。
でも彼は、やっぱりアラブ人にはなれないのです。
最初の頃、掟を破って井戸の水を飲んだ男を問答無用で射殺したアリに「アラブ人は残忍で野蛮」と非難した文明人のロレンス。
いつしか狂気を帯びたように残忍で野蛮な殺戮に手を染めてしまうロレンスに、今度はアリが「残忍で野蛮だ」と言い放つシーンが痛烈でした。戦争は人間性を鈍麻させていくものなのでしょうけれど・・・。
そのアリの言葉にショックを受けるロレンスは、どんなに同じ格好で同じことをしてもアラブ人にはなれないのです。
祖国に裏切られ、アラブ人にもなりきれず、野蛮で残酷で復讐をするくせに、そのことで良心の呵責に苛まれるロレンスは、一体、どこの誰なのでしょう。
功利を目的としていないオタクの夢は、対象への興味関心造形は深く純粋なんだけど、功利を目的としている連中には理解されないし利用されるだけなんだよねーー;。

〇サー・アレック・ギネス
とにかく伏線が多くて、何回も見ないと、初見ではわからないのよね。
今回やっと冒頭のバイクシーンとラストシーンの対比や葬式のコメント人物が、本ストーリーのどこに登場したのかやっとわかりました。
テレビでは吹き替えで見てたし、今回も1回目は吹き替え。2回目の後半は、チェゲバラと同じく最後は破滅オチとわかってるので、さらっと字幕ながめようかなと。
そしたらファイサル王子の英語の流暢さにびっくり@@;こんな英語の上手いアラブ人いるのか、とツッコンでたらこの声、あれ?聞いたことある、この声知ってるよ、アタシ!
オビワンじゃん。
ああ、言われればアレックギネスは「アラビアのロレンス」出演してたんだよね。
ファイサル王子役だったのね〜。きゃあああ〜スターウォーズフリークの血が騒ぎました。

〇人間の条件
ロレンス役のピーター・オトゥール、誰かに似てる。ああああ、加藤剛さんにそっくりだーーーー!
大岡越前ではなく、「人間の条件」「杉原千畝」のイメージです。
思えば「人間の条件」も不条理な話でした。戦禍でこの上なく傷ついた民衆にとって、人類の愚かしさ、「不条理」を描き出すことがライフワークだったのでしょう。
そして私たちのライフワークは平和の歌を歌うことなのかも。
「僕らの名前を覚えてほしい、戦争を知らない子供たちさ」

名優加藤剛さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
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