辛うじて先月読んだページ数をわずかながら上回ったか。それでも最後に読んだ『火星年代記』は日付的には８月だったけれど、読了したのが本日午前０時過ぎだったので、先月分に入れさせてもらった。ナイス数もまずますかな…
2018年7月の読書メーター
読んだ本の数：19冊
読んだページ数：5434ページ
ナイス数：127ナイス
https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)
一見して首尾一貫したストーリーが無いようでいて、最後は綺麗に締めくくられるのが何とも言えず不思議。また、著者独特の詩情的な文章が他のSF作品と一線を画しているのが印象的だった。個人的にとりわけ印象的だったのが、火星に降り立った地球人に、火星人が物故した地球人の親近者となって現れる幾つかのエピソード。この話も含めて、本書はSFを超えた宗教的テーマも扱っているということに気づかされる。また、星新一の作品を思わせるな…と思っていたところ、実際星はブラッドベリを愛読していたということで、かなり納得した次第。
読了日:07月31日 著者:レイ ブラッドベリ
https://bookmeter.com/books/614463
■絶望キャラメル
この理不尽極まりない世の中に自分を含めた多くの人間が泣き寝入りを決め込んでいる…この状況を覆すのは無理でも、せめて一泡吹かせてやりたい…正直言ってファンタジーか？というくらいかなりご都合主義でリアリズムにかけるのだけれど、上記のやりきれない思いに悶々としている類の人には清涼剤的な役割を果たすかも？個人的には鷹と冴子のラブストーリーに書き込みが足りなかったのが、ちと残念。それにしても本書の夢二にしろ、島田ってこれといって突出した才能はないけれど、妙なところで能力を発揮するキャラを造詣するのが得意だな…と。
読了日:07月30日 著者:島田雅彦
https://bookmeter.com/books/12881653
■華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
ディストピ小説というわりには、どこか明るく温かみが感じられるのが印象的。後、このての小説にありがちな徹底的な管理体制ではなく、結構緩いのは時代的な背景か、それとも著者の持ち味か？というのが気になる。後、印象的だったのは、主人公の上司ベイティー。本を嫌悪しているわりには、古典への造詣が深いということは、実は密かに愛書家だったのでは？とつい邪推してしまった。そのあたりを突っ込んで書いたら、もっと面白かったかかも？そのベイティーに反旗を翻すシーンにはかなりの高揚感を覚えた。読書の衰退が顕著な昨今に相応しいかも？
読了日:07月29日 著者:レイ・ブラッドベリ
https://bookmeter.com/books/8043290
■近代哲学の名著 - デカルトからマルクスまでの24冊 (中公新書)
この本を読んでいて、今更ながらに自分が哲学科院卒という経歴が心底恥ずかしくなった。「俺は一体哲学科の院で何を学んできたのだろう？」と。それはともかくとして、一通り哲学史を学んだ後で、もう一歩踏み込んでおさらいするためにうってつけの一冊だと思う。とにかく一冊の哲学書につき、十頁強のヴォリュームというのがちょうどよくて、かなり突っ込んだ内容ではあるけれど、結構さくさく読み進めることができる。また、他の人も述べているとおり、この本を足がかりにして、ここで取り上げられている哲学書に挑戦すべき。概ね良書といえる。
読了日:07月27日 著者:
https://bookmeter.com/books/3097058
■笑いオオカミ (津島佑子コレクション)
戦争の混乱の余韻を残す日本各地を放浪する二人の少年少女。そこに戦後史に起こった様々な事件や社会問題を絡め、その中で小さくされた者たちの姿を描き出していく…ここにも作者の実体験が少なからず反映されているが、以前の自伝的要素が強い作品と一線を画しているのは、そのフィクション的要素ばかりではあるまい。そこには自分自身に向けられたところから一歩踏み出して前述の小さくされた者への視点へと拡大していったところに、大きな飛躍が認められる。そして何より、人間の都合で絶滅へと追いやられた狼への眼差しが、切なくて重い。
読了日:07月24日 著者:津島 佑子
https://bookmeter.com/books/12901086
■言葉が鍛えられる場所
誰もがSNSを通じて好きなことを拡散できるようになった昨今において、言葉を鍛えるということはどういうことだろう？そんなことを考えさせられた。スマホを操作して生み出される言葉と先代の詩人が肉筆でそれこそ魂を注ぎ込むようにした紡ぎ出した言葉は、言葉でもその本質は似て非なるものではないか？また、ある程度詩に憧れながら、結局詩にのめり込むことができなかった者として、その道のプロではないながらも、これ程の詩論を書き上げる著者の言葉に対する繊細さに尊敬と羨望を覚える。「言葉よりもヴォイスを」という件に深く共感した。
読了日:07月21日 著者:平川 克美
https://bookmeter.com/books/10988132
■簡潔で心揺さぶる文章作法 SNS時代の自己表現レッスン
いみじくもこうしてネットで文章を書き散らしている者として、かなり気になるテーマ。ただ、本書の内容が参考になったか、というとかなり怪しい。ただ、その本来のテーマとは別のところで楽しんで読んでいたような気がする。ただ、本書で語られる「自分」というテーマは、一考に価する。無くしてはだめ、強調しすぎても、意識しすぎてもよろしくない。個人が抑圧される一方、肥大化した自己意識をネットで晒すという行為が横行する昨今において、自己といかに向き合い、表現していくかは大きな問題。後、俳句作りのノウハウは眼から鱗だった。
読了日:07月20日 著者:島田 雅彦
https://bookmeter.com/books/12700558
■阿呆の鳥飼 (中公文庫)
動物は好きだが、鳥にはあまり興味が持てない者にとっては、いささかとっつきにくい代物…と思って読み進めていたが、角田光代による解説を読んで、自分の読みの浅さに恥じ入ることしきり。ある生き物を自分の命よりも大事とばかりに愛でる一方、ある生き物にはかくも…と言いたくなるくらいに残虐になる。そういう矛盾だらけのことを平気でやってしまえるのが人間なのだ…『阿呆の鳥飼』というタイトルがそういう人間の本質を突いているのでは？という気さえしてきた。また先に読んだ『大貧帳』の借金の原因はここにもあったのかと思うとおかしい。
読了日:07月20日 著者:内田 百��
https://bookmeter.com/books/10892929
■「移行期的混乱」以後 ──家族の崩壊と再生 (犀の教室)
人口減少及び少子化のどこが一体問題なのか？経済停滞、福祉予算の増加…でも、どこか肝心な問題を置き忘れてないか？いみじくも著者が冒頭で述べている通り、著者自身が選択的に自説に都合の良いデータを引っ張り、解説を加えているという側面もあるのかもしれない。しかし、本書で述べられている戦後から今日に至るまでの経済の流れと、家族のあり方の変遷には示唆されるところが大きい。過去に戻ることはできない。しかし過去を参考にし、得るところはあるはずだ。著者のいう移行期的混乱の終息を見届けることができないのは、幸か不孝か？
読了日:07月18日 著者:平川克美
https://bookmeter.com/books/11857015
■大貧帳 (中公文庫)
金は世間の回りものか？人の心を映す鏡か？それとも必要悪か？不浄な物か？殊借金においてかのバルザックに対抗できるのはこの人だけでは？と思わせる百�寮萓犬旅覯�なまでの借金遍歴には絶句する他はない。借金を返すために借金を繰り返すというまさにマッチポンプ的な発想。現代であれば、『ウシジマ君』的な展開に巻き込まれてもおかしくないのに、何となし生き延びていられるところが何とも言えず素敵である。これだけ借金で苦しみながらも、借金を止められないというのは、やはり一種の病気だったのか？あまり関わらないほうがいいかも？
読了日:07月18日 著者:内田 百��
https://bookmeter.com/books/12301156
■もうひとつの十字架の神学―二一世紀の宣教論
かつてキリス教の主流であった西欧諸国でのキリストよう離れが著しくなる一方、非西欧地域でキリスト教が広まっている…そんな昨今において、十字架はいかなる意味を持つのか？西欧国の神学者は果たして、十字架の普遍性を十全な形で説明できるのか？そうした問題について考えるためのヒントが本書に書かれている。とりわけ十字軍という典型的な例が示す通り、十字架が時として、負の歴史をも纏ってきた。それでも、十字架はキリスト者にとって欠かすことのできない象徴である。まずは地に足をつけ、静かに祈り考えることから始めるしかないのかも…
読了日:07月16日 著者:マーク W.トムセン
https://bookmeter.com/books/2821096
■イエス入門
確かにイエスについての情報をコンパクトにまとめてあるが、あまりにコンパクトすぎて、初心者向けとは言い難いのでは？というのが正直なところ。その内容の大半が、福音書にある程度通じていないと理解できないものだし。また、注釈もかなり不十分。巻末の読書案内は未邦訳が大半で、日本語版独自の案内を付記したほうがいいのでは？と思わされた。ただ、その一方で、これまで得てきたイエス像がより明確になったのも確か。パウロが必ずしもキリスト教宣教の第一人者というわけではないという指摘に目から鱗。この辺りは議論と研究を要するかも。
読了日:07月12日 著者:リチャード・ボウカム
https://bookmeter.com/books/6830929
■終末を前にして―ジュリアン・グリーンは語る
インタビュー集というには、かなり重たく読み応えのある一冊。アメリカ生まれでフランスに帰化し、プロテスタントからカトリックに改宗したという複雑な経歴を持つグリーンの、文学作品では垣間見ることのできない顔が伺える。この時点で様々な危機を抱えていたキリスト教。本書から早４０年の間に起きた更なる危機を考察するうえで本書は何がしかの示唆を与えるのでは？また、何より自身の信仰のあり方には一カトリック信者としてみにつまされるところが少なからずある。それから、同性愛者としての自分について全く触れていないのが逆に意味深長。
読了日:07月09日 著者:ジュリアン・グリーン,マルセル・ジュリアン
https://bookmeter.com/books/5274063
■今起きていることの本当の意味がわかる 戦後日本史 (講談社+α文庫)
他の人も述べている通り、かなり左がかっているのが気になるが、スリリングな内容と平易な語り口に引き込まれてほぼ一気に読了。こうして日本の戦後史を振り返ってみると、結局日本には本当の意味での民主主義と個人主義は根付かなかったのでは？という気にさせられる。その時々で社会運動の勃興が見られても、最終的には尻すぼみ。お上の甘い言葉に乗せられても、結局いいように使われていただけということを繰り返しながらも、大方の国民は何ら学習しない…本書の内容が全て正しいとは思わないが、現代を読み解くうえで、やはり有用な一冊。
読了日:07月08日 著者:福井 紳一
https://bookmeter.com/books/9798339
■霊性神学入門
後書きで著者が示唆しているように、霊性について体系的に述べたというより、キリスト教関係の著作で霊性について触れた箇所を取り上げて解説したという趣が強い。そもそも霊性という言葉は比較的最近になって使われるようになった言葉で、その定義もいささか曖昧。だから読者は自分なりの霊性をイメージしていく他はない。また、本書を読んで改めて、キリスト教のアバウトさを認識。なので、一層霊性についての厳密な定義などほぼ不可能であることが予想できる。しかし、時に真逆な様相を見せても、何がしか通底するものがあるのも否定できない。
読了日:07月07日 著者:小高 毅
https://bookmeter.com/books/10159537
■「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ (シリーズ22世紀を生きる)
物事にはすべからく限界と終わりがある…誰もがわかりそうなことなのに、多くの人がその真実から目をそらそうとする。そして何よりこの国の舵を取っている人達が率先してそのことを無視する。お偉方が変わらないのなら、自分達が少しずつでも変わっていくほかはない。本書で書かれていることを全て鵜呑みにして、小商いを実行しようというのではない。本書で現実を読み取るためのヒントを得て、それを実生活に反映していくだけで、何かが変わるきっかけになると思う。個人的には著者の栄枯盛衰（？）の物語がとりわけ興味深くかつ重かった。
読了日:07月06日 著者:平川克美
https://bookmeter.com/books/8121209
■聖なるものを訪ねて
初出の時期にかなり幅があるのにもかかわらず、それでも著者独特の文体というか、語り口はほぼ一貫しているため、殆ど違和感を覚えないというのは、さすがというべきか。時々内容が今ひとつ入ってこず「あれ？」と思うこともあるが、それも著者ならではの持ち味だろう。また、この年になってからこそしみじみと共感できることが多くなったことに、我ながら唖然とする（笑）。表題作はキリスト教の聖画についてのエッセイで、未信者だからこその視点が興味深く読める。宗教的センスがありながらも、未信者で通してきたという立場が故の妙というか…
読了日:07月04日 著者:古井 由吉
https://bookmeter.com/books/398206
■復路の哲学ーーされど、語るに足る人生
時間の逆には戻せない。だが、今となっては忘れ去れてしまった多くのことを振り返ることはやはり必要ではないか？というごく当たり前のことを気づかせてくれる。一見、とりとめのない雑多な内容。しかし、そこにある一貫した著者の思いが底流していることが容易に見て取れる。失われた昭和の風景。それに応じるかのように自由が効かなくなってくる我が身体。記憶力も落ちてくる。しかし、そうなったからこと、伝えたいこと、残しておきたいことがある。そうした思いは喫茶店開店に一つの結実を見たのではないか？機会があればぜひ立ち寄りたい。
読了日:07月02日 著者:平川 克美
https://bookmeter.com/books/8977819
■ローカリズム宣言―「成長」から「定常」へ
経済成長はいずれ行き詰まる。まだ糊代があるといくら言い募ったところで、未来永劫続く続く可能性はほぼゼロである。だから、今のうちにこの動きに歯止めをかけなければならない。例によってその内容の大半は、既に読んだ著作とかぶっているけれど、それでも読まずにはいられない…そんな吸引力を覚える。それは抜き差しならない昨今の状況に対するやり場のない憂がそうさせるのだろう。著者が指摘する現状の酷さには目を覆いたくなるばかりだが、それでもわずかながらでも希望の萌芽がある…とにかく地に足のついた身の丈にあった生き方を！！
読了日:07月02日 著者:内田 樹
https://bookmeter.com/books/12453678
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