18941204 NO2497 日本が兵を引くと東学が京城を支配し現王室はつぶれる。・・・
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駐韓日本公使館記録 5巻 七. 内政釐革の 件 二 (10) [内政改革に関する貸付金に対する上申]
文書題目 (10) [内政改革に関する貸付金に対する上申]
文書番号
発信日 明治二十七年十二月四日 ( 1894年 12月 04日 )
発信者 井上 特命全権公使
受信者 陸奧 外務大臣
(10) [内政改革に関する貸付金に対する上申]
安広秘書官を帰朝させた意見書 控
過日通報したように、朝鮮内政改革に関し十一月二十日、二十一日の両日、内政改革要領二十ケ条を奏上し大君主よりすべて採用しようとの確答を得、大院君ならびに王妃も今後は決して政治上に口出しをしないことにし、大君主は近々宗廟に向い内政改革の実を挙げることを誓うはずでございますが、いよいよ実行の段階に至っては、君臣一致してうまく改良の実績を挙げ、躓いたりすることなく進めるか、いささか疑いを容れないではおられない。
その詳細の事情は書面で述べることはできないことなので、安広秘書官を帰朝させますので詳細を御聞き取り頂きたい。
韓廷の今日の内情から推察すれば、現今の有様では到底内政改革の実績を挙げることはできないと断定してもまず大過はないだろう。そうだとすれば今日より予めその事態に対応する将来の対韓方策を確定しておくことが必要であろう。いずれにしても現今の機会に乗じ、朝鮮における我が帝国の位置を強固にすることが上々の政策であると確信している。そして軍略的関係、ならびに実利的関係での我が帝国の立場を強固にして置くことは、韓廷に対し最終手段を取ることが止むを得ない場合には最も必要だと考える。次にこの問題についての所信を述べよう。
一. 京城より釜山、京城より仁川、京城より義州に至るまでの鉄道線路を年限を定め日本政府または日本国民の手で建設するという約束を結ぶ事。
一. 電信線は日清講和後と雖も年期を定めて引き続き日本政府が管理する約束を結ぶ事。
この二ケ条は仮条約を本条約とし、多少の修正が必要である。
一. 軍艦停泊に便利な重要な土地を借り受ける条約を締結する事。
一. 古阜 (若しくは木浦) 、大同江を開港し居留地を設けさせる事。
一. 三十万円を海関税を抵当として貸与し、税関監督として日本人を招聘任用させる事。
本項の金額は慶尚道飢饉救助のため朝鮮政府より海関税抵当で貸与を申し込んだものである。しかしながら海関税は別紙の通り既に抵当として他の必要に備えた金額二十四万円余がある。もし海関税の抵当権を我々だけで独占しようとするなら、この負債を償却させ我々に税関の特権を専有するのが一番だ。この場合には三十万円の外なお二十四万円余を必要とするので合計五十四万円余の総額となる。三ケ年元金据置、四ケ年目より返却させる (年利一割位)。ただし本項元利金完済となっても次の負債の償却が終了しないあいだはなお関税でその抵当に充てる事。
一. 銀貨又は地金で五百万円貸与の事
全羅・忠清・慶尚三道の租税でその担保に充て、この元利金払済まで三道の税務その他地方事務の監督者として各道毎に日本人を招聘任用させる。ただし元利は年割によって三道租税の内より償却し剩余は朝鮮政府の歳入とする。
一. 前項借金の抵当として三道租税の外、なお平壌の石炭坑を採堀させる事。ただし日本技師をヲ招聘任用させその採堀を監督させる。
一. 各鉱山を試掘させるため日本技師三人を招聘任用させる事
以上の各項の内、韓廷に対し金銭を貸与しておくのは朝鮮における我が実利的関係を強固にするための一手段に他ならない。これまで我が国は朝鮮を助けて、その独立を強固にし、内政を改革しようと主張してきたが、これは皆単に名目を隣好の関係に借りるに過ぎない。このような状況では朝鮮に対する我が地步に強固を欠き、諸強国に対し十分な口実を持っていると言うことはできない。
英国がエジプトに対し十分に干涉を為すことができる口実はどこにあるか。ほかでもない、英国がエジプトに向かってその資本を投入し実利的関係上その地步を占めているからである。
だとすると我が国もまた朝鮮に向かい十分地步を堅め、内政干涉の口実を設けて置こうとするならば、鉄道と言い、金銭貸与と言い、この際朝に対し実利的に我が地步を堅めて置き、財政上の関係から他の関係の及ぼし、干涉の口実を作っておくことが緊要だと信ずる。
こうして軍略上、実利上、朝鮮国における我が地步を強固にして置き、一方では韓廷を励まして内政改革に着手させるが、彼は再三我が誠実な忠告に背を向け内政改革を実行することは出来ないと認定する時は、止むを得ず最終手段を採る必要が生じるだろう。
すなわち韓廷に向い忠告の口を閉じ、東学党征伐の為め派遣している我が軍隊を引揚げ、公使館及び領事館、また我が居留人民保護として京城にニ千人、仁川に六百人、釜山に四百人の兵士を駐在させ拱手傍観するならば、東学党はいきなり四方より京城に侵入し京城は乱麻の有様に陥るだろう。
この場合に至ると、彼自ら膝を屈して我が助けを哀求するか、そうでなければ李氏も閔氏も匪徒によって蹂躙され自減することになるだろう。この機に乗じ李氏の血筋の人物を立て、朝鮮の独立を助けるため内政改革を図るならば、その名目を正しくしてその実を挙げることは難しくないであろう。
これが私が採ろうと考える最終手段で、韓廷が内政改革上我が忠告を拒絶した場合において取ることのできる唯一の手段だと確信する。
以上述べた所について予め廟議を決定されることをお願いする。そして私の提案に対しなるべく廟議決定の迅速をお願いするのは日清事件終結前にすべて朝鮮政府との前に述べた条約を締結することが最も緊要であるという理由は、殊更私の弁明を必要としないであろう。
明治二十七年十二月四日
井上 特命全権公使
陸奧 外務大臣 殿
[別紙 一]
文書題目 [海関税担保 借款表]
元高 払残金高
同順泰より借入(年七分二厘)仁川税関収入より支払 100,000両 72,500
同順泰より借入(年七分二厘)釜山税関収入より支払 100,000両 77,000
小計 200,000 149,500
円銀に換算 213,571
香港上海銀行より(年九分)仁川税関収入より支払 50,000弗 28,000
総計 241,571弗
[別紙 二]
文書題目 細目の備考、安広帰国の節本人に渡す
細目の備考 安広（＊安広秘書官）帰国の際本人に渡す
一. 海軍の要求に拠れば、借用しようとする碇泊地は長さ十哩（マイル ＊16Kｍ）、�埃携�哩ばかりである。これはあまりに広すぎはしないかと思う。
ほか（＊の国に、か）に貸与を禁ずる約束は困難ではないか。
借用地の（＊朝鮮）人民並びに財産はどうするつもりなのか。
一. 三十万円借用の事は金宏集、魚允中から相談があった。魚允中は税関を抵当とすると言う。金宏集は全羅道等の租税を抵当とすると言っていた。
一. 五百万円は銀貨または地金で貸与し、紙幣発行の準備金として必要なものである。六分割でおよそ八百万円の紙幣を発行できる見込みである。先に魚允中は不換紙幣発行の事を話していたので、これは貿易上有害なので日本政府は勿論外国も不同意であろうと答えておいた。
この契約を締結すると同時に付随の契約を結び、
(一) 紙幣発行・銀貨鋳造等はすべて日本人に監督させ
(二) 韓銭も一定の割合を付け今日のような上がり下がりを無くさせる。
(三) 紙幣発行、銀貨鋳造はすべて契約を結んでいる銀行に取り扱わせるつもりである。
一. 日本紙幣は当地で兌換の準備をしておき、朝鮮紙幣同様の価値で通用させるつもりである。
一. 第一、第二の借金に関し、大体の契約は日本政府と朝鮮政府と結んだ上で銀行に契約させるつもりである。契約をする銀行は「第一銀行」が他の銀行より都合がよい。 (現時三港関税を取り扱っているため)
一. 八百万円の紙幣を発行したならば、来年租税徴収までおおよそ五六百万円くらいで歳計を償うのに足る見込みである。この余裕を以って平壌の石炭坑を採堀させ、また他の鉱山の試掘に着手する。
一. 閣議決定の上は金銀貸与の契約案はすべて私に委任されたい。ただ大体の方針を示されるくらいはよい。
一. 決定次第渋沢か、岡田か、原六��か、日本銀行の重役を至急派出してもらいたい。 (但し渋沢が一番よい)
一. 東学党はなかなか撲滅し尽くすことは難しく飯上の蠅のようなものである。追ってもまた集まって来る。ただ大院君、李�沛暗�が人を遣わして九月頃扇動したので一層その気炎を増している。またこの頃は閔族がしきりにこれを利用しようとしている兆候がある。王妃も内宦の手を借りてこれを扇動しているとか聞いている。内政改革にて人員を削減したならば、そのなかから多少は東学党に加入するものもあるかもしれない。
一. 和城（＊？）を買われる事は軍略上必要である。 (別紙) 和城の下に兵営を建設するつもりである。
一. 韓廷で日本の政党に依�鬚靴茲Δ箸垢觴圓�あるとのことなので御注意が必要である。
一. 閣議決定の上は可否を電報で通知の事。ただし可決したときは技師 (鉱山) 二名派遣の事。
一. 外務省より建築計画に異存がないならば直ちに契約する事。
一. 先に大君主に差出していた二十ケ条を引き戻すことを照会したところ君臣共に色を失っているとのこと。
[別紙 二] [別紙 二の 付属 一]
文書題目 [七月 二十八日付 大院君・ 李昰応の箕伯あて親書]
日前付諺覽否
現今宗社安危一時為急
日望天師之東援
頃聞大隊陸續出来
此誠再造之秋也
伏乞上天厚助保我宗社殿宮
廓清奸党
付日売国之徒
極出眉急血祝血祝
幾位大人出来未能確知
名片三剪呈台
須袖交為盻此摺二片亦為同照両西新伯非倭所薦
兵使出自日党之手竝以此意告訴再乞
七月二十八日
老石生
此紙 台袖秘炤諸公即丙勿漏々
（＊私訳）
先に送ったハングル書簡は受け取られましたか。 今国家が一時緊急の時を迎え、毎日天師の東援を望んでおります。この頃聞こえるところによれば大部隊の兵力が続々と出征しているとのことで、これは真に再び生き返ることができる時を迎えているようです。 したがって上帝が私たちの宗社・殿宮を保護し、日本人に追従して売国行為をする奸党を粛清して、急いてこの国を救済することを血の涙を流しつつ切実に望むところです。
そして何人の方々が出征されたのかを正確には知らないので名刺3枚を貴方に送っておくので大事に保管して修交してください。
そして名刺2枚を両西（＊平安道・黄海道）の二人の新任道伯にも共に見せてください。 このお二人は日本人が推薦したのではありません。兵使だけが日本党の手から出た者であり、このような意をよく把握することを望みます。
7月28日
老石生
この手紙は貴方がよく保管して諸公に秘密裏に見せ、その後は火に焼いて漏洩しないようにしてください。
[別紙 二] [別紙 二の 付属 二]
文書題目 [王の箕伯宛 伝教]
箕伯 台兄大人
傳曰近聞悖類出沒京��或称密旨或称分付扇動匪類聴聞駭然雖有朝官行止殊常者一々拿獲厳査登聞以解衆惑俾絶乱萌事廟堂三懸鈴行会于各該道帥臣
（＊私訳）
箕伯 台兄大人
伝教すること、「近頃聞いたところによれば悖類（ハイルイ ＊裏切り者）が各地に出没して、あるいは密旨がおりたといい、あるいは命令が降りたと称して匪類（＊東学たち）を扇動しているといい、これは聴くだけでも驚くべきことである。
たとえ朝廷の大官であっても、行動が怪しい者があれば全部捉えて調査して連絡し、大衆の疑惑を解いてやり、また、乱の原因を根絶するようにするように、廟堂から三懸鈴に各道の師臣にしらせよ」
[別紙 二] [別紙 二の 付属 三]
文書題目 [七月 二十八日付 宮内大臣 李載冕 名義の 箕伯宛 大院君の親書]
箕伯 台節
向日以諺修敬間経俯覽否外而日兵擁門内而凶徒逼朝
宗社凜如一髮生民皆陥塗炭此時
殿宮保護弟家三代冒險一心擔着此無異隻手�嘉�
惟望天師如穉兒之慕慈母
一刻為急伏乞皇天默佑
幾位大人出東未敢確聞玆呈名片三剪乞
台兄随位另交藉暴
此忱是荷々此頌
台祉
七月二十八日
冕弟 拜首
此紙従容另炤諸公即々付丙勿煩々
（＊私訳）
先日のハングルの手紙は確かに受け取りました。外では日本兵が門を防ぎ、中では凶徒たちが朝廷を圧迫し、宗嗣は危機一髪に置かれており、国民らは全部塗炭の苦しみに陥っています。 このような時局に殿宮の保護を私の家系3代が危険を押し切って一心同体で受け持っていますが、これは一つの手で空を支えるのと違わない事態です。 望むのは天師の援兵だけであり、あたかも幼い子が母を懐かしがるようなものです。一刻を争う事態ですので上国の助けを望みます。
そして何人の方々が出征されたのかが正確に分からないので、今名刺3枚を差し上げるので、台兄がその方に手渡して私の心も伝えてもらえば感謝します。
7月28日
冕弟拝首
この手紙は別に諸公にだけ見せて即時焼却し煩わしいことが起きないよう願います。
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