2018.07.26./2023.11.27.
モルモン書について
モルモン書の本文は紀元前６００年頃、バビロニアによる捕囚直前のエルサレムで貴金属・宝石商を営んでいたと思われるリーハイと言う人物が生ける神から警告を受け、その家族が密かにエルサレムを脱出する場面から始まります。その後、神から啓示を受けたリーハイはイシュマエル一家を誘い、神の手に導かれて８年間も荒野を旅しました。そして、丁度預言者ノアが神から船の建造方法を教えられたように、四男のニーファイが神からその造り方を教えられ、こうして自分達で造った船に乗り込んでアメリカ大陸に着いたのでした。
エルサレムを脱出した当初、リーハイには４人の息子がいましたが、後に二人の弟、及び妹も誕生していることから、その母親の年齢もある程度想像がつくでしょう。この記録の先駆けである四男ニーファイの記述から察すると、二人の兄は典型的な良家のボンボンであったのに対して、ニーファイは、研究熱心で洞察力に優れ、また勤勉で非常に信仰心篤い十代半ばの若者であったことが分かります。然し、この兄弟間の価値観の大きな違いは後々、不和、争い、分裂、民族間の戦争へと発展して行くことになるのでした。
こうして代々約1000年間に渡って記録されたこの版は、5世紀の預言者・記録者であったモルモンと言う人物の手によって抄録編纂され、一つの例外を除く１５の主文書によって構成されています。それは丁度、今でこそ一般に普及している聖書が、紀元397年のカルタゴ会議で、「ヨハネの黙示録」が追加承認されて現在の６６巻構成となったのに似ています。然し、モルモン書が聖書と全く異なるのは、聖書が現代に伝わるまでには多数の人の手による写本が繰り返されて来たこと、またそれ故に故意の加筆や誤写、脱落、改竄により、本来の教えが正しく理解出来なくなっている箇所が多数あるのに対して、モルモン書は原著者が金版に刻み込んだ文書を直接英訳したものであることから、その教義が極めて正確に理解出来る点です。
預言者エゼキエルの記録にある通り、聖書がイスラエルと呼ばれたヤコブの子孫ユダ族の系統に属する記録であるのに対して、モルモン書はヨセフの系統に属する記録であることはその本文から明らかであり、そして使徒ヨハネが記録した主イエスの言葉「私にはこの囲いにいない別の羊がある。私は彼らをも導かなければならない。」と言われたのは、アメリカ大陸に移住していたこのモルモン書の記録の民だったのです。
古川正義 記
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