間抜けなコッペパン

朝のコーヒーはたまんないすね

駅前の喫茶店

入れ替わり立ち替わりと

客の出入りが絶えない

そこへ…

一際目立っ

ニーさんが

今日わ朝から暑いのに

ばっちりスーツネクタイ

巨人の星に出てくる

花形満ほどでもないけど

前髪チラッと垂らし…黒縁眼鏡

どこから見ても

仕事が出来る完璧な若者

飲み物と

片手に持った

ホットドッグがまた絵になる

劇画の世界だね

この男に

世の女性

みんな持っていかれるんじゃあねーの

と…思っても

人間…一寸先は闇だね

あれほど完璧な

ニーさんが

持ってた

ホットドッグの


中身のソーセージが

スルリと抜け落ちた


笑っちゃあいけないけど…

申し訳ない…笑いました…下向いて

さあ…店員さん

どうするかな？って見ていたら


マニアル通り…見て見ぬふり


現代野球規則なら

リプレイ判定って手もあるんだろうけど

ニーさんも運が悪い

席に着いて

コッペの端をひとかじり

中身のソーセージには

歯形も付かず無傷で

ポロリと床に

ニーさん

うらめしや

落ちたソーセージを

足を組み替えながら

よそのテーブル方向に転がした

間抜けは俺じゃーねーよー

いわゆる現実逃避ってやっである

エリートサラリーマンがよくやるあの行動

中身の抜けた

間抜けなコッペをほうばる姿は

たった今

たった今僕が見た

あの劇画の若者から

彼はコミック漫画の主人公に…

おいおいニーさん

落としたソーセージ

俺んとこに転がすんじゃーねーよ

確かに…僕なら似合うけどね