繰り返すけど、誰が予想した？

いやいや、この結果は予想できないね。

結果は負けだけど、内容が良かった。日本サッカーの真髄を見せた内容で、今後の方向性に大きな影響を与えると言ってもいい。


日本は、前半から積極的に攻めの姿勢を見せる。前線からパスコースを丁寧に潰して出し所がない状態にして、ベルギーの攻撃を始めさせない。GLと同じく体を張った守備と合わせてボールを拾いまくり、拾ったボールは細かく繋いでサイドから攻め上がる。それでも無理してクロスを上げる事はなく、逆サイドに振ってチャンスを伺う点は日本らしいと言えるかな。

FIFAランク3位のベルギーの攻撃の圧力はすごく、ガンガンシュートを打たれますが、シュートコースをしっかり潰してたのでシュートブロックが多く枠内に飛ばす事は少なかったと思う。反対にベルギーのディフェンスは、サイドからの攻撃やサイドチェンジを嫌がった。それに大迫に当てたボールをことごとくキープされたので、やりづらそうにしていた。

イメージとしては、ガッツリ攻めるベルギーに、粘り強く守ってじっくり攻める日本という感じか。



そんで後半開始早々に、柴崎のスルーパスに反応した原口がワンフェイント入れて正確なシュート。見事、反対のサイドネットに突き刺して先制に成功。ベルギーの守備が軽かった事もあるけど、あの距離を縦に一本入れられるのは中田英にそっくり。原口も長い距離を走った上でのシュートで素晴らしかった。

これだけでも十分に驚きなんだけど、続く7分にセカンドボールを拾った香川が敵を引き付け、中央でパスを貰った乾がゴラッソで追加点。ここもベルギーの守備は軽かったね。誰も寄せに行かないし、あんな簡単にミドルを打たせちゃいけない。開始5〜10分が大切と言うけど、ベルギーは後半開始にふわっと入ったのがまずかったな。


でも、サッカーにおける2-0は危険なスコア。ポーランド戦みたいにずっとボールを回せれば良いけど、ノックアウトステージでベルギー相手にそれは無理。そんな中、前半と同じく辛抱強く我慢して我慢するも、残り20分となった所で失点。これが何とも言えないアンラッキーなゴール。セットプレーのクリアが高く上がり、相手がヘディングで中に戻したボールがなぜかゴールの方へ向かいバーにかすってゴールに吸い込まれたもの。失点もそうだけど、こうしたラッキーゴールが生まれると流れは変わるし、息も吹き返す。現に5分後に左サイドを崩されて、途中交代で入ったフェライニに打点の高いヘディングを叩き込まれたし。


日本は残り10分で本田を投入し、勝ち越しを狙う。その本田にタメを作った香川からエリア内にスルーパス。うまく反応してシュートを打つがブロックされる。ベルギーの圧力に耐えつつ少ないチャンスを狙い続け、中央35mほどの位置でFKを獲得。ここは本田の距離で、否が応でも期待が高まる。そして放たれた無回転シュートはブレて落ちながら枠内を捉えるも、GKに弾かれてしまう。決めていた間違いなく神様だった。

最後は、CKから素早いカウンターでトドメを刺される。かつてフランス相手に日本が見せた素晴らしいカウンターと同じく、GKからデブライネにパスが通った瞬間に失点を覚悟するほど。ゴール時の時計は後半48分58秒だったので、アディショナルタイム4分ギリギリでの失点。何とも言えない感情が沸き起こるのは当然。




選手の論評は、良くやったとしか言えない。

GK川島は後半の危険なシーンを良く止めていた。失点シーンはGKとして対処の仕様がないものばかりで、最後の最後で良いプレーをした。

DFの吉田、昌子は、ルカクをカバーしつつアザールを初めとした攻撃陣を止めていたのは賞賛に値する。セカンドボールも拾わせず、後方から丁寧にボールを繋いでいた。ただし、自陣深くでボールを保持しすぎるのはどうかな。一つのミスでビッグチャンスに繋がるし、特に前半はセーフティに行って欲しかった。

酒井宏は原口と上手く連動して、強度の高い守備とセカンドボールを拾いまくった。もう少し攻撃面を見たかったけど、今日の相手じゃ無理かな。長友は、香川、乾と左サイドで良い距離感でボールを回していたし、大きなサイドチェンジからうまく攻撃に繋げられた。ディフェンス面でも、いつも通りにしつこく強度粘り強かったね。


MF長谷部は、相変わらず危険なシーンをフォローして後方を統率していた。クラブで皇帝と言われるだけあり安心感が違ったね。柴崎は、中田英ばりのスルーパスで先制ゴールをアシストし、ディフェンス面でも危険な芽を次々に刈るも、ショートコーナーから簡単にボールを奪われてカウンターを受けたのは頂けない。そこから生まれたセットプレーから失点しており、GLからチーム全体にこういうミスが散見していたのだから問題と言わざるを得ない。

原口は、今日も全力プレーで守備面で貢献するとともに、見事な先制点で（いろんな意味で）世界を驚かせた。同点にならなければ交代はなかったと思うし、高い評価を与えて良いと思う。香川は、開始早々にファーストシュートを放って宣戦布告をし、大迫に当てたボールを受けて右に左にボールをはたく。アタッキングサードでセカンドボールを拾う回数が多かったけど、スペースがなく、シュートも突破も難しかった。まぁそれが乾の追加点に繋がったんだけど。後半にリズムが悪くなったら下がってボールを回す点も印象が強く、10番らしく試合をコントロールしようとしたのは評価できる。

乾は、香川、長友とトライアングルでチャンスを伺い、積極的な仕掛けを見せた。前半から完全に相手は嫌がっていたね。コースを狙った無回転の追加点も素晴らしく、なぜ今まであまり代表呼ばれなかったのか不思議なくらい。

FW大迫は、クリアボールを収める、当てられたボールを保持して繋ぐ、繰り返し動き直して隙を作る、と満点に近い評価。コンパニには、ことごとく勝って困った時に預けられる存在になっていた。得点があれば満点なんだけどな。

本田は、勝ち越しを狙って投入され、早々に香川からキレイなスルーパスを受けるも相手DFに良く守られた。アディショナルタイムのFKも誰もが期待を込めたし、枠に飛んでいるんだけどGKに弾かれた。後方の守備には積極的に戻ってたし、途中出場の及第点は与えられる。

山口は、もう少しらしさを見せて欲しかった。結果的に入ってから10分で失点しているわけだし、何も出来ないまま終わった感がある。



日本としては、やりたいサッカーで、世界トップクラスに、W杯の決勝Tで苦しめた。力関係は完全にベルギーの方が上で、日本は劣勢に次ぐ劣勢だったが、残り20分でスコアは2-0。今大会を象徴する内容。しかし、サッカーにおいて2-0は本当に危険なスコアで、次に失点した方に流れが大きく傾く事が本当に多い。結果としてその通りになったわけだけど、最初の失点は本当にアンラッキーなゴールだった。それだけに悔しさが残る。一方でサイドチェンジを多用してチャンスを作れたし、攻撃面でも十分に通用する所を見せられた。今後の日本サッカーの基礎はこれで良いと思う。


ただ、2-0からの戦い方は考える必要があるし、もう1点を取りに行く際の駒が不足していた点も見逃せない。準備期間不足という事もあるし、GLではコロンビアに助けられたわけで、まだまだ世界は遠い印象がある。もちろん、近いか遠いかは個人差があるけど、少なくとも日本サッカーの方向性が確定できて、日本人監督でも問題ない事が分かった点は、日本サッカー界に大きな意味があると思う。

前回大会と同じく、自分たちがやりたいサッカーで挑んで、今回は結果を残せたんだから、選手は誇って良いでしょう。お疲れ様でした。また4年後に、同じ場所で会いましょう。






日本、ベスト16の壁超えられず…2点先行から悪夢の逆転負け、ベルギーが8強進出
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