先になぜ「幻の」なのか、早々に理由を先に書いてしまうと、この独演会、本来は2時間くらいかけて3席やる予定だったのだが、決まったのが割とギリギリのタイミングだったらしく、この道楽亭で開催する会の月単位でのチラシ(Webに掲載されるスケジュールにも最初にその画像が表示される)への掲載が間に合わなかった。もともと、ここでの会の中でも上方落語についてはあまり集客が良くない。まーそりゃそうだよな。「ザ・パンダ」とかが活躍していた頃と違って、今の上方落語家で東京方面でタレントとかで名前を売っているような人がもうほとんどいないし、そもそも「今日出る人はどういう位置づけの人なのか」という情報が江戸落語以上にないから、一見さん自体飛び込みづらい。しかも、どうも会自体のチラシも行き違いがあってあまり配布できなかったらしく、けっこうお笑い関係は未だにチラシ紙媒体での宣伝が一番有効なんだけど、それも難しかった様子。江戸落語の人だと自分の出るほかの回で配布できるけど、それもできなかったし。
結果。あたしが会場に着いたのが開演の15分ほど前で、それでも二人目(,,ﾟДﾟ) で、結局開演時に4人までは増えた(結局、終演時には6人まで増えた)んだけど、そこで団朝さんから「正直、これではお客さんもつらいでしょうから、それでも当初の予告通りの木戸銭でちゃんと3席やるか、本日は木戸銭なしで軽めの話1席で後は懇親会にするか」という提案をされた。うーむ。いや、あたしはどっちかというとこういう状況になると却って燃えて「こういう日こそ最高のものを演じて、今日来た客が次も必ず来るようにしてやる」というタイプの演者が好きで(達郎とかまさに初めて全国ツアーできるようになったときの状況がそうだったというMCが定番だし(,,ﾟДﾟ))、観客数なんてあんまり気にしないんだけど、こればっかりは演者それぞれで、ある意味演じるのに躊躇し始めている演者に無理にやってもらっても、そりゃあプロだから木戸銭に見合うものは演じてくれるだろうけど、まぁねぇ、という感じで、結局、観客(その時点の4人)の総意で、木戸銭なしの1席のみということになった。という感じで、まぁ、ノーカウントというわけでの「幻」なわけです。
で、その1席は「短命」という、江戸でも演じられることのあるネタ。初めてのつもりだったけど、演じているのを聞いているうちに、あれ、団朝さん、前にも道楽亭で聞いたことあるな、というのを思い出した。たぶん、九雀さんの会のゲストの時。うーむ、すげー申し訳ないな、芸名とか顔とかが全く頭に残っていないのは(,,ﾟДﾟ) 芸風は噺をかっちりとやるタイプ。ただ、これは個人的な見方なんだけど「おかみさんが機嫌悪く怒っているのが本気で怒っているように演じている人は、基本的におもしろい」と思っていて、今日の話はまさにそうだった。
で、懇親会も、いつもは道楽亭で奥様が作られる料理なのだが、直前まで会自体もやめるかもというのがあったようで、近所のやきとんやに移動しての呑み会に。
割と収穫だったのは、米朝師匠の落語を演じる時のマイクやモニターからの戻りへの考え方で、割と生の声にこだわっていたという逸話。なんでも、400人くらいのキャパまでの会場ならPA使わずに生声で演じて、それによって観客の集中を集める、ということらしい。音楽のライブをやったことあると、モニターの戻りがないというのはけっこう演じるのが恐いんだけど、逆にその戻りがなくてもちゃんと演じられる技術があるということなんだろうなぁ。
席の周りが落語好きというよりは、団朝さんが出る芝居とかの関連のお知り合いだったので、どちらかというとそういう方面の話中心だったけど、それはそれでおもしろかった(,,ﾟДﾟ) 普段、落語を聞かない人とかが上方落語についてどう思っているとか。
そうかー。しかし、仁鶴・三枝・鶴光あたりに端を発して始まった上方落語ブームなんてもう遠い昔になってしまってるんだなー。よしもとや松竹もあんまり「成金」みたいなユニット作って売り出すみたいなことは考えてなさそうだし。まぁ、それでも春蝶・べ瓶みたいに東京を拠点にする上方落語家とかがいて、東京でも大御所のホール落語だけでない生の上方落語を聞く機会が多いのは決して悪くないんだけど、マスメディアでの露出がほとんど期待できない状況でどうやって東京での動員を増やすか。昔はある意味東京を無視してもやっていけたんだけど、いまはかなり関西の地盤低下が激しいからなぁ。うーん、そういう意味では、当人はよしもとのトップタレントなのに、なんだかんだいって繁昌亭や喜楽館を立ち上げたりして、野心的に上方落語を演じる場を作ってきた当代文枝の会長(あ、前会長か)としての仕事は評価されるべきかもなー(,,ﾟДﾟ)
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