岩ちか著『婚約生』〜恋愛のハラハラ・ドキドキはないけれど・・・

一巻目がよく期間限定無料になっている。

　両親の急逝でひとりになった高校一年生の紗愛（さち）は、アパートの大家である幸一から結婚を申しこまれる。幸一は紗愛と同じ高校の三年生で、祖父の見合い相手から逃れ、紗愛に住居や学費を提供する代わりに紗愛が家事をすることを望んだ。
　身寄りのない未成年者は保護者の同意がなくても結婚できるというのは知らなかった。でも幸一には祖父がいるのでは？と漫画に突っ込んでもしようがないか。

突然のプロポーズにびっくりする紗愛。両親を亡くしたばっかりだし、それが普通の反応だろう。それに「結婚は愛し合ってる人同士がするもの」という紗愛に、「そんな法律はない」と幸一は冷静で、というか感情というものが感じられない。大丈夫か、この男子高校生と思ってしまう。

この高校三年生、家ではパソコンの前に座りっぱなしで不動産業の仕事をしている。なんだか効率を最優先するロボットみたいな感じだ。仕事と勉強がすべて。親がいないのだから、愛情ってものに育まれなかったのだな・・・と先を読むにつれて分かってくる。他人と暮らすという初体験に最初は戸惑っていたものの、嫁を守ることとか、共同で何かをすることを覚えていく様が微笑ましい。

何でもネットで検索して、そこに書いてあった通りにセリフまで実行するのには、吹き出してしまうほどおかしいし、逆に心配になったりもする。根が真面目すぎるほど真面目な人だから、何ともしようがない。生きていくため選択肢がないとはいえ、そういう旦那に紗愛がめげずについていくし、尽くす。若いっていうことは、柔軟であることでもあるんだなぁと感心させられる。紗愛も真面目で普通の高校生・・・なんだかほのぼのするし、危ないなぁと心配になる場面も、ふたりで乗り越えていく姿がたくましい。

高校生カップルの告白やお付き合いなどの過程で、ドキドキ・ハラハラさせられるような恋愛ものではない。利害の一致をみて共同生活的な結婚を起点に、ふたりが歩み寄り、家族になっていく様を応援したくなる話だった。ふと思い出して、読み返している。

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