囲碁や将棋で人間がコンピュータに負ける日が想定を超える速さでやってきた衝撃はまだまだ記憶に新しいが、そうこうしているうちにもAI(人工知能)はさらなる進化を続けている。人間の考えていることがすべてAIにお見通しになってしまう日が来るのも、意外に早いのかもしれない!?
■AIによる“読心術”が可能に
AIが人間の脳活動の“解読”に乗り出している――。年明け早々に京都大学の研究チームが発表した論文は、今なお世界中から注目を集め各種のメディアが話題にしている。その研究の内容は、見ている画像それ自体をその当人の脳活動の情報からAIが再構成するという驚くべき研究だ。つまり、脳活動からどんなものを見ているのかがわかるのだ。
きわめて複雑な人間の脳活動を比較的容易にモニターできるfMRI(磁気共鳴機能画像法)の登場によって、昨今さまざまな研究が盛んに行われるようになっている。こうした研究により、人間の特定の感情や行動が、脳のどの部位の活動と結びついているのかが徐々に明らかになってきているのだが、そうはいってもまだまだ脳活動の全容解明には程遠いと言えるだろう。
そこで近年、目覚ましい進化を遂げているAI(人工知能)に脳活動の“解読”をやらせてみるアイディアが出てくるのも自然な流れだろう。
京都大学の研究チームは、AIにfMRIでモニターした人間の脳活動の動きを機械学習させた。すると、驚くべきことにAIは人間が見ている画像を脳活動の情報をもとに再構築して描写できることがわかってきたのだ。
学術論文サーバ「Biorxiv」で今年1月に発表された「Deep image reconstruction from human brain activity」と題された研究論文では、人間が見ている画像を、fMRIで測定した脳活動の情報をAIが“解読”して画像を再現できることが示されている。個別に把握するには複雑すぎる「脳活動だが、膨大な脳活動情報を機械学習したAIは、視覚情報と脳活動のリンクを暫定的ではあるもののいくつも見つけ出していることになる。
研究に使われた画像はフクロウやカメレオン、トラなどの生物の画像や、旅客機やビールジョッキといった物体からアルファベットの文字までさまざまだ。そして直接画像を見ないで心の中で思い浮かべた絵についても、AIは“解読”して画像化することに成功している。いわばAIによる“読心術”がある部分ではもはや現実のものになっているのだ。
今後さらにこのAIが機械学習を続けていけば、再現できる絵はさらに正確で詳細なものになるだろう。
■「EEG」による脳波測定で思い浮かべた顔を再現
もちろん、脳活動の“解読”はほかにも各所で行なわれている。
fMRIよりもさらに簡便に脳活動を計測できる機器に「EEG」と呼ばれる脳波計測機がある。頭にかぶって使用するこのEEGを用いて、カナダ・トロント大学の研究チームは当人が思い浮かべた“顔”を再現することに成功している。
我々が人物の顔を思い出す時、デジカメ写真のような高精細でクリアな画像として再現しているのではなく、ある程度ぼんやりしていながらもその人物ならではの特徴がよく反映されたイメージを思い浮かべるだろう。研究チームは、この脳内のイメージをEEGで計測された脳波情報を“変換”することで再現したのだ。
EEGで計測された脳波情報から人物の顔を再現したのは、AIというよりも「変換ソフト」に近いもののようで、人間の顔に特化したことで“変換”の精度が高まっているようである。
研究チームは今後、さらにこの技術を向上させていくことでさまざまな可能性が広がっていることを指摘している。実用面でまず考えられるのが、犯罪捜査への応用だ。
犯人の目撃者によるビジュアル情報は、当人に絵心がない限りは客観的に伝えるのはなかなか難しいが、この技術を使えば、犯人の顔を思い浮かべてもらうだけで、これまでよりも簡単で、より正確な手配写真を作成できることになる。
また、聴覚や発話に障がいがある人々のコミュニケーションを円滑に行なう技術にも応用が可能だ。まさに“テレパシー”による言語を介さない交流が現実のものとなるのだ。
そしてなんといっても、今後さらに小型軽量・高性能化するEEGという機器を用いていることで、低コストで手軽に活用できることになるのは大きなアドバンテージである。このように各方面で急速に進む脳活動の“解読”作業と応用研究だけに、AIによる完全に近い“読心術”が実現する日もそう遠くはなさそうだ。
(文=仲田しんじ)
http://tocana.jp/2018/03/post_16316_entry_2.html
参考:「New Scientist」、「CNBC」、「Express」、「Futurism」、ほか
電脳になれば・・記録できる・・
そうなったらどうなるんだろう?世の中
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