mixiユーザー(id:946351)

2018年05月30日01:50

244 view

法政・映像制作技法(稲増龍夫)のゲスト講師(5/10)

遅くなってしまいましたが、毎年恒例の法政大学(多摩)のゲスト講師のレポートです。

今年は5月10日(木)の15:35から、科目名がちょっと変わりましたが、中身は同じです。今年から講義時間が90分から100分に増えました。ただ、なぜだか学生の数が激減していて、10人強くらいになっていました。理由は聞き忘れました。

昨年もそうですが、開講前に早めに来ていた学生に「どんなドラマが好きなのか」と質問しました。最初に聞いた女性は「SPEC」(2010)との答え、リアルタイムで見たのは小学生くらいで、その後はAmazonプライムで何度も見た、と。「小学生が見て面白かったか」と確認したら、「当時はわからない部分もあった」とのこと。今見ているのは「コンフィデンスマン」「ブラックペアン」「花のち晴れ」「朝ドラ」だそうです。

別の女性は「東京タラレバ娘」(2017)が好きで、もともと原作を読んでいたとか。今期はまだ見ていない、ドラマはテレビで見ている、映画が好きで「レディ・プレイヤー1」など。
さらに別の女性は「1リットルの涙」(2005)で、最近図書館で見たとのこと。「ラスト・フレンズ」(2008)も好き、とか。
ドラマよりもアニメが好きと答えた女性もいて、「夏目友人帳」など。
数少ない男性にも聞いてみたら、『海猿』(2004〜)「花男」(2005〜)「ライアーゲーム」(2007〜)など。

昨年もそうですが、意外と古いドラマを挙げる人が多かったです。10年前だと、当時10歳くらいのはずなんですが、ビデオとかネット配信で見るケースも多いみたいですね。

------------------------------------------------------------

法政大学のホームページにあるシラバスは以下の通り。
ここに書いてある「ゲスト講師」というのが僕のことです。(^^;;
https://syllabus.hosei.ac.jp/web/preview.php?no_id=1802133&nendo=2018&gakubu_id=%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6%E9%83%A8&gakubueng=AE&radd=418

ボクが用意した講義用のレジュメは以下のURLです。
http://park14.wakwak.com/~d-dan/MyFile/inamasu2018.pdf

講義を始めたのが多分2003年なので、もう15年近くやってることになります。2011年までは、6月上旬に講義していたのですが、2012年に、スケジュール上の都合で5月の連休明けにしたら、5月に行う学生の課題発表のクオリティが上がったらしいので、それ以降は5月上旬にやることになっています。シラバスによれば、ボクの演出分析の翌週から、学生が担当ドラマの分析をやって授業で発表するという段取りになっています。

近年は、前半の原論・基礎編の部分を切り詰めて、後半の今期のドラマ分析をメインにしています。昨年の日記を読むと、「ランチの女王」「金八先生」もカットして、「伝説の教師」からスタートしたようなんですが、そのことをすっかり忘れていて、今年は「ランチ」からスタートしました。そのせいで、講義時間が増えたにもかかわらず、後半は時間切れになってしまいました。

毎年、前夜は徹夜になることが多いのですが、今年は朝6時くらいに起きて、11時まで作業しました。全9ページのレジュメを書くのも結構時間がかかりました。

今年の講義の目玉は、「おっさんずラブ」と「半分、青い。」です。どちらも、見比べる、という要素が入っているからです。「おっさん」の方は、単発ドラマ版と連ドラ版で、ほぼ同一のシーンを見比べました。セリフもほぼ同じなので、こういうのを見比べると勉強になると思います。単発版は録画を持っていなかったので、ネット上の動画をPCで再生して、それをスマホで撮影する――という、かなり原始的な方法でブルーレイに入れました。でも、それに気が付いた人はいないと思います。(^^)v

「半分、青い。」は、24話のラストと25話のオープニングが同じシーンだったので、それを見比べてもらいました。こちらはセリフはもちろんのこと、映像も同一素材なんですが、カット割りやBGMが違っていて、見た時の印象が異なるので、そこに着目しました。「半分」を取り上げたのは、「コンフィデンスマン」のうるさい芝居との違いを意識してほしかった、という意図もありました。「半分」の笑いは、冷ややかな芝居が中心で、うるさい芝居はほとんど出てこないので。

ただ、順番としては、ドラマとしてはあまり好きでない「コンフィデンスマン」を先に持ってきました。好きでもないのに、分量も結構ありました。理由としては、(1) 学生さんで好きな人もいるだろうと考えた。(2) うるさい笑いからスタートして、「半分」の冷ややかな笑いで終わる、という流れにしたかった。(3) 第4話にカット編集に失敗しているシーンがあったので、それを一番最初に見せたかった――などです。

この日の講義には、昨年と同じくボクの友人が来てくれたのですが、どれが一番面白かったかと聞いたら、(3)の伊吹吾朗が、佐野史郎の後ろを2度通り過ぎるシーンだと、言われました。「よく気が付いた」と感動したとか。ただし、これは単なる編集ミスであって、演出分析という点では、ほとんど意味のないシーンです。(^^;;

「コンフィデンスマン」で一番重要なのは、一番最後に取り上げた業界バーのシーンです。パターン化した芝居を何回も繰り返すというのは、コメディ演出の基本パターンなので、そこを意識的に見る習慣を身に着ける、というのが演出分析の第一歩です。このシーンの出来がすごく良いかと言われると、微妙なんですけど。

好きでもないのにたくさん取り上げた「コンフィデンス」に対して、一番好きな「半分」はネタを1つ(秋風羽織と初対面シーン)に絞りました。探していくときりがないし、ドラマのテイストを象徴するようなシーンを1つ取り上げれば、着目ポイントの例示、という役割は果たせるかなと思ったからです。時間にも限りがありますからね。

ビデオの編集をしていて、妙に感情移入してしまったのは「花のち晴れ」第2話のラスト10分です。結局、このシーンにかなりの時間を割くことにしました。今期のドラマは、シリアスなシーンでいいものがなかったので、シリアスシーンの分析は、このシーンに代表させる形です。学生さんが共感してくれたかどうかは不明ですが、今後の分析のヒントにはなったんじゃないかと思います。率直に言うと、宇多田ヒカルの挿入歌が良いだけなんじゃないか、という気もしなくはありませんが。

時間が押していたので、「花のち」も第1話のネタはカットしたのですが、その後のドラマも「ブラックペアン」「ヘッドハンター」以外は、予定の半分くらいに減らしました。「ヘッドハンター」はどうしても取り上げたかったので、カットしませんでした。そのせいで、「シグナル」や「Missデビル」は1つだけ、「未解決の女」「モンテ・クリスト伯」は全部カットになりました。

「シグナル」はネタ探しや編集にかなり時間がかかったのですが、ほとんどカットになってしまって残念です。ただ、ほとんどが色の話なので、レジュメの文章を読むだけでも、こちらの意図は伝わると考えたので、思い切ってカットすることにしました。

「モンテ・クリスト伯」はカットになる可能性が高かったので、レジュメの解説を丁寧かつ長めに書いておきました。講義日の夜に放送される第4話の予想も書いておいたのですが、これは見事にハズれました。(^^;; ただ、大切なのは予想した理由なので、ハズレたこと自体はそんなに重要ではないでしょう。

------------------------------------------------------------

講義終了後は稲増先生と軽く雑談。
今期のイチオシを聞くと「半分、青い。」と予想通りの答え。「スズメちゃんは、あなたと同じ症状なのか」と聞かれたので、「雨が半分だけ降ってる、などと思ったことは一度もない」と答えておきました。(笑) それ以外では、「シグナル」は第1話は良かった。「コンフィデンスマン」はだんだん尻すぼんでいる。「モンテ・クリスト伯」は第1話が惜しかった、など。

友人にも講義の感想を聞きましたが、「おっさん」と「半分」の見比べは面白かったとのことでした。可能であれば、「半分」は2画面で同時再生して見比べたかったそうですが、さすがにそれは難しいです。また、今年は去年より音の話が多かったような気がする、とのこと。ボク自身はそういう自覚はありませんが、そうだったのかもしれません。

話の内容はわかりやすかったか? こちらの意図はちゃんと伝わったか? ということも、友人に確認しましたが、よくわかったとの返事でした。一番困るのは、「この講師、何言ってるのかわからない」と思われることなのですが、そこは心配しなくてもいいようです。

ドラマ関係のシンポジウムで、映像を流す場面がよくあるのですが、「雑だな」「わかりずらいな」と思うことがあります。そういうのも反面教師として、この講義に反映させています。さすがに上手いなと思ったのは、NHKの人が出ていたシンポジウム。研究者などと違って、映像の見せ方がよくわかっています。

映像を見せて解説する場合は、なるべく短く編集して、流す前に注目ポイントをちゃんと説明する、というのが肝要です。また、場合によっては2回見せるというのも重要で、今回だと「半分」や「花のち」で2度見せをしています。その分だけ時間を食ってしまうのですが、「シグナル」などをカットしてでも、やる価値はあると思っています。

――毎年思うことですが、こういう地道な分析をやってる人って、世の中に何人もいないだろうなと思います。頭のいい人は、気の利いた言葉やレトリックでドラマ批評をすらすら書いちゃいますが、この講義でやってるのは、映像を何回も見て、それを個々の構成要素に分解していく、という作業なので、とにかく時間と手間がかかります。(^^;;

これも毎年思うことですが、講義が終わった後に、講義で取り上げたいと思うようなシーンに出くわすことが、多々あります。「モンテ・クリスト伯」なんて、4話以降の方がドラマとしても面白いし、演出的にも取り上げたいシーンがあります。

それにしても、この種の講義は、一方通行じゃなくて、見た人のリアクションが有益だし、必要ですね。一方通行だと自分自身のためにもならない。何とか工夫して、他の人にも見てもらう機会を検討した方がいいのかもしれないですね。

3 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する