18941001 NO2427 政事顧問官招聘の件
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駐韓日本公使館記録 5巻 四. 機密諸方往 一 (12) 政事顧問官招聘の件
文書題目 (12) 政事顧問官招聘の件
文書番号 機密第一九参号 本一一六
発信日 明治二十七年十月一日 ( 1894年 10月 01日 )
発信者 特命全権公使 大鳥圭介
受信者 外務大臣 子爵 陸奧宗光
(12) 政事顧問官招聘の件
機密第一九参号 本一一六
政事顧問官招聘ノ義ニ付去八月二十日付ヲ以テ大体之照会有之候後実際招聘之協議無之ニ付当方ヨリ頻リニ催促ニ及ヒ尚ホ軍国機務処ヨリモ会議ノ決定ヲ以テ其筋ヘ再ヒ及上申候得共政府ハ踟躊シテ相運ヒ不申然処各国使臣連合シテ外務大臣ニ「貴国ハ若シ或ル一国ニ限リ政事顧問ヲ雇入ルル時ハ是レ独立自主ヲ失フモノナリ我々ハ其次第ヲ本国政府ヘ上申ス可シ」ト云フ恐嚇的ノ照会ヲ送リタリトテ同大臣ハ竊ニ疑懼ヲ懐キ傍ラ其照会ヲ楯ニ我督促ヲ拒ム口実ト為シ荏苒今日ニ至リシガ先般陸海両軍ノ勝報到着後当政府ノ方針漸ク確定シタル者歟去月二十八日ヲ以テ別紙ノ通リ議政府外各衙門庁ノ顧問官共計十人ヲ招聘シタキ旨外務大臣ヨリ申越候右ニ付同参十日本館電報第百十参号ヲ以テ及上申候通リ差当リ議政府及ヒ内務軍務度支ノ参衙門ニ雇ハス可キ顧問官一人ツヽ御人撰相成リ候様致度俸給ハ我ヨリ適当ニ相定吳度様依頼候ヘ共朝鮮政府ノ希望ハ議政府ノ顧問官一人即チ総顧問官ハ銀貨五百円已下各衙門ハ参百円已下ニ定メ度由ニ有之候将又当政府ハ位階高ク嘗テ官吏ノ経歴アル人ヲ希望シ且ツ地位高キ人ナレバ当国人ヨリ尊信ヲ受ケ其言行ハレ易カル可シトノ義ニ付倂テ御含相成候様致度候猶又事宜ニ依リ俸給及ヒ旅費等当分立替貸ヲ為サザルヲ得ザル場合可有之是亦可然御詮議相成リ候様致度候別紙人員中議政府ノ内一人ハ先般機密第一八七号ニテ上申ノ人物ヲ充ツ可キ見込ミ有之其他外務法務学務工務及警務庁ノ顧問官ハ時機見計ヒ漸次派遣方上申可及ニ付前以テ人撰相成度依テ別紙写相添此段及上申候也
明治二十七年十月一日
特命全権公使 大鳥圭介
外務大臣 子爵 陸奧宗光 殿
（＊私訳）
(12) 政事顧問官招聘の件
機密第一九参号 本一一六
政事顧問官招聘の件について、去る八月二十日付でもって大体之照会有之候後、実際には招聘の協議がないので、当方よりしきりに催促に及び、それでもなお軍国機務処よりも会議の決定をもってその筋へ再び上申したのですが、政府は躊躇して実施に至らず、そのうち各国使臣が連合して外務大臣に
「貴国はもしある一国だけに政事顧問を雇い入れるときは、これは独立・自主を失うことである。我々はその経過を本国政府へ上申するだろう」
という恐喝的な照会を送ったと言うので、外務大臣はひそかに不安を懐き、一方でこの照会を楯にして私からの督促を拒む口実とし、物事ははかどらずのびのびになって今日に至ったのだが、先般陸海両軍の勝報が到着した後、当政府の方針が次第に確定したのか、先月二十八日をもって別紙の通り議政府ほか各衙門庁の顧問官たち合計十人を招聘したいと外務大臣より連絡がありました。
これについて同三十日、本公使館電報第百十参号もって上申しました通り、差し当たり議政府及び内務軍務度支の三衙門に雇用させるべき顧問官一人ずつ御人選なさるよう致したく、俸給はこちらから適当に定めてもらいたいと依頼しましたが、朝鮮政府の希望は議政府の顧問官一人、すなわち総顧問官は銀貨五百円以下、各衙門は参百円以下に定めたいとのことです。
また当政府は位が階高く嘗（かつ）て官吏の経歴がある人を希望し、かつ地位の高い人であれば当国人から尊敬・信頼を受けそのことばは実行されやすいだろうとのことで併せて御含み頂きたく存じます。
なおまた事情により俸給及び旅費など当分立て替え貸しをせざるを得ない場合がありそうで、これまたしかるべく御詮議頂きますようお願いします。
別紙の人員のなかの議政府の一人は先般機密第一八七号で上申した人物を充てる見込みがあり、その他外務・法務・学務・工務および警務庁の顧問官は、時機を見計らい次第に派遣についてお願い申しあげることになりますので前もって御人選頂きたく、そこで別紙写しを添えてこの件上申致します。
明治二十七年十月一日
特命全権公使 大鳥圭介（＊発信）
外務大臣 子爵 陸奧宗光 殿
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