18940814 NO2404-2 ★ 朝鮮内政改革勧告の方針
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駐韓日本公使館記録 5巻 参. 諸方機密公信往 参 (6) 朝鮮内政改革勧告の方針
文書題目 (6) 朝鮮内政改革勧告の方針
文書番号 機密 第一六七号 本九参
発信日 明治二十七年八月十四日 ( 1894年 08月 14日 )
発信者 特命全権公使 大鳥圭介
受信者 外務大臣 陸奧宗光
(6) 朝鮮内政改革勧告の方針
機密第一六七号 本九参
現今朝鮮政府ハ既ニ根本的改革ノ端�劵魍�キ且ツ其改革ニ付重ニ我勧告ヲ仰キ候様相成候ニ付而ハ内外人ノ耳目ハ我ガ挙動ならびにニ其執ル所ノ主義如何ニ注射スルガ如キニ有之候而シテ世論ノ大要ヲ観察スルニ甲ハ「朝鮮ノ改革ヲ行ハントスルニハ能ク其ノ国情ヲ酌量シ徐徐ト之ヲ行フ可シ決シテ急劇ノ改革ヲ行フ可カラス」ト云ヒ乙ハ「今日ノ改革事業ヲ以テ優柔不断ノ朝鮮人士ニ専任スルハ不可ナリ宜ク我ヨリ深ク干渉シテ否ヤ応ナシニ改革ヲ断行セシム可シ」ト云フガ如クニテ世論未タ帰一セザル有様ナレバ此際我政府執ル所ノ方針ヲ一定スル事頗ル急要ト存候依テ別紙ニ其大綱ヲ認メ供貴覽候間御詮議之上何分之御訓示相成度候尤モ別紙第四項当政府招聘ニ応ス可キ顧問官ニ付テハ昨今専ラ協議中ニ有之候其種類ハ第一期ハ内閣ノ顧問ニ財政ノ整理民政ノ改良兵制ノ創定等ニシテ第二期ニ至レバ法律逓信及ヒ農工商務ニ関スル顧問官モ必要ニ可有之ト存候其人員ハ第一期ニ於テハ四五名位地ハ当政府ニ於テ勅任官相当ニ俸給ハ未タ協議前ニ候ヘ共先ツ参百円内外ト御承知相成度候目下当政府ハ財政未タ整頓セザルガ為メ俸給支出ノ道ナキニ苦ミ且ツ痛ク先年ノ大参輪増田等ノ覆轍ニ懲リ応招ノ人物如何ニ付竊ニ心配致候様被察候依而愈愈顧問官招聘ノ約束相調候ハハ可成丈誠実老練ノ人物ヲ御推薦相成度且ツ彼政府ノ依頼ニ因テハ我政府ヨリ一時旅費俸給等御貸渡相成リ候様致度候将又第五項米人ノ顧問官ハ差当リグレ―トハウス氏ヲ雇繼為致度ト存候李仙得氏ハグ氏程日用ヲ辨セザル上俄佛両館員ト頗ル親密ナレバ多少弊害可有之ト存候
別紙相添此段伺旁申進候也
明治二十七年八月十四日
特命全権公使 大鳥圭介
外務大臣 陸奧宗光 殿
（＊私訳）
(6) 朝鮮内政改革勧告の方針
機密第一六七号 本九参
現在、朝鮮政府は既に根本的改革の端�劼魍�き、かつその改革について主に我が国の勧告を仰ぐようになりましたので、内外人（＊朝鮮人と外国人）の関心は我が日本の挙動、ならびに日本の方針如何に注目するようである。
そして世論の概要を観察すると、ある者は「朝鮮の改革を行おうとするにはよくその国情を考慮し徐々にこれを進めてゆくべきである。決して急劇な改革を行ってはならない」と言い、またある者は「今日の改革事業を優柔不断な朝鮮人士に専任することはできない。こちらから深く干渉して否応なしに改革を断行させなければならない」と言っている状況で、世論は未だ統一されていないので、この際我が政府が取る方針を定めることが非常に急要と存じます。
そこで別紙にその大綱をしたため目を通して頂くことにしましたので御検討の上御訓示頂きたく存じます。もっとも別紙第四項「当政府招聘に応ずべき顧問官」については、只今協議中です。
その種類は、第一期は、内閣の顧問に、財政の整理、民政の改良、兵制の創定などであり、第二期になれば、法律・逓信、及び農工・商務に関する顧問官も必要となろうと存じます。
その人員は、第一期においては四、五名くらい。身分は、当政府において勅任官＊相当に。俸給はまだ協議前ですが、まず三百円内外と御承知いただきたい。
目下当（＊朝鮮）政府は財政がまだ整頓していないので俸給支出の方法がないことに苦しんでおり、また痛く先年の「大参輪増田等ノ」失敗に懲り、応招する人物を誰にするかについて密かに心配致しているように察せられます。
よっていざ顧問官招聘の約束が調いました羅、なるべく誠実老練の人物を御推薦頂きたく、かつ朝鮮政府に依頼によっては我が政府より一時旅費俸給等を御貸付になりますよう致したく存じます。
また第五項「米人の顧問官」は差し当たり引き続きグレ―トハウス氏を雇いたいと存じます。
李仙得氏はグレ―トハウス氏ほど日用を処理できない上、ロシア・フランス両館員とすこぶる親密であるので多少弊害があると存じます。
別紙を添えこの件を申し進みます。
明治二十七年八月十四日
特命全権公使 大鳥圭介（＊発信）
外務大臣 陸奧宗光 殿
＊ 勅任官 「文官の内閣書記官長、法制局長官、賞勲局総裁、企画院次長、情報局次長、技術院次長、特許庁長官、各省次官、防空総本部次長、専売局長官、帝国大学総長、官立大学長、軍事保護院副総裁、食糧管理局長官、通信院総裁、気象技監、特命全権公使、大使館参事官、大使館商務参事官、行政裁判所評定官、東京都次長、警視総監、各府県知事、貴族院書記官長、衆議院書記官長、南洋庁長官、北海道庁長官、樺太庁長官。武官の中将と少将など」。なお勅任官の上位にある親任官は「内閣総理大臣、企画院総裁、情報局総裁、技術院総裁、国務大臣、軍事保護院総裁、特命全権大使、行政裁判所長官、（朝鮮総督、朝鮮政務総監、台湾総督、）東京都長官、枢密院議長、枢密院副議長、枢密顧問官、検事総長、会計検査院長、陸軍大将、海軍大将など。」
[別紙]
文書題目 朝鮮内政改革勧告ニ付我政府ノ執ルヘキ方針大槪
朝鮮内政改革勧告ニ付我政府ノ執ル可キ方針大槪
一. 朝鮮内政ノ改革ハ此際一時ニ各種ノ弊政ヲ廃除シ根本的ノ革新ヲ断行スルニ在リト雖トモ行政諸般ノ制度ヲ立ツルニ至テハ其国情ヲ詳ニシ民智民力ノ程度ヲ量リ之ニ適応シタル制度ヲ立テ然後国民ノ智力増加スルニ従テ漸次之ヲ改進スルヲ要ス俄ニ高尚ニ過キタル法律ヲ制シ民情ニ適当セザル制度ヲ設ク可カラズ
二. 旧来ノ制度ト雖トモ之ヲ存シテ害ナキモノ又ハ之ヲ廃革シテ得ル所ノ効益少ク却テ之ガ為メ痛ク民心ニ逆フ者ハ暫ク之ヲ存ス可シ
参. 改革事業ハ可成丈朝鮮人士ノ手ニ任セテ之ヲ行ヒ我ヨリ深ク干渉セサルヲ肝要トス何トナレバ則我ヨリ深ク立入リテ之ニ干渉スルトキハ或ハ支那ノ咎ニ倣フ譏リヲ免レス随テ朝鮮人士ニ我国ヲ厭忌スル心ヲ生セシメ他日第参国ヲシテ其隙ニ投セシムル不幸ナシトセズ但タ我国ハ朝鮮ニ対シテ常ニ威信ヲ保チ諸事忠誠ヲ以テ勧告スルトキハ殊更ニ深ク立入ラズトモ彼等ヲシテ永ク我ガ目的ノ如ク運動セシムル事ヲ得可シ
四. 朝鮮政府ノ招聘ニ応ス可キ財政兵制及法律等ノ顧問官ハ我政府ニテ之ヲ推薦シ其身分ハ我政府ノ非職又ハ派遣ノ為メ特ニ非職ヲ命セラレタル誠実老練ノ官吏若クハ政府ト内約アリテ始終我政府ト同様ノ方針ヲ執ルモノタルヲ要ス然ルトキハ朝鮮内政ノ改革ニ向テ本館ハ全ク関係セズ専ラ右顧問官ニ任スルヲ得可シ又右顧問官ニ対シテハ政府ヨリ内訓ヲ与ヘ諸事駐在公使ト協議セシメ公使ノ意見ニ抵触セサルヲ要ス
五. 欧米人ノ感覚ヲ損セザランガ為メニ米人ノ顧問官一二名ヲ雇ハシムル方得策ナラン但シ陰然我ヨリ保護ヲ与ヘ必ス我方針ヲ賛成セシムル事専要ナリ
（＊私訳）
朝鮮内政改革勧告について我が政府が執るべき方針 大槪
一. 朝鮮内政の改革はこの際短期間に集中して各種の弊政を排除し根本的な革新を断行するところにあるとは言え、行政諸般の制度を立てることになれば、その国情を詳しく知り、民智・民力の程度を量り、これに適応した制度を立て、その後で国民の智力が増加するに従って次第にこれを改進することが必要である。急に高尚に過ぎる法律を制定し、民情に適当でない制度を設けてはいけない。
二. 旧来の制度だといっても、残しておいても害のないもの、あるいはこれを廃止・改革しても得る所の効果が少なく、かえってこのためひどく民心に逆らうようなことは当分は残しておくこと。
三. 改革事業はできるだけ朝鮮人士の手に任せてこれを実施し、日本が深く干渉しないことが肝要である。なぜならば我々が深く立ち入ってこれに干渉する時は、あるいは支那の失敗を繰り返すとの批判を免れない。したがって朝鮮人士に我が国を忌み嫌う心を生み、他日第三国にその隙に付け入らせる不幸がないとはいえない。ただ我が国は朝鮮に対して常に威信を保ち、諸事忠誠をもって勧告するときは、殊更に深く立ち入らないでも彼等に永く我々の目的のように動かせることはできるだろう。
四. 朝鮮政府の招聘に応ずる財政、兵制、および法律等の顧問官は、我が政府でこれを推薦し、その身分は我が政府の非職、または派遣のため特に非職（＊休職）を命ぜられた誠実老練の官吏、もしくは政府の内約があって始終我が政府と同様の方針をとるものであることが必要である。そうなっていれば朝鮮内政の改革に向かって本館（＊在朝鮮日本公使館）は全く関係しないで、もっぱらこの顧問官に任せることができるだろう。またこの顧問官にたいしては日本政府より内訓（＊内密の訓令）を与えて諸事駐在公使と協議させ、公使の意見に抵触しないことが 必要である。
五. 欧米人の感覚を損しないために、米人の顧問官一、二名を雇わせるのが得策であろう。ただし陰然と我々からの保護を与え、必ず日本の方針に賛成させることが必要である。
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