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2018年05月04日18:59

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4月の読書記録

前半は割に好調だったのだけれど、終盤になって失速した感が…3月より読めたとはいえ、個人的にはちと残念。5月はもっと頑張って読もう。後、百は超えたとはいえ、ナイスの数も今ひとつかな…

2018年4月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:5417ページ
ナイス数:118ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■ブラス・クーバスの死後の回想 (光文社古典新訳文庫)
これ程モダンな…というより、最早ポストモダンともいうべき小説が19世紀のしかもブラジルという後進国で書かれたということが驚き。解説にもあるように、その舞台はまだ奴隷制度が残っている旧時代的のものなのだが、文体や小説の設定、様々な実験的要素などを見れば、戦後の作品だと言われても納得するのではないか?これはヨーロッパというしがらみから一歩距離を置いた環境がゆえに可能だったことでは?という気もする。巻末で主人公が「子供をもたなかった」ことを僅かな黒字としているが、死後に書物を残すことをどうとらえているのか?
読了日:04月27日 著者:マシャード ジ・アシス
https://bookmeter.com/books/4910025

■崩れ
本当は自分達と無縁ではないはずなのに、つい見過ごしてしまいがちな「崩れ」という現象。古希を過ぎて、様々な地方における自ら崩れと呼ぶ自然災害の現場へと果敢に足を踏み入れる著者。ただの野次馬と言えばそれまでかもしれないが、その想像を絶するような光景に向ける眼差しと、機微に富んだその描写からは、著者の深い思いが伝わって来る。報道からだけでは伝わってこない、自然の威力の凄まじさ、現場の人々の姿は、言葉という一見回り道と思えるような手段を通してこそリアルに伝わって来るものがあるのでは?という気にさせられた。
読了日:04月23日 著者:幸田 文
https://bookmeter.com/books/463211

■ちぎれ雲 (講談社文芸文庫 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ))
著者が父親を看取る経緯、また父親との愛憎入り混じる関係はこれまで手を替え品を替えという感じで読んできているはずなのに、それでも読むたびに心にストンと落ちてくるものがあるのはどうしてだろう?それこそが著者の持ち味と言われればそれまでだけれど、それだけでは片付けられない深いものがあるような気がしてならない。一つには父露伴の偉大さがあるだろうし、また著者が類稀な身体感覚と感受性を持っていたからだろうと想像する。後驚かされたのが永井荷風とのエピソード。露伴と荷風との邂逅が実現されなかったのは、返す返すも残念。
読了日:04月21日 著者:幸田 文,中沢 けい
https://bookmeter.com/books/517053

■ドン・カズムッホ (光文社古典新訳文庫)
孤独な男やもめの回想記ということで、陰惨な印象を受けるはずなのに、どこか飄々とした趣があるのが不思議。偏屈卿と渾名付けられることをあえて良しとするところも、自己諧謔の一環で、主人公は意図的に自らの人生とフィクショナルに語っているのでは?という気さえする。自分の妻と親友との不貞、またその親友の妻とのアヴァンチュールというのも、かなり書き方が微妙だし、自分の周囲の人間が次々と亡くなっていくのもどこか不自然。その「ちょっとありえないだろ」という突っ込みをむしろ期待して、このようなストーリーを仕立てたのでは?
読了日:04月20日 著者:マシャード・ジ・アシス
https://bookmeter.com/books/7956016

■九十八歳になった私
究極のディストピア小説か?とにかく本書を読んでいたら、心底長生きがしたくなくなった(笑)。別に長生きしたいとは思わない。かといって自殺するわけにもいかず、ずるずると百歳を目前にした作者自身を投影した主人公。鈍った思考力であれこれと考え、時間感覚がなくなったことを自覚しつつも、今の自分の足場を確認しようと足掻く姿は妙にリアリティがある。そして、超高齢化社会で五十男がいわば青二才的にみなされるというのは、まさに近未来を暗示しているかのよう。リニアを作ろうなんて太平楽なことを考えている人に読ませたい気がする。
読了日:04月19日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/12508070

■ナラ・レポート (津島佑子コレクション)
再読本。初回のときは、一体何を読んでいたのだろう?と反省させられることしきり。時空を超え、幾度となく生死を繰り返す森生とその母。そこに立ちはだかる権力や、抑圧、そして無理解…その権力との象徴としての奈良の大仏は、解説にもあるように深くて重い意味を孕む。とりわけ、最終部における大仏殿の再建供養の描写は、まさに権力側の身勝手さとそれに振り回される民衆の姿をリアルに暴き出していると言っていいだろう。また併録された「ヒグマ〜」も不器用にしか生きれず、自死を選んだ男の姿を描いた掌編で、短いながらも味わい深い作品。
読了日:04月17日 著者:津島 佑子
https://bookmeter.com/books/12725557

■もの言えぬ時代 戦争・アメリカ・共謀罪 (朝日新書)
帯の「このいやな感じの先に何があるか?」という言葉があまりに象徴的で重い。共謀罪成立から、表立っては特別抑圧的な空気がましたという実感はないが、それでも「いやな感じ」は知らず知らずのうちに世間に蔓延しつつあるように思えてならない。確かにテロ対策の法案は必要だろう、共謀罪が戦前回帰というのは左派の世迷言というのも当たっているのかもしれない。それでもこのいやな感じを払拭する理由にはならない。それを個人的な感情として蔑ろにしてよいものか?その嫌な感じの根拠をとことんまで突き詰めること。それがまさに多様性だろう。
読了日:04月16日 著者:内田樹,加藤陽子,三浦瑠麗
https://bookmeter.com/books/12347364

■草の花 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
表題作の「草の花」は女学校試験、その失敗、女学院入学からその秋までの回想記…これまで読んできた作品とかなり内容が被ってはいるけれど、それでもその瑞々しい感性と文体に引き込まれてつい惹きこまれてしまう。本人曰く文学的素養に乏しい筈であるのに、どうしてこんな文章が書けるのだろう?とかねてから疑問に思っていたのだけれど、本書を読んで、これはひとえに父露伴からの影響と、著者の身体体験があのような文章を書かせているのでは?と思い当たった。また「きのうきょう」で見られる鋭い観察眼や随想もなんとも言えない味わいがある。
読了日:04月15日 著者:幸田 文,池内 紀
https://bookmeter.com/books/451169

■深読み日本文学 (インターナショナル新書)
日本文学入門であるのと同時に、昨今の右傾化及び人文系学問への冷遇に対する批判を盛り込んでいるのが、著者ならでは。時々「それはちょっとな…」と思える箇所も散見されるが、それも著者の持ち味と思って受け取るほうがいいかも?本書でとりわけ気になったのが、かつての村上春樹への敵対意識がかなり薄れ、ある程度肯定していると思えること。自身が述懐している通り、かつての敵対心はすぐ上の世代への対抗意識によるところが大きいのでは?と考えると、ちょっと微笑ましい。後、AIによる創作の可能性への期待はあまり賛同したくないな…
読了日:04月14日 著者:島田 雅彦
https://bookmeter.com/books/12438775

■父・こんなこと (新潮文庫)
幾度となく触れてきた、露伴と文子との親子模様。似たような話を何度聞かされても、何かと身につまされたり、感じ入ったりと殆ど飽きることがないのは、作者の表現の巧みさ、人柄、鋭い観察、そしてひとえに父に対する愛憎入り混じった深い思いであろう。とりわけ「父」で展開される、微に入り細に入った記述と、巧みに擬態音を用いた、類まれな端正な文体には脱帽する他はない。それでいて、「こんなこと」では、自分に文学的素養がないと自嘲するのだから、この文才はどうやって培ってきたのだろう?と不思議に思う
。また露伴のお茶目さも魅力。
読了日:04月11日 著者:幸田 文
https://bookmeter.com/books/546677

■W/F ダブル・ファンタジー
五百頁近くの大著だが、ほぼ一気に読了。女性の視点から見た性愛のリアルをここまでまざまざと見せつけられたら、男性としては立つ瀬ないな(笑)。師匠とも言うべき志澤とのメール交換に端を発して、創作を巡る葛藤、夫からの抑圧への決別、新たな恋…そのめくるめく展開に、手に汗握るようなスリリングさを覚えた。個人的には一見、草食系なのに実は凄かったという岩井がとりわけ印象的だった。まあ、性格的に自分に比較的近いというのもあるけど(笑)。それから、何でこのタイトルが密かに疑問だったけど、その種明かしのくだりには、脱帽した。
読了日:04月10日 著者:村山 由佳
https://bookmeter.com/books/570423

■花酔ひ
二組の夫婦が織りなす不倫劇。登場人物それぞれの視点から物語を紡ぎだしていくという著者お得意の手法が絶妙な効果をなしている。個人的にとりわけ印象的だったのは、当初貞淑な妻を演じていた千桜が秘めていた淫蕩な本性。それに翻弄されつつも、時折その千桜をもたじろぎさせる貪欲さを見せる誠治との愛欲に溺れた姿に読者もなにかジリジリとした感覚に襲われる。今更ながらに性欲と純粋な愛情というのは両立しないのか?という疑問がわく。また、女性の視点を通して描かれた男性がいかに愚かで一人よがりな存在かというのを改めて痛感した。
読了日:04月08日 著者:村山 由佳
https://bookmeter.com/books/4651820

■哲学塾の風景 哲学書を読み解く (講談社学術文庫)
文庫版にて再読。まがりなりにも哲学科修士を出たのにも拘らず、哲学的問題を徹底して考え抜く、あるいは哲学書の細部にこだわりながら読んでいくということをやってこなかったことを改めて認識。仮に自分がこの塾に参加したら…と想像すると後ろめたささえ覚えてしまう。それはともかくとして、解説にもあるように、中島と生徒との絶妙な掛け合い、そして中島の飴と鞭とを巧みに使い分けた指導に関心させられることしきり。今どこの大学の哲学科のゼミよりも充実した教室だと言われても納得がいく。それからニーテェとキルケゴールの対比が面白い。
読了日:04月06日 著者:中島 義道
https://bookmeter.com/books/11643021

■アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)
自称愛国者や反中韓論者、リアリストにとっては、唾棄すべき、あるいは一笑に付してスルーされるだけのものかもしれないが、それでも僕はこの二人の知見に賛同したい。確かに日台韓の連携は実現不能と言えるくらい難しいかもしれない。でも、隣国といがみ合うより、仲良くしたほうがずっとメリットが大きいのでは?この単純かつリアルな認識を根底から突き崩すだけのエビデンスを前述の人達はどれだけ挙げることができるか?僕は本気で問いただしたいそして何より自称愛国者の多くが、その実本当の意味での国益を損なっているという指摘に深く同感。
読了日:04月05日 著者:内田 樹,姜 尚中
https://bookmeter.com/books/12166545

■上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください (光文社新書)
本書が出て、早7年。自己中だった古市君は多少大人になったのだろうか?僕からしたら、「ありえない!」と突き放したくなるような発言の数々を、突き放しも呆れもせず、古市の疑問に丁寧に答え、意見を述べ、話を建設的な方向へと持って行く上野の姿が印象的。その一方で進みゆく高齢化社会を巡るリアルな問題は、知れば知るほど頭を抱えたくなる代物。実際、とても安定した老後を迎えることができそうにないわが身を思うと、余計に本書の内容が重くのしかかってくる…だからこそ、上野が述べている通り、当事者意識を持って働きかけるのが大事。
読了日:04月04日 著者:上野千鶴子,古市憲寿
https://bookmeter.com/books/4198003

■街場の天皇論
著者と同じく、かつて天皇制は民主主義に相反するもので、即刻廃止すべき!!と思っていたものだが、ある時期を境に「待てよ…」と思うようになった。そうこうしているうちに、天皇は寧ろリベラルに親和的な存在になっていた。そのことを端的に象徴するのが本書ではないだろうか?一見、天皇を崇拝するかのように見せかけながらも、その実その権威を利用しようとするだけの人達。そういう人達が愛国者面しているという昨今の状況がとてつもなく苛立たしい。しかも、それが戦前から連綿と続いている流れなのだ。どれだけ歴史から学ばなかったのか?
読了日:04月02日 著者:内田 樹
https://bookmeter.com/books/12309454

■役に立たない読書 (インターナショナル新書)
タイトルに惹かれて手に取ったが、興味深い箇所は少なからずあったものの、全体としては「何だかな…」感が拭えない。とにかく一般人には、とっつきにくいことをごく当たり前のことのように述べているのが、何とも鼻に付く。とりわけ、日本古典全集の読み比べについてのくだりなど、本気で「この人何言ってるんだろう?」という気になった。後、マニアックな古書との付き合い方とか、余程の物好きでしかしないようなことをさも当然のことのように述べるのは、いかがなものか?ただ、日本における独特の本文化についてのくだりは面白かったけど。
読了日:04月01日 著者:林 望
https://bookmeter.com/books/11596977

■アダルト・エデュケーション
女性主人公によるモノローグ形式の性愛をテーマにした短編集。著者後書きで、恋愛において今日に立ち回れないと述べているが、それだからこその苦味や複雑さが表れていると思う。そして、恋愛上手ではないにしても、経験は豊富だろうな…というのは、これまた著者後書きから伺い知れる。平均的(?)男性が本書を読むのは、些かハードルが高いかもしれないが、学ぶことは多いように思う。個人的にとりわけ度肝を抜かれたのが、「言葉はいらない」。姉の恋人と深みにはまる話かと思えば、結末は「あれ?」。このあたり、著者の真骨頂ではないか?
読了日:04月01日 著者:村山 由佳
https://bookmeter.com/books/619470


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