18940819 NO2394 朝鮮王宮襲撃で朝鮮政府から押収した兵器についての意見 通報
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駐韓日本公使館記錄 5巻 二. 王宮護衛 其他 (2) [朝鮮政府から押収した兵器についての意見 通報]
文書題目 (2) [朝鮮政府から押収した兵器についての意見 通報]
文書番号
発信日 明治二十七年八月十九日 ( 1894年 08월 19日 )
発信者 混成旅団長 大島義昌
受信者 特命全権公使 大鳥圭介
(2) [朝鮮政府から押収した兵器についての意見 通報]
別紙ノ通リ意見上申ニ及置候間此段及御通牒候也
明治二十七年八月十九日
混成旅団長 大島義昌
特命全権公使 大鳥圭介 殿
[別紙]
文書題目 朝鮮政府ヨリ押収セシ兵器ニ付意見上申
朝鮮政府ヨリ押収セシ兵器ニ付意見上申
朝鮮国ノ独立権ヲ侵害セス其自主ヲ鞏固ナラシムヘキハ義昌ノ拳拳服膺シテ忘レサル所ナリ去月二十参日ノ戦闘ノ如キハ実ニ止ムヲ得サルニ出テ韓兵ヲ撃退シタル後同政府ノ武器悉皆ヲ押収シタルモノ固ヨリ一時ノ権宜ニ属ス抑朝鮮全国ノ官吏人民頑固戇愚ニシテ我大政府善隣提携ノ厚誼ヲ顧ミス動モスレハ却テ我軍隊ヲ敵視スルノ実アリシ也今時本旅団ハ御訓令ノ趣旨ニ従ヒ牙山ニ向テ前進セントスルニ方リ後顧ノ患アル事右ノ如シ依テ韓兵ノ挑戦ヲ奇貨トシ南進ヲ容易ナラシメンカ為メ一時該兵器ヲ押収シタルニ過キス固ヨリ之ヲ戦利品視シタルニアラサルナリ
今般公使ト其時期ヲ協議シ押収ノ武器悉皆ヲ朝鮮政府ニ返還スヘキ殿下ノ御訓令ヲ接受ス義昌竊ニ所見アリ默默ニ付スルニ忍ヒス敢テ愚意ヲ開陳シ謹テ後命ヲ待ントス
今回朝鮮政府ヨリ押収シタル兵器ヲ見ルニ其大砲ニハ二十餘門中克盧伯山砲五門同長筒砲兵参門カツトリング器械砲十一門其他旧式滑膅砲数門ニシテ而シテ弾子甚タ少ク加ルニ口径ニ不合ノモノ亦多シ其小銃ニハ「モ―セル」アリ「レミントン」アリ「マルチニ―」アリ「ゲベ―ル」「エンヒ―ル」「火繩銃」等アリ弓槍アリ各種異様類別スベカラズ而シテ其弾薬亦甚タ少シ殆ント之ヲ有力ノ兵器ト名クベカラス只本旅団着仁ノ初支那ヨリ輸入シタル新式「モ―セル」銃凡千挺許精巧ノモノニシテ実用ヲ為スニ足ルノミ
右ノ如キ形状ナルカ故之ヲ朝鮮政府ニ返還スルモ其実用ヲナスモノ甚タ少ク且之ニ要スル弾薬ハ爾後朝鮮政府ハ何レニ依テ購買補充スルヤ之ヲ独逸ニ直購スル事ハ到底為シ能ハサル処ニシテ不得止天津器械局ニ依頼セサルヲ得サルベシ是レ我邦ニ於テ不利益ノ大ナルモノトス則チ義昌カ竊カニ考慮スル処ニ依レハ去月二十参日ノ事誠ニ曲彼レニ在リ其武器ノ押収スルハ固ヨリ戦闘ノ常事ニシテ我其取ルベキヲ取ル名義正当孰レカ復タ之ヲ議スルモノアランヤ而シテ大政府ヨリ別ニ朝鮮独立ニ要スル兵数ヲ計リ村田銃ヲ同政府ニ寄贈シ爾後其弾薬ハ必要ニ従ヒ請求ニ応シ原価ヲ以テ支払フベキ事ヲ約シ以テ其独立ヲ鞏固ニシ自主ヲ援護スルノ実ヲ示サン乎良ニ如斯ナレハ名実相叶ヒ朝鮮政府ノ恩ニ感スル事深クシテ而シテ其兵器ノ実力ヲ我ニ握ル事ヲ得一挙両得ノ処置ト愚考仕候卽チ約言スレバ朝鮮政府ハ各種異様ニシテ弾薬補給ノ道ナキ兵器ニ代フルニ完全ナル武器ヲ備ル事ヲ得我ニ於テハ自由ニ其兵力ヲ消張セシムル事ヲ得ベシ是義昌ノ意見ナリ速ニ御詮議ヲ盡サセラレン事企望ノ至ニ不堪候
追テ不日守衛隊ノ将校下士ヲシテ韓兵ニ対シテ練兵�骸�ヲ始メシムベキ与定ニ有之候
明治二十七年八月十六日
混成旅団長 大島義昌(＊発信)
参謀総長 熾仁親王 殿
（＊私訳）
(2) [朝鮮政府から押収した兵器についての意見 通報]
別紙の通り意見上申に及び置きましたのでこの件御通牒致します。
明治二十七年八月十九日
混成旅団長 大島義昌(＊発信)
特命全権公使 大鳥圭介 殿
[別紙]
文書題目 朝鮮政府から押収した兵器について意見上申
朝鮮政府ヨリ押収セシ兵器ニ付意見上申
朝鮮国の独立権を侵害しないでその自主を鞏固にしなければならいということは義昌（＊大島義昌）が拳拳服膺（＊心にしっかりと留めて決して忘れないこと）して忘れることのないところである。
先月二十三日の戦闘（＊朝鮮王宮襲撃）などは実に止むを得ない状況となって韓兵を撃退した後、同政府の武器をすべて押収したものはもとよりその場に応じての一時の処置に属している。
そもそも朝鮮の全国の官吏や人民は頑固かつ愚かであり、我が政府の善隣提携の深い親しみを顧みず、ややもすればかえって我が軍隊を敵視するといった事実があったのである。今本旅団は御訓令の趣旨に従い牙山（アサン）に向かって前進するにあたりあとあとの心配があるのはこの事である。
そもそも韓兵の挑戦を利用し南進を容易にするため一時これらの兵器を押収したに過ぎず、もともとこれを戦利品と見なしたわけではないのである。
今般公使とその時期を協議し、押収した武器の全てを朝鮮政府も返還せよとの殿下の御訓令を拝受した。義昌に密かに思うところがある。それを黙っていることは出来ず敢えて私見を述べ謹んで後命を待とうと思う。
今回朝鮮政府から押収している兵器を見ると、その大砲には二十余門中、克盧伯山砲五門、同長筒砲兵参門カツトリング器械砲十一門、その他旧式滑膅砲数門で、また弾丸は非常に少なく、そのうえ口径が不合のものも多い。その小銃には「モ―ゼル」、「レミントン」、「マルチニ―」、「ゲベ―ル」、「エンヒ―ル」、「火繩銃」等があり、弓槍もある。各種異様なもので類別することができない。そしてその弾薬は非常に少ない。ほとんどは役に立つ兵器と名付けることは出来ない状態である。
ただ本旅団着仁の初期に支那から輸入している新式「モーゼル」銃が千挺ほど、精巧なもので実用できるものである。
以上のような形状であるために、これらを朝鮮政府に返還したとしてもその実用となるものは甚だ少なく、またこれらに必要な弾薬は今後朝鮮政府がどこから購入補充するのか。これをドイツから直接購入することは到底できないことで、やむをえず天津器械局に依頼せざるを得ないであろう。
これは我が国において不利益の大きいものと考える。すなわち義昌（＊私）がひそかに考えるところによれば、去る七月二十三日の事（＊日本軍が慶福宮に攻め入り占拠）の事はその間違いは朝鮮側にある。その武器を押収することはもともと戦闘に常にあることで、我々はその取るべきものを取るのである。その正当性を議論するものはない。
そして日本政府より特別人朝鮮独立に必要な兵数を数え、村田銃を同政府に寄贈し、今後その弾薬は必要な場合に請求に応じ原価で支払ことにしてその独立を強固にし、自主を援護することを示そう。このような状況であるので名実ともに実状にかない朝鮮政府が深く恩に感じており、そして朝鮮の兵器の実力を日本が握ることができ一挙両得の処置と愚考致します。
即ち要約すれば、朝鮮政府は各種異様で弾薬補給の道のない兵器に代えて、完全な武器を入手することができ、我が国においては自由にその兵力を増減することができるであおる。以上が義昌の意見である。
御詮議を尽くされることを希望します。
追って近いうちに守衛隊の将校・下士に韓兵に対して練兵�骸�を始める予定であります。
明治二十七年八月十六日
混成旅団長 大島義昌(＊発信)
参謀総長 熾仁親王 殿
＊王宮襲撃 「明治27年（1894年）7月23日、朝鮮政府の打倒と興宣大院君による新政府の樹立を目的として、日本軍が王宮（景福宮）を攻撃し、朝鮮の守備隊との間で戦闘が起きました。」
＊1894年8月1日「清国に対し宣戦」
＊村田銃 「建軍当時の大日本帝国陸海軍は、陸軍がイギリス製のスナイドル銃、海軍が同マルティニ・ヘンリー銃を使用していたが、村田経芳が十三年式村田銃の製造に成功したことで、初めて「軍銃一定」（主力小銃の統一・一本化）が成し遂げられた。このことが後の日清戦争において、雑多な小銃を用いる清軍に対し、日本軍の優位につながる一因となった。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E7%94%B0%E9%8A%83
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