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2018年04月22日11:30

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四月大歌舞伎 夜の部

2018/4/15日 16:45-
2018/4/21土 16:45-
歌舞伎座

四世鶴屋南北 作
奈河彰輔 補綴・演出
片岡仁左衛門 監修
通し狂言 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)
立場の太平次

片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候

序 幕 第一場 多賀家水門口の場
第二場 多賀領鷹野の場
第三場 多賀家陣屋の場
二幕目 第一場 四条河原の場
第二場 今出川道具屋の場
第三場 妙覚寺裏手の場
三幕目 第一場 和州倉狩峠の場
第二場 倉狩峠一つ家の場
第三場 倉狩峠古宮の場
第四場 元の一つ家の場
大 詰 第一場 合法庵室の場
第二場 閻魔堂の場

左枝大学之助/立場の太平次 仁左衛門
田代屋与兵衛 錦之助
田代屋娘お亀 孝太郎
孫七 坂東亀蔵
太平次女房お道 吉弥
お米 梅丸
番頭伝三 松之助
升法印 由次郎
関口多九郎 権十郎
田代屋後家おりよ 萬次郎
高橋瀬左衛門/高橋弥十郎 彌十郎
佐五右衛門 團蔵
うんざりお松/弥十郎妻皐月 時蔵

仁左様の一世一代、二度観に行ってきました。いやー、何というか、二度でも足りず、まだ観たい・・・そんな公演でした。千穐楽までまだちょっとだけ日があるので悶々としております。

三月大歌舞伎の於染久松に続いてのにざ様の南北。強請のシーンは似てる部分も。どうしようもない悪役2人(しかも血のつながりもないのにそっくりという設定)が善人を殺しまくって最後には仇討ちされるという、これを楽しんでいいんだろうか?なストーリー。

ではあるのですが、

仁左様、凄かった。芸の凄さに打ち震えました・・・。

人を人とも思わぬ尊大な武士・大学之助と、知能犯かつ女ったらしの町人・太平次。タイプの異なるこの2つの悪役の演じ分け、実にお見事。衣装・鬘・お化粧でガラリと雰囲気が変わる部分もありますが、表情・声音・体の使い方も全然違う。特に太平次は、善人のような表の顔と本性の裏の顔がころころ入れ替わり感情も豊かなので、仁左様の七変化を堪能しました。女形と絡むちょっと色っぽいシーンもあったし、拗ねたような顔も素敵ハートでも白眉は倉狩峠の場。与兵衛を取り逃がし、彼をかばった女房を殺して家に戻って、のところから。家の中にいる孫七を殺すために彼に猫なで声をかけながら入口の戸につっかえ棒を入れて密室にし・・・、ここの仁左様、二日目に観た時は声音も目つきも狂気があってゾクりとしました。この方、こういう悪のアドレナリン出てる狂気をやっていると何と色っぽくて魅力的なのかしら・・・!死体の上に腰かけて世が明けるシーン、最高にひどいシーンだけど最高に華があって。太平次、こんなイっちゃった状態になったらもうこの世に戻れないだろうな、と思ったら、今回はカットされてたけど次の場で大学之助に斬られるんですね。

あと、この作品で楽しんだのは仁左様のリアリティあるディテールの表現。太平次が立場の主として登場するときは草鞋を編んでいて、へー草鞋ってこうやって作るんだ―と楽しく拝見。蚊も、うちわで追い払ったり、足や手をぴしゃっとうつ仕草で表現していて面白いなぁと。このときの仁左様のうちわを使う手の動きも無駄がなく優雅で何とも美しい。あと、蚊よけに燻をかけるシーンで、煙が目に沁みないように目をつぶって煙を追いやるシーンとか、本当に煙が目に見えるよう。太平次がお松を殺す井戸のシーンで鋭い目つきで人がいないかを周到に確認するシーンも、そこに客席ではなくうっそうとした草原が広がっているように感じました。

また、常なることではありますが、仁左様の所作の美しさにも惚れ惚れ。太平次が登場するシーン、しばらく舞台中央で立っているんですが、このときの足の使い方も美しかったなあ。バレエで言えば三番のポジションでずっと立っていらして。

しかし、太平次と大学の二役をやるこの演目、ほぼ出ずっぱりだし立ち回りもあるし、本当にハード。仁佐様、声もよく出ていたし動きも機敏で、とても御年74才とは思えぬお元気さでした。本当にこれ最後なんですか・・・?と思うし、あれ観てると、現時点でやれない役なんてないのじゃないかと。

と、仁左様にすっかりやられた公演でしたが、彼以外の役者の皆様も凄くよかった!

時蔵さんの悪婆っぷり、すんごい素敵ー。先月観た玉様のお六もよかったけど、それに勝るとも劣らぬ素晴らしさ。最後の大学への仇討ちシーンの立ち回りも男らしくてかっこよかった。

二役で仁左様に次いで大活躍の彌十郎さんもよかったなあ。温かいお人柄がにじみ出るキャラ造形。仁左様と対峙していても同じくらいの存在感だなと思いました。序幕の早変わり、ふすまの向こうに行った途端に入れ替わってるんですよね。そうと分かって見ていても思わず騙される!

孝太郎さんのお亀、本当にいじらしかった。幽霊になって与兵衛の前に現れるシーンは、本当にこの世ならざる人に見えました。与兵衛の錦之助さん、美しかったなあ。気の弱い善人を好演。お米の梅丸さん、超可愛かった!

歌舞伎鑑賞は、五月はお休みして六月に博多遠征する予定です。

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