mixiユーザー(id:8210642)

2018年04月12日21:57

373 view

農産物検査の仕組み その7

さて、農産物検査で「銘柄」(正確には産地品種銘柄)の証明を受けると、一体どうなるのでしょうか。
  スーパー等で売っている精米の袋には、必ず「品質表示欄という枠があり、年産・産地・品種名等が記載されています。この表示は『品質表示法』(以前はJAS法が根拠法でしたが)という法律に基づいて行われているものですが、実はこの内容、農産物検査を受検したお米(年産や産地品種銘柄の証明を受けたお米)でないと、記載することができません。つまり、今年種もみを買って、山口県で栽培・収穫したコシヒカリであっても、農産物検査を受検して、その証明を受けなければ「平成30年産 山口県産 コシヒカリ」という内容を品質表示欄に記載することはできません。(※ただし、米トレーサビリティー法により産地情報が伝達(記入)されている場合もあります。)
 たとえ農産物検査を受検しても、銘柄になれない品種であれば、品質表示欄に当該品種名を記載することは出来ません。山口県で産地品種銘柄になっていない「みつひかり」や「あきだわら」を山口県で栽培して、農産物検査を受検しても、精米の品質表示欄に品種名を記載することは出来ません。山口県の選択銘柄である「恋の予感」は、「恋の予感」を銘柄として検査する登録検査機関で検査してもらえば、品質表示欄に「恋の予感」と表示できますが、銘柄として検査しない登録検査機関で検査した場合は、表示ができません。
 農産物検査を受検して銘柄認定がされれば、その結果(等級)が1等であっても規格外であっても、品質表示欄に「年産・産地・品種名」を記載することができます。

 さて、前々回の記事では、唯一銘柄の設定がない都道府県がある、と言いました。東京都です。つまり、「東京都産〇〇」と品質表示欄に記載されたお米が流通することはないのです。東京都でもお米が生産されていますし、販売もされています。もちろん販売にあたって、東京のどこそこで生産されたお米、というのを事実に基づいて宣伝することは、まったく問題ありません。品質表示欄では「国内産」という表示になってしまうだけです。
 自分しか作っていない品種を銘柄にして“幻の銘柄”として販売したい、という農家さんもいるかもしれませんが、なかなかそのようなごく少量の生産量では、銘柄にはなれないでしょう。それに、銘柄になったから売れる、というものでもないでしょう。やはり農家直販で評価されるのは、品種のネームバリューよりは実際の品質でしょうから。
 ある品種を銘柄とするには、農政局に銘柄の設定を申請する必要があります。その後、一般からの意見や、関係者からの意見聴取会などを踏まえ、要件を満たしていると判断されれば、銘柄となることができます。小さな一農家だけで銘柄申請は難しいでしょうが、大規模な法人、あるいは農家がグループになって、ある品種の独占栽培権を取得し、その品種の栽培計画(生産量)や販売計画(需要量)、種子の確保方法、当該銘柄の検査を引き受けてくれる登録検査機関などをきちんと用意することができれば、その法人やグループだけのオリジナル銘柄をつくる、ということは可能です。前々回で紹介した「あきまつり」や「せとのにじ」も、その流れと言えるでしょう。
 もっとも、銘柄が重視されるのは一般消費者向けの販売であって、業務用米であれば銘柄であるかどうかはそれほど気にしません。業務用米のユーザーは、自分の必要とする条件を満たしているお米が欲しいのであって、銘柄米が欲しいわけではありません。米の流通が多様化した現在、ユーザーの方から、この品種を作ってほしい、と、流通業者を絡めてアプローチしてくるようになっています。

…長かった銘柄の話もやっと終わりです。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年04月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

最近の日記

もっと見る