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2018年04月07日17:22

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小説・解放の刻

以前の作品です^^;
自分が書いている漫画や小説(白銀のケンタウロスなど・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

口の中の血だまりを吐き出して ゆっくりと顔を上げて 相手を見上げ 睨みつける・・。

竜の顔をした戦士セルトは 無表情のまま 立っている

敵に操られて 心奪われ
静かに剣をこちらに向ける
白銀の煌めきが 夕暮れの闇の中で光っていた。

ふりおろした剣は よけそこなって斜めに
頬と脇腹をかすり
相手である少年王アーシュは
うめき声を洩らす

竜の顔の戦士セルトにかけられた魔法を解こうと
アーシュは
うかつに近づきしすぎて
剣の柄で、
二度も、よけそこねて まともに相手の攻撃を受けてしまったのだ・・
・・・
少しの間でいい
じつと動かないでくれれば
首に取り付けられた魔術具を壊せるのに・・

竜の顔の戦士セルトは 暗い表情のまま 視線を投げ掛ける・・

彼は以前に味方の城塞を灰塵にしたのだ・・。

目くらましに、わざと外しながら、小さな魔法の炎の玉を作っては
投げつける

だが、セルト・・
彼にはお見通しだった・・

振りおろされる剣を幾度となく、かわしながら
わずかばかりだが
確実に傷が増えて痛む・・

心の片隅で 誰かが呟く・・

小手先で逃げても無駄だ
相手は強くて本気で殺しにかかってきている・・。

死にたくなければ 逃げるか こっちも本気で殺すのだと・・


逃げる訳には行かない・・

それに深い傷をおった兵士が数人痛みにうめいてる・・ 大勢の味方の兵士達がやられてしまう・・

ザクリと鈍い音・・
自らの悲鳴!肩に剣が食い込む・・・!
肩の防具が、ちぎれ飛ぶ

竜の顔の戦士は、何故かゆっくり ためらい・・
一気に剣を振りおろして、とどめを刺そうとは、しなかった・・

ボタボタと流れた血が、足元に小さな血だまりを作っている・・
激しい痛みに目の前がチカチカしながら・・
震える手を伸ばして 相手の手を掴み 剣を動かす

どうにか肩に食い込んだ剣を外して それから

「・・俺がわかるか?」

声をかける

ピクリと反応する・・

彼の手を掴んだまま
問いかける・・

「以前 会った 俺がわかるよな?

頼むから・・少しの間だけ
じっとしてろ!いいな!」

血に染まっている
もう片方の手を 魔法の拘束具に近づけ・・

ゆっくりと・・呪文を唱える


だが・・まずい事に何も知らない
味方である兵士が 切りつけてきたのだ・・

「!」

舌うちをするなり
呪文を中断すると
とっさに 戦士を蹴り飛ばし 兵士の刃から逃れさせる・・。
自分自身は転がるように
してから
少し手前の位置に膝をついた状態になる

そして兵士に怒鳴りつける!

「怪我したくないなら俺に任せろ!」

そうは言いはなったものの
肩に受けた傷が深く思うようには腕は動かせない

緩やかに呪文を暗唱する

瞳は宝玉の紅玉のように
煌めき輝く

足元から炎・・揺らめく・・・立ち上がる

戦士に絡みつく炎

だが彼はまるで 動じない
炎・・円陣を描き

動きを封じようとする・・が
彼の剣が炎を散らす

呪文の暗唱は続く

炎は踊るかの如く
くねくねとまわっては
再び動きを封じようとする
相手は戸惑い動きは止まった

ゆっくりと近づき
怪我をしてない手を上げて・・
その手を伸ばして首輪に触れようとする

心を封印している・・それから 解放の呪文を唱えはじめる

もう少しだ・・心の中でつぶやく・・


少年王アーシュの瞳・・
紅(くれない)煌めき
呪文が続く・・

封鎖の魔法の首輪
メキリとわずかに・・ひび割れ

竜の戦士の目に感情の色が入る・・が・

首輪が発光して 呪文を唱えてる主を吹き飛ばす・・

吹き飛ばされた際に
痛めてる肩を強打して 悲鳴が上がる・・
額から血が流れる・・
血が目に入り 視界が少しぼんやりする

竜の顔の戦士は剣を振り上げ近ずく
痛めてない片手を横に振り
言葉を発する!
「炎の柱!」アーシュは叫ぶ

炎の柱は竜の顔の戦士の前に立ちはだかる

「いいのか!セルト!
俺を殺しても!」叫ぶアーシュ

セルトはピクリと反応して、刀をゆっくり降ろして、動きを止めて・・

アーシュは自身の身体を見る
自らの血に染まった
自分自身の痛む身体

それから祈るような思いで 思い・・
心の中で同じ言葉を繰り返す
もう一度・なんとしても
セルト、お前を解放する!

中腰姿勢からキッと顔をあげて
ジャンプ!
相手の肩先に 怪我をしてない手を置き そのまますぐ相手のすぐ後ろに着地

とっさの事で動きの取れない相手を回し蹴り、
それもひざまづいたかと思うと
そのまま片手を軸にして身体ごと回した蹴り

アーシュの小柄な身体ながら威力は抜群
大きな身体の相手は
ひざ足を蹴り飛ばされ倒れこむ

やったとばかり
嬉し気に笑うアーシュ
そして首輪の呪符に手をかける!
叫んだ

「今度こそ!お前を解放する!」

素早く早口で長い呪文の唱える

パキン! 意志を封印していた魔法の首輪は音を立てて壊れた・・。

・・・
自身より、かなり小柄な少年に押し倒された状態で
10数年ぶりに意識を取り戻し・・。

ただただ・・少年を見つめている

・・・
ニッと誇らし気に
満面の笑み
笑うアーシュ
「やぁ!・・大丈夫か?」

・・・・
呆然として、ただ明るく
無邪気な笑顔を見せる少年を見つめる・・。

優しく笑う
「・・沢山、話たい事がある」

俺がどんなに意識を取り戻したお前に会いたかったか・・。

黄金色の太陽の光が
包み込む

満足そうな笑顔の少年を
竜の顔の戦士は、静かに微笑んで見つめ返した・・。

FIN




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