3月11日@サントリーホール
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18
ピアノ:小菅優
* * *
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
指揮:サカリ・オラモ
演奏:BBC交響楽団
先日のミューザ川崎であまりにもがっかりな演奏だったため、聴きにいくのが気が重かった。
けれど、今回は信頼する音楽家でもある小菅優だし、小菅優のラフマニノフのP協第2番は聴いてみたかった。
ラフマニフのP協第2番は、その冒頭のピアノの和音の扱いがいつも気になる。
例えば、それはどの演奏家から入るかで、印象が異なるだろう。
リヒテルから入れば、頭打ちの音などない重いがっつりとした和音となるし、アシュケナージから入れば、速い頭打ちが入る和音となる。(それは手の大きさというものに大きく依存するのだろう。実際の楽譜は頭打ち音はない和音となっている)
私はこのラフマニノフのP協第2番はアシュケナージのものが好みだったので、この頭打ちのある和音が自分の中での収まりがいい。
さて、小菅優だが、この頭打ち音があらかじめ楽譜にあったかのごとく、たっぷり溜めをとる形で頭打ち音のある和音で弾いた。まず、ここで一気にこの曲がすっと香気のある音楽で立ち上がった。何か震えるような感動。
そして、感情の深さに入り込んでくるようなピアノ。そのピアノに刺激されるように、あんなに上っ面だったこのBBC交響楽団の音がぐっと深みを増す。
そうなのだ。優れた音楽家はこんな風にその音楽家たちを鼓舞し、一つの音楽を創りあげていく。
何と素晴らしい音楽だろう。
どの楽章も、その音楽の起伏というものが鮮明で、そこに意味があり、心を動かす。
こんな変化というものを感じたとき、本当に感動が訪れる。久しぶりにブラボーの声を自然とあげていた。
小菅優は大きな音楽家になったなあ。
後半はマーラーの交響曲第5番。
これもBBC交響楽団の巧さというものを存分に感じさせるもの。
けれど、例えば、同曲のシノーポリ/フィルハーモニア管、ゲルギエフ/マリンスキー歌劇場、MTT サンフランシスコ響で聴いた凄みのある演奏から比べれば、その感動の度合いはまだまだである。
まあ、小菅優のラフマニノフP協第2番の一生に残る演奏を聴けたので満足だ。
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