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2018年03月25日20:21

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この条文案で「違憲論争に終止符」は不可能

■安倍首相「自衛隊違憲論争に終止符を」党大会で9条明記の必要性強調
(THE PAGE - 03月25日 14:12)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=177&from=diary&id=5041885

自民党の党大会で改憲条文案が示された。9条に関しては次のようになっている。

第9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

そもそもこういう改憲論議にうかつに乗ると、それ自体が改憲機運に竿をさすことにつながりかねないので注意が必要だ。私は憲法の専門家ではないので、あくまで素人考えでの指摘しかできないが、この条文案で首相が望むような「違憲論争に終止符」は不可能だろうと思う。

まず現行の9条をそのまま残すとなると、自衛隊の規模や装備内容いかんで「戦力」に該当することになり、よって違憲であるという結論が現在と同様導けることになる。

第9条の2が明示的に現行9条の例外となっていれば別だが、上記のような定め方だと、自衛隊はあくまでも、
「平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛」
「のための実力組織」
でなければならない。「実力組織」は無限定に許容されるのではなく、「必要な」範囲でのみ認められるに過ぎないのだ、という解釈も十分可能である。

しかし、これでは結局、現在の政府解釈である「自衛のための必要最小限度の実力」を9条に定めた「戦力」と区別して立論する手法と変わらない。安倍首相はこれで「違憲論争に終止符」を打とうと考えているようだが、この条文ではまず無理だろう。

一方で危うさもある。というのはこの条文からは、「平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要」と評価できさえすれば、核武装もできるという論理も導きうるからだ。当然それは「戦力」に該当するから違憲だという解釈もありうる。危惧されるのは、現行の9条を残しはしたものの、その「戦力不保持」という内容を骨抜きにして、単なる形骸にすぎない条文に変質させてしまうことである。これはかなり先鋭な論争点になるはずだ。いずれにせよ、安倍首相が望む「終止符」ははるかに遠い。

また「自衛の措置」というのもよく分からない表現だ。歴史上、大抵の戦争は「自衛」を正当化根拠として行われてきたことを考えると、「自衛」のための先制攻撃や、場合によって侵略行為すら「自衛の措置」に繰り込まれかねない。

もちろん、そのようなケースでは「現行の9条との整合的解釈が要求される以上、先制攻撃や侵略行為は否定される」と理解するのが妥当だろう。だが、ここでもやはり論争の種にはなりうるのであり、やはり「終止符」にはならない。

はっきり言ってこの条文案では国民は混乱するばかりだろう。従来の政府解釈通りのようにも読めるし、多様な軍事的オプションに道を開いたようにもみえる。ということはつまり、この条文案通りに改憲がなされたとしても、自衛隊は自らが違憲の存在ではないことを証明し続けなければならないということだ。

だったら今までどおりなのだから、反対する理由もないだろうと主張する人間もいるかもしれない。しかし、上記に指摘したとおり、読みようによっては核武装や先制攻撃にすら道を開くような条文である。そんなものに賛成する理由はない。

そもそも、こういう改憲自体が東アジアの安全保障環境を悪化させる要因になるのだ。ただでさえ、国民生活に密着した多くの政策課題が存在するのに、改憲というデメリットの多い火遊びに興じている余裕などないはずである。
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