特殊清掃
今まで孤独死をした現場のリフォームを何度かしてきたけれど 基本全部片付いていた状態で妙な匂いとの戦いだった。 今回依頼があったので行ってきたのは遺体がないってだけの現場。本当に冬でよかった。まさかそんな状態とは知らず部屋に入ったのだが。
恐ろしい匂い。口で言うのは難しいし多分普通の人生を送っていればその匂いを嗅ぐことはないだろう。ゴミ屋敷も行った事があるがせいぜい食い物が腐ってるだけ。人の死体の臭いだとわかっているからか？夏のごみ箱の臭いとは全然違う。よく言えばもっとマイルドなのだ。多分同じ種類の生物から発している匂いだからか？はるか昔の記憶が覚えているのか？
とにかく耐え難い。
マンションの廊下に もうその匂いが漂っていた。きれいなマンションだが空き部屋が目立つ。この匂いがそれと知ったらワンルームなら出ていくだろう。
リフォームをしていた時 一人で居るとちょっと怖かったりしたが
この状況 幽霊なんか出ても正直それどころじゃないから失せろ！と言える。
ここは戦場なのだ。
状態はわかったので完全防備で行く。
現調の時に服にすごい匂いが付いてしまった。
分かったので捨てられるカッパなどを購入。活性炭入りのマスクで防備。
人は死ぬと体から体液がどんどん出ていくらしい。
布団が汁を吸って重たい。遺体を引きはがした時に頭の毛が抜けたのだろう一部に
毛がびっしりついている。それを袋に詰めていく
吸いきれなかった体液が床に広がる
家財の下が接着剤のように床と張り付く。
その液体すべてが猛烈な臭気を放つ。
すなわち家財すべてがその匂いに染まるのだ。
すべてを袋に詰めなければ部屋から持ち出せない。大迷惑だ。
袋に入っていても周囲に匂いが散乱する。体液が付着していないでも又プラスチックであってもその匂いが染みつくのだ。
ありとあらゆるものを袋詰めにしていく
広い部屋ではないので部屋は袋で一杯になっていく。
食材は少しづつ便所に流す。
カッパを着てマスクをして３階からトラックへおろす。
本気で意識が遠くなってくる。汗がすごい。高地登山とかってこんな感じなんだろうな。
荷物は全部降りた。マスクをはがして息が吸いたいでも怖い。
そのあとの仕事だが
体液というか血のりが床にべったり残っている。
厚さは５ミリほどだろうか？面積は１�屬阿蕕ぁ�ご遺体はずいぶん軽くなっていただろう。それを鋼のはがしベラではがす。
かなり固い。黒々としていたが剥がしてみると所謂血の色だ。硬いのではがれると飛び散る。かなり気が滅入る。血の塊をヘラですくって便所へ流す。しばらくレバーは食えないな。
良いのか悪いのかよくわからんが正直それどころではない。
とりあえず 床に何もない状態になった。
効くかどうか分からないが床に液体の塩素（キッチンハイター）をまんべんなく撒く。
血液と反応して泡を吹く。どうせ全面リフォームしなければこの部屋は住めない。
壁にも床にも台所も全部死臭が染みついている。
塩素が目に染みる そろそろ離脱しなければこっちが危ない。
このゴミはいつも世話になっている産廃屋にもっていこうと思っていた。
だが
これは正直そういうレベルのゴミではない。多分持ち込んだら出入り禁止になることもありそうだ。俺ならそうする。
市役所の清掃工場に連絡をしてみる
ボヤなんかだと結構突っぱねられる事が多かったりするのだが
事情を説明すると有料だが燃えるものは引き取ってくれるという。
ありがたい。だが その死んだ人の証明の公共料金の伝票などが欲しいという。
ファック！全部袋の中だ。
ラッキーなことに透明ビニールから伝票が見えた。小さく破いてその紙を・・・・・
ってそれだけでクサ！！マジくさ！マスク忘れてた！
清掃工場には何台か車が並んでいたが 何台も向こうから俺の車の異変に職員は気づいていたようだ。それほどなのだ。
本当はダメなんだけど・・・ご苦労さん。
って 燃えないものまで引き取ってくれた。多分速攻焼却炉行の落とし穴に落とさせてもらった。本当にありがたかった。だけど車から降ろすのは手伝ってくれなかった。
ゴミのプロでも嫌なんだろうね。
そして第一作戦は完了した。正直この部屋の解体とかを頼まれているのだが
嫌だ。
一番大変なのを終わらせたんだけど行きたくない。
他所で大口な契約が取れたのだ！こんな儲かりそうな仕事は２年ぶりぐらいなのだ。１か月前なら喜んだかもしれないけど・・・・ってマジで匂いが飛んでないとあの部屋には行けない。
それはそうと
ここで人が死んでるんだ とか そういう「メルヘン」なお話は全く心に感じない。
それこそ家族の写真があったり感情に訴えるものが全くなかった。
それはよかった。
そう ここは戦場なのだ。感情が左右するほどやさしい世界ではない。
吐き気を催すか？いやそれもない。只 苦痛との戦いなのだ。
また一つ何か強くなった気がします。
儲かるか？
いや
通常の工事の１．５倍程度頂ければ幸です。
金払うやつがここに居れば３倍くれるかな。笑
それからやっぱり毎日誰かと話そう。
そういう人生を送ろう。
１か月も死んでから気づかれないと正直 迷惑だわ。申し訳ないけど。
それか やばそうな奴は早い段階で部屋にブルシートを敷こうぜ。
まあ死んじまったらそれで終わりだから関係無いか。
何嗅いでもあの匂いに感じちまうのが辛いな。
何喰ってもとりあえず死体だからな。
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