下妻物語（後編）

発電機や電源の状況を復電するまでの一定期間、確認する。
暇な仕事だと思うでしょ？
そうでもないんですよ…

ごみ処理場って、基本24時間動いている。
だから、昼だけでなく、夜も発電機まわりっぱなしだ。
さすがに夜間の見回りはしなくていいが、朝に出勤してみると、
聞きたくもない苦情が客先より聞かされる。

中でも、メインの空気フィルタに使われている発電機。
これがま〜燃料を食うわ食うわ。
5時間かそこらで40％も燃料減るって、ありえねえ…
その都度ガソリンスタンドに電話。
向こうにとっては、ぼろい商売なんだろうか。

数日たつと、ものの数時間で半分まで燃料が減ったという報告が。
しかも、ガソリンスタンドが閉まってる時刻にだ。
幸い、予備用に20L入りのポリタンクを5つ用意させていたので、
そいつで何とかもたせてくれとお願いした。

次の朝。
状況を聞くと、ポリタンクでちゃんと給油できたとの事。
しかし、倉庫を見てみると、軽油用の手押しポンプにどう考えても
使った形跡がない。

「…？手押しポンプ使った感じ、ないけど？」

「あれ、どうやって使うんですかね？ホースつないだんですけど合わないんですよ。
　しょうがないんで、給油口に直にポリタンクあててドボドボと…」

…な、なんてあぶねえことを。
漏れて引火したら大惨事になってるじゃねえかよ。
手押しポンプって、もう使い方わからないのかな…

それからも、勝手にブレーカーが落ちただの、
電源のスイッチを入れ違えて給電が遅れただの、
何も起こらない日のほうが珍しかった。

よく調べて分かったが、この現場、結構物の使い方が荒い。
壊れたまでは行ってないんだが、手順ガン無視で使ってるのも珍しくない。
そりゃ不具合も出るさ…

修理工じゃないので、不具合報告には頭抱えるしかない俺。
しかし、メーカーの人にとってはこの程度は想定内のようで…

「大丈夫、ノープラモデルですよ！」

…プロブレムだろ。
時代の変化に対応できないおもちゃ屋みたいな事を言うんじゃねえよ。

まあ、心配性で頭抱えるよりは、陽気でいたほうがましかもしれんが…

電源の不具合に怯えたり、大雨で資材が遅れ、それをレンタカーで取りに行かされたりなど、
紆余曲折はあったものの、ようやく復電までこぎつける。
…その日、業者側の細かいミスが山積していって、22時くらいまでかかったけどね。

最終日の朝、帰りたくないのか、例の近所迷惑ガン無視の町内放送を聞いても、
なかなか布団から出られなかったな…
…いや、単純に寝不足だな。言うほど思い出ないし。

帰りのJR、途中の経由する上野駅、東京駅で10個の土産を買い漁る。
売店で最もでかい紙袋に土産を詰め、帰宅する俺であった。