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2018年02月20日23:06

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ハンブルクバレエ2018年来日公演 ニジンスキー 2/11

ニジンスキー、セカンドキャストの感想です。

2018/2/11日 14:00-
東京文化会館

ニジンスキー:アレクサンドル・トルーシュ
ロモラ:カロリーナ・アグエロ
ブロニスラヴァ・ニジンスカ、妹:ルシア・リオス
スタニスラフ・ニジンスキー、兄:コンスタンティン・ツェリコフ
ディアギレフ:カーステン・ユング
エレオノーラ・ベレダ、母:アンナ・ラウデール
トーマス・ニジンスキー、父:ダリオ・フランコーニ
タマラ・カルサーヴィナ:リン・シュエ
レオニード・マシーン:リロイ・ブーン
【ダンサーとして役を演じるニジンスキー】
 『謝肉祭』のアルルカン:クリストファー・エヴァンス
 『ばらの精』:クリストファー・エヴァンス
 『シェエラザード』の金の奴隷:マルセリノ・リバオ
 『遊戯』の若い男:リロイ・ブーン
 『牧神の午後』の牧神:マルセリノ・リバオ
ペトルーシュカ:ロイド・リギンズ
内なる世界でのニジンスキーの象徴、ニジンスキーの影:
 クリストファー・エヴァンス、アレイズ・マルティネス

トルシュのニジンスキーを観るのは二度目。前回は昨年のハンブルクのバレエ週間でした。そのときの感想はこちら→ http://kikoworld.blog.fc2.com/blog-entry-280.html

彼のニジンスキー、前回観たときから物凄く進化していて驚きました。ジョンの作品は演劇みたいなものだから、回数を重ねることで役が体にしみこんでいくのだなあ!

この日は、みんなが優しい、優しいから哀しいニジンスキーでした。前みたときも思ったのだけれど、サーシャ・リアブコがニジンスキーを演じるときは彼の孤独感が役に投影されるけど、トルシュの場合は未熟さや弱さを強く感じます。疑うことを全く知らないいたいけで純真な少年がディアギレフに誘われてスターになり、でも苦しい環境につぶされていく。そんなストーリーに見えました。

カーステンのディアギレフも、イヴァンよりは全然優しい。優しいけど、やっぱり二人はうまくいかない。

そして、素晴らしかったのがカロリーヌのロモラ。彼女のはニジンスキーを心から愛していて、でも彼にそれを疑われて傷ついて、なのに彼の傍を離れられない本当に優しいロモラ。哀しいソリのパドドゥで、ロモラが途方にくれてソリの傍に座り込むシーンでは涙腺崩壊してしまいました。ニジンスキーを観てロモラに感情移入して泣いたのは初めてだわ・・・。

ニジンスキーのような演劇的な要素の強い作品になってくると、配役の妙というのがあるなと今回は強く思いました。カロリーナのロモラは凄くいいけど、サーシャ・リアブコと一緒だと彼の強い個性に負けて目立たなくなってしまう。同様にディアギレフも、トルシュならば優しいカーステンの方が相性がいい。イヴァンは優しいトルシュのニジンスキーには強すぎて、虐待みたいに見えてしまった。

そういう意味で、今回のファースト/セカンドはそれぞれにとてもよくできたマリアージュでした。そして、日替わりで異なるダンサーのニジンスキーを観られた日本のファンはとても幸運だったかも。

だって二人のサーシャ(二人ともアレクサンドルなので愛称も同じ)のニジンスキー、全然違うストーリーに見えた。

私はサーシャ・リアブコの大ファンだし、彼のどうしようもないほど孤高な精神が本当にツボなので断然リアブコ版が好きなのですが、ただし、サーシャが出ると彼の感情の渦に巻き込まれて一緒に狂気の淵に引きずりこまれ、ストーリーが見えにくくなることは確か。トルシュが演じるともっと客観的に全体を俯瞰でき、ストーリー自体はクリアに見えると思います。

そして、トルシュの瑞々しい少年性を好む人と、リアブコの熟成された哲学性を好む人、これ分かれて当然。年齢が上の人ほど後者に共感しがちな部分もあるかもしれないですね。

どちらも、役の解釈として素晴らしいことは間違いありません。両キャストで観られて本当によかった!

さて、その他のキャストについて。

セカンド・キャストのもう一つの見どころは、薔薇の精を演じたクリストファー・エヴァンス!彼はハンブルクには珍しいすらりとしたダンサーで、クラシックのテクニックも高く、踊りもエレガント。あの布面積の少ない薔薇の精の衣装から見える美しい手足が何とも素敵。ああ彼のアルマンが本当に見たかったです・・・。

ニジンスカのルシアもよかった!彼女は明るいキャラだけどこういう硬質な役でのエネルギーも凄いな。牧神はマルセリーノ。彼、メイクをするとあんなに艶っぽくなるのね。

コールドでは日本人女子ダンサー3人が大活躍でした。ゴムまりのように弾ける生命感あふれる踊りを披露していた菅井円加さんに気が付かれた方は多かったのでは。マリインスキー劇場のバレリーナを演じていた有井さん、本当に踊りが美しく大きくて素敵!平木菜子ちゃんは、最後のシーンで兵士の衣装で出てきてましたね。彼女、背が高いし雰囲気も日本人離れしていて目を引くなあ。

この日は、今回の東京公演では一番人の入りが悪かったと思いますが、それでも7割方は客席が埋まっていたように見えました。もちろんカーテンコールはスタオベ。本当に満足度の高い公演だったと思います。

ニジンスキー、2005年の来日公演のときは余り人が入っていなかったと聞いてるのですが、今回は3日間通じて興行的にもまずまずだったような。そして、どの公演でも終演後にSNSを見たら大感激している方の多いこと!

最近、大手の招聘元や某バレエ団の運営陣が「日本ではバレエは古典でないと人が入らない」と思い込んでるように見えますが、このニジンスキーの成功を見ていると必ずしもそれは真実ではない、ということが分かります。作品を好む層を正しく見極めて、そこにささるマーケティング(SNSの活用なども含めて)ができれば、そして、本当に価値のある作品であれば、人は入るし、大きな感動を与えることができる。

今回の成功をバネに、NBSさんには次のチャレンジをしていただきたいなーと思います。次は、作品の完成度はお墨付きのアクラム・カーンのジゼルあたりでどうでしょう。あれ呼んでくれるなら、また非公式サポーターとして頑張っちゃうんだけど!
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