もう30年ほど前、テレビで「世界まるごとハウマッチ」という番組を見ていました。大橋巨泉が司会で、石坂浩二やビートたけしがレギュラー解答者だったクイズ番組です。
ある時、その番組で、インドかインドネシアで、亡くなった人を火葬するにあたって、後ろ手で薪に点火するという風習が紹介されていました。
ぼーっと見ていたのですが、慌ててメモしました。
というのは、古事記に次のような話があるからです。
・御佩かしせる十拳の剣を抜きて、後手にふきつつ、逃げ来つ。(黄泉国訪問)
・この鉤を以て其の兄に給はむ時に、言はむ状は、「この鉤は、おぼ鉤・すす鉤・貧鉤・うる鉤」と、云ひて、後手に賜へ。(海幸山幸)
1番目の例は、追っ手を牽制しつつ逃走しているので、牽制のために後ろ手に剣を振ったのだという可能性もありますが、場所が黄泉国であることを考えると、死にまつわる所作、あるいは呪的行為の可能性もあります。
2番目の例は、呪的行為と思われます。
そういったことがあったので、火葬の火をつけるときに後ろ手で行う、ということに反応したのでした。
人の死にまつわる動作なので、非日常の所作で行うということになりましょうか。亡くなった人の死装束の打合せが左前であることと通じそうです。
番組を見てメモを取ったのでしたが、引越したこともあって、そのメモを無くしてしまい、番組で取り上げられていたのが、インドだったのかインドネシアだったのか、分からなくなってしまいました。
爾来30年近く。
ところが、先日、他大学の集中講義でその話をしたら、受講生の1人のサウジアラビア人の留学生が、「それはインドですね」と発言しました。
自信をもって断言していたので、理由を聞いてみたら、イスラム教では火葬はしないということでした。言われてみれば、インドネシアはイスラム教ですね。
「おお!」という感じで、30年来の疑問が氷解しました。(^_^)
ところが、帰宅してから調べてみたら、インドネシアにおけるイスラム教徒の数は9割近くあるものの、バリ島では、バリ・ヒンドゥー教を信仰する人が圧倒的多数で、火葬も行われるということが分かりました。
ううむ。振り出しに戻ってしまったかも。(^_^;
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