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2018年01月25日00:31

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太秦ライムライト(14年)

斬られ役一筋の福本清三がキャリア55年目にして初めて主役を演じた作品。
タイトルの通り、チャップリンのライムライトをモチーフにした内容になっている。

親子二代で40年続いたテレビ時代劇も終わり、最後に残った3人の斬られ役大部屋俳優たちは映画村でのショーで働くことになる。
その中のひとり、福本清三演じる香美山はそんな境遇にも腐ることなく鍛錬を重ねていた。
それを見た新人エキストラのサツキはやがて、香美山について殺陣の勉強をするようになり、身につけた技をきっかけにスターへと駆け上がっていく。
いっぽうの香美山は会社の方針と身体的な衰えもあり引退、帰農してしまう。

ライムライトをモチーフにしているといえば、竹中直人の初監督作品「サヨナラcolor」があるけど、内容の切なさはこっちのほうが上。
なにしろ、時代劇と殺陣師の世界そのものが衰退期にあるから。
この切なさは、山崎まさよし主演の「八月のクリスマス」にも通じるもんがあるね。
あれも時代に取り残されていく町の写真館が舞台やったし。

全体のテイストとして、もう1本思い出す作品があった。
福本より2歳上で、同じ時代を東映の大部屋で過ごした川谷拓三が主演した「さらば映画の友・インディアンサマー」。
これまた衰退期にあった映画に夢を託した不器用なおっさんの話。
川谷拓三が大部屋を抜け出して一本立ちするきっかけとなったのが「仁義なき戦い」で、東映大部屋からはほかにも室谷日出男、志賀勝が売り出し、福本清三もその人たちと同じくらいには目立ってたのに取り残され、さらに10年以上冷や飯を食ったわけやね。
この作品に、ちょい役で川谷の長男の仁科貴が出てたのはなにかの意図があったんかな。

作中では、香美山の理解者のひとりとして出ている松方弘樹がひときわ目に沁みる。
斬り役、斬られ役として当代一流、第一人者とも言えるふたりの殺陣はじつに見事。
それやのに、まさかこれが松方さんの最後の殺陣になってしまうとはねえ。

主役といいながら、木刀振ってばかりでセリフが極端に少ない福本清三が映るシーンは映画と言うよりドキュメンタリーのようで、香美山が引退後に引っ込む田舎もどうやら福本の出身地である日本海側の香住をイメージしているらしい。
殺陣がうまい役者は芝居もうまい。
劇中で香美山が大スターから言われたこれは、実際に若き日の福本清三が萬屋錦之助からもらった言葉。
どこかで誰かが見ていてくれると香美山自ら語るそれは福本自身のもの。
最後の場面、映画監督役で本物の監督、60〜70年代に東映京都撮影所を舞台に活躍した中島貞夫が出てくるのもまたよし。
時代劇と殺陣師、なによりそれを象徴する福本清三への愛情がいっぱいに詰め込まれた作品やわ。

ただひとつだけ不満なのはヒロイン役の山本千尋。
太極拳の世界ジュニアで優勝した実績を引っさげて芸能界にデビューした人なんやけど、地味なんよねえ。
整った顔立ちはしているものの、いまいち華がないしたっぱも足りない。
脇役ならええものの、ヒロインにはちょっと厳しい。
体の動きや槍棒の捌きは福本以上のものがあり、若手アクション女優としては武田梨奈、清野名菜と並んで抜きん出たもんはあるんやけどな。
それに、その分野やと土屋太鳳っちゅう逸材がおるからのう、ぽてちん。



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